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女装剤  作者: 嬉々ゆう
52/91

第51話 「女性化の弊害」

なんとも、絡みたくない男の子達。

病気を治したいがために、女装役剤を飲むことに。

そして従兄弟の男の子にも・・・

2人は、女の子に変身するのだった。


文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。




••✼••加汰海水浴場••✼••


••✼••海の家 食堂••✼••



 海の家の店の主人の息子『ヒロノブ』と、そして従兄弟の『コウキ』。

 俺達4人が海で浮き輪を使って泳いでいたら、なぜか、先の奴らが俺達・・・いや、俺1人だけ狙うように虐めてくる。

 泳げないから浮き輪を使っているのに、浮き輪を奪おうとするのだ。


 アホやろ? バカやろ?

 スットコナンキンカボチャやろ?


 ってなもんで、たまたま俺の父親直登が近くでモリ持って魚突きしてたもんで気付いてもらえて、なんとか助かったものの、正直めちゃビビってた。

 海の中で、漏らしてしもたし・・・

 

 こんなトラブルがあったもんだから、もう海から出ろと言われて仕方なく浜へ上がる。

 そして、海の家で昼食となったが、まさかの、あの2人がエンカウント!!


 しかも! 海の家の店の主人の息子ときた!!


 あまつさえ!

 この海の家の店の主人もまた癖のあるオッサンで、『アンタも子供の頃はイジメっ子やったやろ?』ってツッコミたくなるキャラで、『この親にしてこの子あり』ってなもんだ!

 

 だが、この曲者ヒロノブって奴は、クローン病らしく、そのせいか荒んだ性格に育ったのかも知れない。

 なにせ、俺に執拗に絡んでくるし、『女のくせに!』なんて言うもんだから、『女装役剤』を出してやったら、本当に飲みやがった!

 しかも、従兄弟のコウキまでも一緒になって。

 んで、奴ら2人は、女の子に変身しちまったとさ!




「すっごいなぁ・・・おい!

 ホンマに女の子になっとるわよコレ~」


「ちょ、おとーちゃん!

 あんまりそんな間近でジロジロ見んといてくれよ?

 頼むから、もっと離れてくれ!

 いくら、おとーちゃんでも、恥ずかしわ!」


「あ! いやいや、すまん!!

 せやけど、お前ら!

 その格好、どないかせんとアカンな?」


「「ええ? なんで?」」


「なんでって、お前・・・

 女の子が外でパンツ一丁で歩き回るのも、どうかと思うぞ?」


「ん~そうかな?「ええ? そう?」



 そんな事を話しているこの2人に、虹音と千春は見るに見兼ねて、バスタオルを掛けてあげた。



「なんなよ?「え? これ何な?」


「見たら判るやろ? バスタオルよ!

 女の子に上半身裸でうろつかれたら、見てられへんのよ!」


「そうよ! ほら! 今日から女の子なんやから、自分は女の子なんやって自覚を持ちなあっ!!」


「うっさいわブス!」

「俺を女扱いすんな!」


「「女の子やろ━━━!!」」


「「!!~~~(汗)」」



 にゃははっ!

 コイツらは、昔の俺と海音よりも、かなり難癖ありそうやな。

 しゃあーないっ!!

 では、『元男』だった俺達が、先輩として色々教えてあげようではないか! あん?

 男だった頃にはできた事でも、女になってできなくなった事などや、男を怖く感じるようになる事もあるやろう。

 俺と海音は、顔を見合うと頷き合った。



「まあ、ガンバレや!」

 パチン!


 ヒロノブの肩を叩く晴蘭。


「はあ? なんなよ! チビブス!」


「んぐっ!・・・(怒)」


「まあな! 1年間気ばれや! なっ!」

 パチン!


