第43話 「ソフィーの苦悩」
自分勝手な、コチマナマーチ男爵。
1度は捨てた実の娘ソフィーだったが、聖女になった途端、ソフィーを取り戻そうとするが・・・
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
••✼••ネチコイ教会処置室••✼••
昼を過ぎた頃、身体中が血と砂まみれになった4人の冒険者達が、1人を抱えて教会へ飛び込んで来た!
バタン!
「ビッグ・ディアにやられた!」
「こ、これは大事ですね! 早くコチラへ!」
バタバタバタバタッ!
ホールから処置室へ誘導し、1番重症の剣士冒険者をベッドに寝かせて、あとの3人は別のベッドに腰掛けた。
「大変でしたね でも、もう大丈夫ですよ?」
「す、すまない・・・」
「ふぅ・・・助かった」
「いてて・・・アバラが折れてる・・・」
「私は、肩を・・・」
ベッドに横たわる冒険者達は4人。
ラピスラズリ級レベル101の男性剣士。
ラピスラズリ級レベル125の男性タンク。
オパール級レベル152の魔導男性アーチャー。
ラピスラズリ級レベル103の女性僧侶。
彼らは、ラピスラズリ級(Lv100~149)ブル討伐に失敗した者達だ。
ブル討伐常時クエストにて、1体のブルを相手に戦っていたが、突然ビッグ・ディアが乱入してきて、ブルには逃げられるわ、ビッグ・ディアにはボーリングのピンの様に弾き飛ばされるわ、討伐は失敗するわで、命からがら逃げてきたと言う災難たったそうだ。
1番重症なのは、剣士の男性冒険者。
オパール級モンスターのビッグ・ディアの角で弾き飛ばされて、右上腕を引き裂かれたそうな。
まるで、某人気昭和アニメ「ゼイ肉マン」の、「バッファローボーイ」の、「ハリケーン・トルネード」を食らったかのように。
幸い所持していた既存のロー・ポーションで傷口は閉じかけてはいるが、出血が多かったために、意識も朦朧としていた。
他のパーティーメンバー達も、ロー・ポーションを使い切ってしまい、完全には治っていない状態。
既存のロー・ポーションでは、骨折までは治せないのだ。
つい最近までの教会での治療とは、とても高額だった。
現在では、晴蘭のお陰で大幅に見直され、既存のポーション類の価格は下がり、下級冒険者達でも気軽に買えるレベルにはなっていたが、効果はあまりよろしくない。
だが下級冒険者達にとっては、1本数万Tiaもするポーションには、なかなか手が届かないのが現状だ。
でも、晴蘭が甘い実から精製した新ポーション類が世に出たため、既存の効果の薄いポーションの価格は大幅に下がった。
その代わり、晴蘭の開発した新ポーションは、効果はバツグンで味も良く飲みやすいと評判だが、値段設定はアホげに高かった。
また、天使達からの施しだと、日に数回しか回復魔法が使えないので、とても高額だったが、現在は聖女による施しになるので、日に100回以上もほどこしが行えるからか、晴蘭の計らいで回復魔法の代金もかなり抑えられている。
そうなると、比較的安価な聖女の施しに頼る冒険者達が増えてしまうのが、今現在の現状だ。
教会や各店のポーションの相場の価格は・・・
★既存のポーション
ロー・ポーション 2000Tia。
擦り傷、裂傷など。
ポーション 5000Tia。
裂傷、骨折など。
ハイ・ポーション 2万Tia。
骨折、内臓破裂など。
浄化剤 5000万Tia。
異物、毒、汚れの浄化。
聖水 1万Tia。
穢れ、呪いの浄化。
★晴蘭の精製したポーション(聖女達が精製)
新ロー・ポーション 1万Tia。
裂傷、骨折など。
新ポーション 3万Tia。
骨折、内臓破裂など。
新ハイ・ポーション 5万Tia。
内臓破裂、切断部の繋ぎなど。
新浄化剤 3万Tia。