 コウキの肩を叩く海音。


「気安く触んな! 金髪女!」


「んぎぎっ!・・・(怒)」


「「お前らなあ━━━っ!!」」

 ヒロノブとコウキを見上げて言う晴蘭と海音。


「「なんじゃいこら━━━っ!!」」

 晴蘭と海音を見下ろして言うヒロノブとコウキ。



 この、ヒロノブとコウキは、女の子になっても、身長160cmあるので、身長130cmほどしかない晴蘭と海音とでは、頭一個分背丈が違うので、上から見下ろされるがまあムカつく!

 そこに・・・



 パチ━━━ン!


「は━━━い! そこまで!!」


「「?!・・・」」

 「「?!・・・」」



 虹音が、手を叩き俺達を制する。



「はいはーい!

 セーラちゃんも、ミントも、先ず落ち着いて!」


「「はい・・・」」


「そして! ヒロノブちゃんに、コウキちゃんかな?」


「ちゃん付けで呼ぶなよ金髪ボインブス!」

「そーじゃよ! ボディコン!!」


「!!・・・まあ、なんて呼んでくれてもええけどね?

 それより、アンタら!

 もうアンタらは、女の子なんやからね!

 ちゃんと女の子として自覚せんかったら、絶対に痛い目に遭うで!」


「へぇーん! そんな事には、ならへんわ!」

「そーじゃ! 俺らは男じゃ! 女の言う事なんか聞くかよ!」


「あっそう! そこまでゆーんやったら、もうなにも言えへんわ!

 その代わり、後で助けてくださいって言ってきても、私らはもう知らんからね!」


「大きさお世話じゃー!」

「そーじゃ!そーじゃあ!」


「だ、そーです! オッチャン!

 夏休みが始まるまで、この子らを男子の制服着せて学校に行かせてあげてな!」


「え? ああ? う、うん!

 まあ、そう・・・かな? うん?」



 この、ヒロノブの父親というオッサン。

 虹音の言う意味が理解できなかった。

 後に聞いた話しでは、実は虹音には、【未来予知】的な力が少しあるらしく、ヒロノブとコウキという男の子が、学校で酷い目に遭う様子が一瞬見えたのだと言う。

 何ソレ怖い!

 ただ、幸い事なきを得た未来だったので、放置する事にしたのだとか。



「たぶん、この2人・・・

 学校で泣くことになると思うよ?」


「!・・・そう・・・なんか?」


「人は、異質なものを嫌うもの・・・

 ある日突然、男子が女子になって、男子の格好で現れたとして、みんなは受け入れてくれるかな?」


「!・・・それは・・・・・・」


「最初は、物珍しさでチヤホヤされるかも?

 でも時が経てば、今までとは違うと理解する事柄が増えてくる! きっと・・・」


「・・・・・・・・・」


 

 その後、海の家の店の主人は、スマホで誰かに電話をかけると、2人を連れて帰ると言い出した。

 その時、虹音は、2人に向けて何かを投げるような仕草をした。

 実はこの時、虹音は自分が開発した『危機発信機』と名付けた魔導具を2人にセットしたのだ。

 その名の通り、2人に危機的な状況に陥ったとき、虹音の【アニマル・ストラップ】に知らせるというもの。

 ソレは、後に役に立つ事になる。


 しばらく経って、交代の男性が現れると、父親は男性に店を任せて、2人を連れて帰ってしまった。



 そして晴蘭達も、なんだかシラケてしまったのもあって、帰りの行列がいっぱいになる前にと、サッサとシャワーを浴びて着替えて帰る事になった。


 勿論、良子が加汰海水浴場に来た人達の記憶を魔法で弄ったのは言うまでもない。

 良子が居れば、魔管保省(まかんぽしょう)要らずやな。



••✼••ヒロノブの自宅••✼••



 ヒロノブの家では、ヒロノブの両親と、コウキの両親とで、罵り合いへし合いの大喧嘩!



「ほな、ヒロノブはあのままクローン病を抱えたまんま、一生苦しみ続けろってゆーんかい!!」


「誰もそんな事はゆってへん!!

 ヒロ君の病気については気の毒やとは思う!

 せやけど、俺の息子まで女の子に変身するっちゅーのは、どないやっつってんのや!!

 ウチの息子は、関係あらへんやろ!!」


「だからそれは、コウキ君がヒロノブ1人が女の子に変身するのが辛いやろうからって、付き合ってくれたんやってゆーてるやろ!!」


「ちゃうちゃう! そうやない!

 ウチのコウキが、ヒロ君の病気と何の関係があるんな?ってゆってるんじゃ!!」


「だから! だーかーら!!

 それはさっきから何度も言ってるやろ!

 コウキ君がヒロノブと一緒に女の子に変身したのは、友情なんやって!!」


「友情って・・・

 女になる事が友情ってか?!

 そんなもん、意味分からへんわ!!」



 ヒロノブの自宅で、当人のヒロノブとコウキをそっちのけで、ヒロノブの父親とコウキの父親とで、とうとう取っ組み合いの大喧嘩に!!

 2人とも元同じ暴ヤン(暴走族)だか何だか知らないが、子持ちのオッサンになっても喧嘩タレのアッポケだった。

 勿論その喧嘩の理由は、病気を治すために、ヒロノブが『女装役剤』を飲んで病気を治したが、薬の作用で女の子に変身してしまったのだが・・・

 それは、正当な理由だと誰もが認識していた。

 だが、なぜ病気でもないコウキまでもが、『女装役剤』を飲んで女の子に変身しなければならないのか?

 という、その一点だった。


 だが結局は、コウキがヒロノブ1人に辛い思いをさせたくないと、コウキ自身も女の子に変身して同じ境遇に立ってくれたとの事で、コウキ自身がくどくどと自分の父親に説明して、無理やり納得させることとなった。

 本当は、ヒロノブがコウキに強く懇願したんだけどね。



 そして、コウキ親子が帰って・・・


 ヒロノブの母親は、ヒロノブが女の子に変身した事を大喜び!



「なんで、もっと早く教えてくれへんかったんよお!」


「そんなん言うてもやなあ(汗)」


「あかんわ! もう何処のお店も開いてへんわ!

 ああ~~~んもお~~~!!

 せっっっかく、こんなに可愛くなったのに!

 こんな、タンクトップに短パンやなんて、ぜんっっっぜん可憐じゃない!!」


「お、おい・・・(汗)」


「・・・・・・・・・」



 ヒロノブは家に帰ったら、母親に何て説明しようかと悩み悩んで、胃がキリキリと痛くて泣きそうだった。

 だが母親は、今までこんな笑顔なんて見せた事が無いのでは?と思うくらいの大歓喜!

 病気が完治した事もそうだが、やはり本命はヒロノブが女の子に変身したこと。

 女の子に変身したヒロノブは、思いの外、母親に気に入られたようだ。

 でもヒロノブ自身は、母親を悲しませる事無く済んでホッとしたものの、喜んで良いものか否か、複雑だった。



・⋯━☞翌日☜━⋯・



 ヒロノブの母親は、コウキの母親と電話をしていた。



「はい・・・はい・・・

 そうですね! じゃあ、待ってますねぇ~」

 ピッ!


「・・・なんて?」


「うん! 今からコウキ君連れて、ウチへ来るって!」


「そうなんや? なあ、ホンマに行くん?」


「当たり前やろ! 何をゆーてんの!

 せっかく女の子になったんやから、ちゃんと可愛らしい服を着やなカアンやろ!」


「せっかくって、なんなよ!?

 だから、もうええてよお~~~!

 今までと同じ服でよお~~~」


「あーかーん! 勿体ない!!」


「勿体ないって、なにが???」



 その後、ヒロノブと母親、そしてコウキと母親とで合流して、ファッション専門店クニクロと、パーピーハウスと、オーコワへと転々と。



 とある、ファンション・モールにて。



••✼••試着室(ヒロノブサイド)••✼••



「やあ~~~ん! コレ可愛いやん!