異物、毒、汚れ、穢れ、呪いの浄化。
女装役剤/男装役剤
1日女の子(男の子)に変身する「女装役剤」、「男装役剤」。5万Tia。
切断部の繋ぎ、欠損部の再生など。
1年間女の子(男の子)に変身する「女装役剤1year」、「男装役剤1year」。10万Tia。
切断部の繋ぎ、欠損部の再生など。
10年間女の子(男の子)に変身する「女装役剤10year」、「男装役剤10year」。50万Tia。
切断部の繋ぎ、欠損部の再生など。
100年間女の子(男の子)に変身する「女装役剤100year」、「男装役剤100year」。100万Tia。
切断部の繋ぎ、欠損部の再生など。
★聖女による施し
プチ・ヒール 1000Tia。
裂傷など。
ヒール 5000Tia。
裂傷、内臓破裂など。
ハイ・ヒール 1万Tia。
内臓破裂、切断部の繋ぎなど。
まあ、こんな感じだな。
安宿の1泊代は、だいたい5000Tiaほどだ。
食事代で、300~500Tia程度。
下級冒険者達の日の稼ぎと言えば、ブル1体としたなら、討伐報酬で1体につき5000Tia。
皮は程度にもよるが、5000~1万Tiaほど。
角が2本で2000Tia。
魔石が5000Tia。
稀にドロップする「突進のスキルを覚える魔石」が、1万Tia。
なので、ブル1体で、1万7000Tia~3万2000Tiaほどか。
冒険者4人の1日に必要な額として、宿代2万Tiaと、食事代5000Tiaの、2万5000Tiaはさ最低でも必要かも。
他、時々ポーションを買ったとして、単純計算でも、日に1~2体は討伐しないと暮らしていけない事になりそう。
毎日無事に討伐が達成できていたなら、なんとかなりそうだが、なかなか休みも取れそうもなく世知辛い。
だが、聖女達なら、教会で寝泊まりしているのだから、宿代に食事代は免除。
施しは出来高制で、1人治療する毎に2000Tia。
魔法だけの場合は、1人治療する毎に500Tia。
回復魔法薬1本精製する毎に2000Tia。
ソフィーの場合、日に5~10人は治療するから1万~2万Tiaは確実。
夜寝る前に魔法薬10本は精製するので2万Tia。
日給で言うなら、3万~4万Tia。
月給なら80~100万Tiaにもなる。
なかなかの高給取りみたいなものだ。
他の聖女達でも、日に2万Tia以上は稼ぐ。
月給なら、50万以上稼ぐのだから、部長クラスだ。
これはあくまでも皮算用だが、下手に商売をするよりは安全だし失敗も無いし、女性なら聖女やってる方が絶対に良い。
もちろん男性でも聖者としてなりえるのだが、教会で死ぬまで神官をするなんて真っ平御免! まず考えたくない。
そりゃあ女性なら、聖女になりたがる訳だ。
ソフィーは、何時ものように聖女としてのお勤めをしていた。
そう言えば、今日は聖女の仕事を見学したいと誰かが来る予定だった。
さて、どんな人が来るのやら・・・
と、思っていたら・・・
「えっ?! なぜ・・・お父様が?!
そうですわ! 確か・・・
今日聖女の仕事を見学に来るというのは、お父様と、そして私の代わりに養子にしたという、聖女としての素質のあるという女・・・
まあ、今の私には関係の無い事。
今は目の前の患者の怪我を癒す事に集中するだけですわ。」
ソフィーは、1人ブツブツとそう言っていたが、今は治療に集中する。
「ハイ・ヒール!」
シュパァ━━━ッ!
「「「おおおおっ!」」」
「わあっ!」
「んなっ! 無詠唱だと?!」
ソフィーは、剣士の傷の上に右手をかざして、「ハイ・ヒール」を施した!
「ハイ・ヒール」の魔法起動呪文を唱えると同時に、ソフィーの手の平が水色に淡く光り輝くと、施しを受ける剣士の身体全体も光る!
そしてほんの数秒で、怪我は完全に完治!
まるで動画の早送りを見ているかのように、あれよあれよと言う間に、完全に治ってしまう。
確かにソフィーは、優秀な聖女だ。
なぜなら、ここネチコイ教会の聖女以外の、他所の教会の聖女達は、回復魔法を発動させるのに、先ず詠唱を唱える。
そして、魔法起動呪文を唱えるのだが、「聖女」の肩書きとはいえ、前身は魔法使いではなく「魔導師」である。
精霊と契約していないので、魔力を桁違いに多く消費するだけでなく、魔法の効果もよろしくない。
また、回復魔法薬精製でも、外界と遮断された薄暗い部屋の中で、やたら長い詠唱を唱える儀式魔法で精製するので、厳密には「魔術師」の仕事だ。
また、その長い詠唱も、魔術師や魔導師によって違うし、師や前者から伝わる詠唱などもあり、彼らが彼らの信じる詠唱となるので、効果は正直有るのか無いのかは不明である。
この世界の既存の聖女とは、厳密には典型的な、「魔導師、魔術師」なのだ。
魔法効果も術者当人のイメージ力に関わってくる。
既存の聖女の仕事とは、こんなものだ。
既存の回復魔法の詠唱の例。
先ず、空中に指先やワンドで五芒星を描く。
そして、五芒星の周りに円を描く。
所謂、円の中に五芒星が描かれた簡単な図形である。
「我今、光の精霊に願いたまわる。
我の声を聞き、我の願いに耳を傾け、
我のこの円の中を守り、
我の願いを叶えたまえ!
そして我の今行うこの術に力を貸し、
彼の者の傷を癒したまえ!」
この様に、一応は精霊に力を借りるかのような詠唱に聞こえるが、実際精霊に魔力を与えないため、精霊は魔力を貸してはくれない。
そもそも、精霊と契約などしていないのだ。
ただ、「傷を癒す」と、安直にイメージしているだけにすぎないのだ。
まずは、人体の構造と機能を理解し、傷が治るプロセスを具体的にイメージしなければならない。
そして、「ハイ・ヒール」と唱える。
だが、精霊とは契約していないので、精霊の魔力ではなく、一応は魔法効果は発現するが、術者当人の魔力を力任せに無駄に消費している。
そのため、回復魔法を起動する度に、魔力の消費量も魔法効果もまちまちである。
なので、イメージ力のしっかりしている者ほど、魔法効果は高くなる。
つまりこれこそが、魔法が上手か下手かの差である。
その点ソフィーは、晴蘭の指導と授業によって、精霊と契約し本物の魔法使いとなり、そして回復魔法と魔法薬精製を習得し、聖女である晴蘭に聖女として認められ、肩書き【称号】も聖女となったのだ。
なので、「本物の聖女」だと言える。
本物の魔法使いであり、本物の聖女であるので、「無詠唱」で魔法を発動できるのだ。
「はい 治りましたよ」
「!・・・すごい! 本当に治ってる!!」
「おおお!「すげえ!「素晴らしいわ!」
「はい、次は貴方達ですよ?」
「「「はい!」」」
ソフィーは、次々と傷付いた冒険者達にハイ・ヒールを施し、傷を完璧に癒していく。
すると、コチマナマーチ男爵が、ソフィーに近付こうとする!
コチマナマーチ男爵が、ソフィーの腕を掴もうとした瞬間!
「お、お前は・・・!」
バッ!
「きゃあ!!」
咄嗟に、手を引いて回避するソフィー。
そこへ、神官が割って入る!
ガシッ!
「何をする気ですか!」
コチマナマーチ男爵の腕を掴み制止させる神官。
「なっ?! 何をする貴様!」
「貴方こそ、聖女に何をする気ですか!?」
「私は、コチマナマーチ男爵だ!
不敬だぞ! その手を放せっ!!」
「不敬なのは、どちらの方でしょうか?
私はこの教会の神官であり、聖者でもあるのですよ!
それにソフィーさんも、聖女なのです!
しかも! 今期最強の大聖女と言っても過言ではありません!
従って、そんな大聖女を貴方の様な者が、自由にできる存在ではありません!!」
「そ、それが、どうした!!
私はこの娘・・・ソフィーの父親だ!
コイツは、私の娘なのだ!
何をしようと貴様に何も言われる筋合いは無い!」
「まだ解っていないようですね?」
「何の事だ?! いいからその手を放せっ!!」
「放しません!!
貴方は、ソフィーさんに危害を加えようとしているのではないでしょうか?」
「だから、コイツは私の娘なのだ!!
父親が娘に何をしようと、貴様には関係ない!!」
「・・・・・・(汗)」
怯えるソフィー。
「「「「・・・・・・」」」」
ポカーンとする冒険者達。
「なになに? どうなってるの?!」
訳が解らない現コチマナマーチ男爵令嬢。
ぴし━━━━━━━━━っと、張り詰める空気。
どうする?! どうすればいいコレ?!