ヒロノブ、めっちゃ似合ってて可愛いで♡」


「・・・くっ! 殺せ!」


「何をゆーてんのよアホ!」



••✼••別の試着室(コウキサイド)••✼••



「ワンピースとツーピース、どっちが好き?」


「それ、俺に聞くん?」


「他に誰が居てんのよ?」


「せめて、オーバーオールにしてくれ」


「はっ!・・・それもええなあ♡」


「あっ! やっぱなしで!」


「ちょっと待っててな!

 あ母さん、オーバーオール探してくるからぁ~~~♪」

 パタパタパタパタ・・・


「おぅーのぉーまんまみーあ~~~(汗)」



 結局コウキの母親も、コウキの女の子の服を着た姿の可愛らしさに、キャピキャピウキウキ♪

 男の頃には、こんなにも夢中になるほど、見繕ってくれた事など一度も無かったのに・・・

 手の平返しも大概にせぃ!

 あ母ちゃんよ! オイラ情けなくて涙出てくらぁ!!

 ってなもんだ!


 その次に、ドラックストアなどなど。

 丸一日かけて、買い物三昧!

 もう、ヒロノブとコウキは、着せ替え人形にされたり、1日中 和歌山(わかやま)()(ちゅう)()(まわ)しの刑にされたりで、ゲンナリ・・・

 そして、やっと買い物も終わり、それぞれの自宅へ。



••✼••ヒロノブの自宅••✼••



「おう、お帰り!」


「ただいまぁ~♪」


「・・・ただいま」


「なんやおい! えらい元気無いやないか?

 気に入った可愛い服、見付からんかったんか?」

 父親がヒロノブに聞く。


「・・・疲れた」


「そうか・・・で、どうやった?」

 今度は母親に聞く。


「うん! いっぱいええ服を見付けてきたでえ!」


「そうか! ヒロノブ!

 女の子の服着て、おとーちゃんに見せてみぃ!」


「もう嫌じゃあ━━━━━━っっっ!!」


「「?!・・・びっくりしたあ」」




 散々、着せ替え人形させられ、散々引き回され、ヒロノブはもう心身共に疲労困憊した。

 女の子の身体になって、若干力も弱くなっているせいか、クローン病だったとは言え、男の頃よりも疲れやすいのかも知れない。

 もう、女の子の服なんか見たくないヒロノブだった。




・⋯━☞翌朝☜━⋯・



 ヒロノブと母親は、スクール・カッターシャツとズボンを着るか、セーラー服を着るかで揉めていた。



「何ゆーてんの!

 せっかくリオリオさんが用意してくれたのに、着やな失礼やろ!!」


「だから、要らんって! 女モンのセーラー服なんかよ!」


「女の子やのに、女の子の制服着るんわ当たり前やろ!」


「だから、もうええてよぉ~~~もぉ~~~」


「!!・・・ああっ! コレやっぱり!!」



 母親が小さな布切れを手に取り、ビヨーンと横に伸ばしてヒロノブに見せる。



「なに?」


「コレよお! コレコレ!」


「ソレ、女モンのバンツやないかえ!」


「あったりまえやんか!

 今のアンタは、女の子なんやで!!

 また男の子のときのトランクス穿いてんのやろ?」


「当たり前やし! 俺、男やし!」


「んんん~~~もぉ━━━っ!!

 もう、勝手にせえ━━━っっっ!!」


「勝手にするわぁ━━━っ!!」

 バタバタバタバタバタッ! ガチャ・・・バタァン!


「うんもぉ! しゃーない娘!!」




 結局ヒロノブは、いつも通りにスクール・カッターシャツを着て、学生鞄をひっ掴んで家を出て行った!



••✼••とあるコンビニ前••✼••



「おう! コウキ!」


「おお! ヒロ!