「無礼者め!! 貴族に対してこのような事をしてタダで済むと思っているのか!!」
「そのお言葉、そっくり貴方にお返ししますよ!」
「なにっ?!」
「私は聖者であり、伯爵位同等の地位!」
「伯爵!・・・だとぉ?」
「そうです!! そしてソフィーさんも聖女であり、同じく伯爵位同等の地位なのです!
男装の貴方よりも高貴な御方なのですよ!」
「ぬうっ?!・・・」
バッ!
コチマナマーチ男爵は、神官から手を振り払う!
「チッ! わ、解った!
だが! ソフィー!!
お前はコチマナマーチ男爵家の娘なのだ!
こんな所さっさと辞めて、私と一緒に帰るんだ!」
「ええっ?! ソレ、どーいうこと?!」
驚く現コチマナマーチ男爵令嬢。
「はい? 何を仰っているのか理解できませんわ!」
「お前こそ、何を言っているのだ!
いいから帰るんだ! 早くコッチへ来い!!」
「お断りします!」
「な! なんだとお?!
お前は何を言っているのか解っているのか!!」
「それは、コチラのセリフですわ!
私を捨てたのは、コチマナマーチ男爵、貴方の方ではありませんか!!」
「んなっ!?」
「私が今期最強の聖女になったので、私が使えると思ったのでしょう?
ご自分から捨てたくせに、今更取り戻そうとするなんて、自分勝手にも程がありますわ!!」
「ば、バカなことを!!」
「バカな事を仰っているのは貴方です!
私は、イスヤリヤ国王が認める聖女なのです!
聖女である私が、男爵の貴方の世迷言を聞く道理はありません!!」
そうなのだ。
ソフィーは、イスヤリヤ国王が認める聖女なのである。
つまり、この国最強の後ろ盾があると言っても過言では無いのだ。
なので、たかが男爵風情が、聖女をどうにかできる身分でも立場でも無いのだ。
「くっ!・・・勝手にしろ!!」
「えっ?! あ、あの、お父様?!」
「行くぞ! さっさと来い!!」
「は、はい!!」
タッタッタッタッ・・・
「「はぁ・・・・・・」」
コチマナマーチ男爵と現男爵令嬢は帰って行った。
「はわっ・・・はわわわわ・・・」
ヘナヘナ・・・ペタン!
ソフィーは、その場にへたり込んでしまった。
気丈に振舞ってはいたか、内心凄く恐ろしかった。
「おお・・・大丈夫ですかソフィーさん!」
「は、はい・・・なんとか」
「ソフィーさん 安心してくださいね
決して、ソフィーさんを、あの様なお方に渡したりしませんから」
「あ、はい ありがとうございます・・・」
ソフィーは、少しホッとした。
だが、完全に安心はできないと思った。
コチマナマーチ男爵という人物は、爵位存続の為に使い物にならないと思ったなら、実の娘を捨ててしまうような人物である。
しかも、自分から捨てておいて、使えると思ったなら、さも当たり前かのように、戻って来いと言う。
どれだけ自分勝手な奴なんだ。
母親もソフィーの小さい頃に亡くなり、今はママハハで義理の弟も居るのだから、自分はもう必要無いはず。
だいたい戻ったところで、居場所なんて無い。
それに自分はもう、1人で生きる術を見付けている。
だからもう、そっとしておいて欲しいものだ。
だが、これでは終わらなかった。
・⋯━☞3週間後☜━⋯・
••✼••ネチコイ教会ホール••✼••
「ごきげんよう! ネチコイ教会神官殿!」
「ごきげんよう ところで貴方様は、どちら様でしょうか?」
「僕は、ゴーマン・ナール・ガングロ伯爵家の嫡男、
ナルシス・トール・ガングロと申します
ここに御厄介になっている、ソフィーの婚約者なのだよ!」
「なんと!! ソフィーさんの婚約者?!」
なんともまたまた、波乱の予感である。
また、一手を打って来たコチマナマーチ男爵。
そして現れたのは、ソフィーの婚約者というナルシスという名の気取ったナルシストな男性。
もちろん、ソフィーはそんな男性など知らないし、自分に婚約者が居た事も知らなかった。
そもそも、聖女になれなかったので、婚約者など居なかったはず。
これは一体・・・