 やっぱり、お前もその制服になったか!」


「あん? スクール・カッターシャツとズボンの事か? 当たり前やいしょ!

 セーラー服とスカートなんか着れるかっ!!」


「そうじょなあ? 着れるかよなあ?」


「おうよ!」


「・・・」


「なんなよ?」


「・・・なんかお前、可愛いな?」



 ヒロノブは思った。

 コウキの髪が少し伸びていて、ショートボブみたいな感じで可愛く見えた。



「なっ?! 変なこと言うなよ!

 お前こそ・・・か、可愛いやないか」



 コウキから見てもヒロノブは、同じように髪が肩まで伸びて、可愛く見えた、



「おあっ?! お前こそ、変なこと言うなよ!」


「すまん・・・」


「いや、別に・・・」


「「・・・・・・」」



 結局コウキも、スクール・カッターシャツで登校するようだ。

 

 それよりも、今日になって改めてヒロノブとコウキは思った。

 互いに・・・

『コイツ、セーラー服でったい似合うやろな』

 ・・・と。


 『女装役剤』とは、13歳と若くして魔女となった、『大魔女セーラ』が作った魔法薬だ。

 『女装材』のレシピを参考に『甘い実』だけで安直に作った、【女装剤の解毒剤】の精製段階の失敗から出来た、いや出来てしまった偶然の産物ではあるが、女装剤の下位互換的な『男を女にする呪いの回復魔法薬』である。

 『女装役剤』を飲んだヒロノブもコウキも、元男だった面影は残してはいるものの、『精霊』を通して『イデア』に干渉し、女装役剤を飲んだ者の最も美しいプロトタイプの姿をほぼ完璧に再現するため、まるで作り物のように整った顔立ちに、完璧なまでに美とバランスの良い五体満足な身体で、とても可愛らしく美しく変身していた。

 まさに、『この世のものではない』かのように。

 そのため、ヒロノブとコウキは、短髪なボーイッシュなビジュアルから変わり、髪が少し伸びてショートボブな髪型ではあるが、とても可愛らしい女の子になっていた。



「なんかお前、その格好似合ってへんな?」


「お前もな?」


「「・・・・・・」」


 2人は互いに、

『コイツのセーラー服姿を見てみたい』

 と、思った。

 2人と男の頃に着ていたスクール・カッターシャツだ。

 ズボンはまあ良いが、スクール・カッターシャツはガバガバで、まるで2人の容姿は、女子が男装しているかのようだった。

 いや、まんまなのか?

 一見2人は、男子中学生の格好はしているが、よく見たら女の子だとすぐ判る。

『自分は男だ』と威勢を張ってはいても、スクール・カッターシャツを着ていても、周囲からは女の子だとバレバレである。

 だって、顔はショートボブの可愛い女の子だし。



••✼••川北中学校校門前••✼••



 ヒロノブとコウキの通う、和歌山市川北中学校は、良子からの連絡で、ヒロノブとコウキが女の子になった事の報告は受けてはいるが、他の生徒達は、ヒロノブとコウキが女の子になっただなんて、まだ知らない。

 ヒロノブとコウキは、同じC組だ。



••✼••3年C組教室••✼••



「おいーっす!」

「おはよー!」


「おはよ・・・誰?」


「「は?」」


「「「「ザワザワザワザワ・・・」」」」



 第一声が、『誰?』って、ソレどないやねん?

 だがヒロノブとコウキは、いつも通りに、クラスメイト達に接する。



「俺じゃよ! 五月女(そうとめ) 博信(ヒロノブ)

 んで、コイツは姫野(ひめの) 光輝(コウキ)じゃ!」


「おうよ!」


「「「「ええっ?!」」」」

「「「「ザワザワザワザワ・・・」」」」



 ヒロノブとコウキの周りにクラスメイト達が集まってくる!

 流石に圧倒されるヒロノブとコウキ。



「おいおい! そんなに近付くな!」

「まてまて! 近い!近い!」


「女の子やん!!「なんで男子の服なん?!「お前どーした!?「うわ!マジ?!「可愛いやん!「こっち向いて!」


「おいおいおいおい! 待て! 待ってくれ!」

「待て待て! 近い近い近い近いって!!」


 

 すると!

 『僕は何でも知っている』

 と言いたげな1人の男子が、こんな事を言う。



「お前ら、もしかして『女装剤』飲んだんやろ?」


「「ええっ?!」」


「女装剤?!「私、知ってる!「マジか!「うえええ!?「女に変身したんか?!「なんでなんで?」


「待て待てぇ! ちゃんと説明するから!!」


「「「「!!・・・・・・」」」」



 ヒロノブは、自分とコウキが女の子に変身した事の次第を話した。



「すごい!「病気治ったん?「ホンマに女の子?「なんでそんな服着てんの?」


「待て待てって! みんないっぺんに言うな!」

「だから、ヒロノブ1人やったら寂しいやろうからって・・・」



 こんな感じでワイワイしていたら、担任がやって来た。



「はーい! みんな席に着いてー!」


「「「「ワイワイガヤガヤ・・・」」」」


「きりーつ!」

 ザザザザザッ!

「おはよーごさいまーす!」

「「「「おはようございまーす!」」」」


「はい! みんな、おはよう!」


「ちゃくせーき!」

 ザザザザザザザザ・・・


「はい! もう、みんな気付いてるとは思うけどー!

 五月女(そうとめ)君と、姫野(ひめの)君は、色々と事情があって、女の子になりましたー!」


「「「「ザワザワザワザワ・・・」」」」


「なのでー! 今日から五月女君と、姫野君は、

 五月女さん、姫野さん、と呼ぶようにー!

 まだスクール・カッターシャツ着てるけどな~

 これがもし学ランとズボンやったら、もっと変やろな

 女子の応援団みたいになりそうけど

 ぜんぜん似合ってないしな?

 なんでセーラー服着て来んかったんやろな?

 2人が困ってたら、特に女子! 助けてあげてなー!」

 言いたい事をズケズケ言う担任。


「「「「「はぁ━━━い!」」」」」


「「「「ワイワイガヤガヤ・・・」」」」


「「・・・・・・(恥)」」



 この時、ヒロノブとコウキは、なぜ担任が自分達が女の子になっている事を知っているのか理解できなかった。

 もし誰も自分達が女の子になっている事を知らなければ、男の振りして、やり過ごすつもりだった。

 もしかしたら、両親が先に学校関係者に連絡していてのかも?とも考えたが、実は良子から連絡が既に来ていて、『あとは任せろ』との事で、双方の両親とも実質良子に丸投げ状態だったのだ。


 良子も、もう慣れたもので、五月女家と姫野家の戸籍の変更や、学校関係者には、光の速さで処理済みだった。

 流石は、大魔女!

 この程度なら、お手の物だ。

 大魔女良子にかかれば、その気になれば日本中の全人口1億2000万人以上の人の記憶すら、『限定的』な事柄なら書き換えできる力を持つ。

 勿論、そんな事をすれば、一晩眠り込んでしまうほどに疲労してしまうが・・・

 また、良子を遥かに上回る魔力を持つ今の晴蘭なら、地球全人口の82億人の記憶すら、『限定的』な事柄なら書き換えできるだろう。

 とは言え、今の晴蘭では、そんな力はあっても、術を知らないのだが。



 クラスメイト達は、ヒロノブとコウキを受け入れてくれた・・・かに見えた。

 殆どのクラスメイトは、そうだった。

 だが、中には納得いかない者、不審に思う者の居るのも事実。

 それは4人。その4人の男子達は、決して他の生徒達の輪に入ろうとはせず、(いぶか)しげな目でヒロノブとコウキを見ていた。


 


・⋯━☞昼の大休憩☜━⋯・



 ヒロノブとコウキは、弁当を食べ終わると、いつも通りにサッサと校庭へと、ボールを持って走る!

 サッカーかドッチボールをするためだ。

 この暑いのに・・・

 やはり身体は女の子になっても、心はまだ男子のようだ。

 ところが・・・



「おーい! 五月女! 姫野!」


「「あん?」」


「まあ、待てよ?」

「そうじゃ! まあ、待ってくれよ!」

「色々聞かせてくれよ?」

「なんやったら、裸も見せてくれよ?

 ホンマに女になってるんかを!」


「「?!・・・・・・」」



 奴らは、不良とは言えないが、まあ素行のあまりよろしくない4人組である。

 ヒロノブとコウキでさえも、あまり関わりたくない奴らだった。



「なんなよ? 話しがあるんやったら、今ココで話せよ?」

「おうよ! 俺らはこれから校庭に行くんやからな」


「まあ、ええわいてよ! そんなに急がんでも!」


「「・・・・・・」」



 ヒロノブとコウキからしても、奴らは日頃から女子に対してあまり友好的な奴らではなかったのは認識していて、奴らに声を掛けられた瞬間から、正直嫌な予感しかしなかった。


 そして奴らは、ヒロノブとコウキを体育館の裏へと引き込む。



••✼••川北中学校体育館裏••✼••



 そこは昔、旧校舎が建っていた場所で、『幽霊が出る』と噂の場所でもあったため、生徒達は殆ど近寄らない場所であり、人気のない場所でもある。


 マズイぞ・・・


 ヒロノブとコウキは、瞬時に身の危険を感じた!

 ヒロノブとコウキから見ると、奴ら4人は元々ヒロノブとコウキとは殆ど同じ背丈たったはず。

 だが女の子になったヒロノブとコウキは、男だった頃よりも5cmは低くなっているように感じる。

 目線が少し下がっただけで、こんなにも恐怖を感じるとは・・・

 それに、この野郎共4人組。

 以前から女子達にチョッカイを出しては、担任にチクられて叱られていた。

 それでも、まったく屁とも思っていない。

 あまつさえ、近頃の教師とは弱くなったもので、PTA役員や、教員会などの目から逃れるようにビクビクしていると言うか、イジメなどの不祥事があっても、『そんな事実は無い』と、見て見ぬふりは当たり前。

 そのせいか、奴らは叱られると逆恨みをして、ある事ない事言い出しては、教師を精神的にもキャリア的にも追いやると言う、まるで地獄の子鬼ゴブリンのような奴らだ。

 PTA会長の息子? 高役職の息子? 公務員の息子? んで取り巻き?

 ヘドが出るような、後ろ盾頼りの他力本願野郎共だ。

 だがしかし、実際問題奴らに泣かされた女子達は少なからず居るのも事実。

 中学生だぞ? まだ子供だぞ? 恐ろしい・・・



「お前ら、ホンマに五月女と姫野か?」


「お、おうよ! 見てわからんか?」


「ホンマじゃ! こんな嘘ついてもしゃーないやろ?」


「ホンマは、元から女やったんと違うか?」


「「違うわ!」」


「ほんなら、証拠見せてみいーよ?」


「「証拠?!・・・・・・」」



 証拠を見せろと言われても、どうしようもない。

 女装役剤を飲んで女の子に変身する瞬間に立ち会う事にでもならなきゃ、証明などできるはずがない。

 コイツらの企みは解ってる。

 ただ、俺達を虐めて、爽快な悦に入る気分になりたいだけだ。

 だが、この窮地を脱するのは至難の業だ。


 さて! どうしたものか・・・



女装役剤を飲んで、女の子に変身したヒロノブとコウキ。

そして、虹音の忠告通りに、ヤバい状況に遭遇。

ヒロノブとコウキは、この危機を乗り越えられるか?

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