第42話 「今期最強の聖女」
ソフィーは、立派な聖女になるために修行する!
果たしてコチマナマーチ男爵に認められる聖女になれるのか?
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
••✼••ネチコイ冒険者ギルド••✼••
晴蘭達は、ネチコイの冒険者ギルドに居た。
「宿屋だと、『壁に耳あり障子に目あり』やから、迂闊にユニークの話はできへん!」
「せやな・・・ほんなら、どーするんや?」
「うん 冒険者ギルドの敷地内にある、『プライベート・ルーム』を使う!」
「ほお? なるほど・・・」
「でも、空いてるかなぁ?」
千春は以前に、2回続けて寝過ごして、予約をキャンセルされてしまった事があるとか?
まったく、千春らしいわ。
それからというもの、千春は「寝坊っ娘チャル」と呼ばれているんだとか。
でも幸いに、今回は部屋は空いていた。
「良かったな! 部屋が空いてて」
「うん!」
めちゃくちゃ嬉しそうな顔をする千春。
ほっぺをピンク色に染めて、ニッコニコな千春がまた可愛い。
間が良かったのか、千春が予約を取った途端に、次々と次の予約がバンバン入る。
するとそこへ、今すぐプライベート・ルームが取れなかったら死ぬ!みたいな勢いでせがむ少女が現れる。
一見どこかしら、「貴族のお嬢様風」な雰囲気を醸し出す小綺麗な容姿の少女。
彼女の様子からして、今すぐプライベート・ルームを使えないと困る様子だったので、晴蘭はなんとなく声をかけてみたくなった。
だが・・・
「お願いします! 誰か! 誰かあ!!
お部屋を譲ってくださいませんか?!」
「はあ? 無茶言うなよ! 使いたきゃ予約を取れよ」
「それでは間に合わないのですぅ!
私は、コチマ村のコチマナマーチ男爵の娘、ソフィー・コチマナマーチと申します!
お部屋を譲って頂けたなら、必ずお礼を致します!
どうか! どうか!・・・」
「けっ! ご貴族様かよ!」
「すまないね 俺達も急いでいるんだ」
「そんな! どうか、お願いします!!」
「・・・」
彼女は、ソフィー・コチマナマーチは、コチマナマーチ男爵の娘だそうだ。
コチマ村を統治している男爵家の者らしい。
彼女の必死さから、なんだか可哀想に思えてきた晴蘭。
「セーラよ やめておけ!」
「えっ?!・・・でも、ココを使いたそうやし」
「それは、私達も同じ事じゃろがえ?」
「!・・・そーやけど」
「そーじゃ晴蘭! 良子さんの言う通りやぞ?
彼女の事情はどーあれ、俺らかて急いでいるんやからな?」
「う、えん・・・」
「そーよ! セーラちゃん?
気持ちは解るけど・・・」
「うん、まあ、そーなんやけどね」
「うんうん セーラちゃん、優しすぎ!
一々他の人の事気にしてたら、みーんな助けやなアカンようにのるで?」
「! 確かにそうやけど・・・」
晴蘭は、彼女の必死さから、ココで誰かが手を差し伸べなければ、彼女の人生そのものが終わってしまう気がした。
もちろんこれは、晴蘭の自己満でありエゴである。
でも、魔女や魔法使いは、人間の人生に大きく関わってはいけない。
人間は、魔女や魔法使いの力を利用しようと動き始めたら、必ず互いに不幸になる。
でもそれは、この世界にも当てはまる事なのだろうか?
晴蘭は、この世界では当てはまらないのでは?
と、思った。
だってこの世界では、ずっと昔から普通に魔女や魔法使いは居たのだし、ここは地球ではない。
晴蘭は、彼女に話しかけた。
「あ・・・あの━━━・・・」
「「はぁ・・・」」
深くため息をついて困り果てる海音と良子。
「「あはは・・・」」
苦笑する千春と虹音。
「な、なんですの?」
「もし良かったら、一緒に使う?」
「「「「?!・・・」」」」
驚く海音達。
「・・・はぁい?」
何言ってるの?みたいな顔のソフィー。
「あ・・・」
何ゆーてんねーん! 俺ー!!
自分達が予約した部屋を彼女へ明け渡すのではなく、一緒に使おうみたいな発言?
彼女がまだ何の目的でプライベート・ルームを使いたいのかも聞きもしないで、一緒に使う?
今の俺は、めちゃくちゃ胡散臭い?
などと考えていたら・・・
「放っておけよ貴族なんて」
呆れた様子で言う冒険者。
「え?」
掛けられた言葉に驚く晴蘭。
「「「「!・・・」」」」
煙たい顔になる海音と千春と虹音と良子。
「・・・」
ガクガクと震え出す少女。
なんだこの雰囲気は?
声をかけてきた冒険者以外の冒険者達も、みんな同じような表情だった。
まるで貴族の少女を毛嫌いするような雰囲気。
これも仕方ない事。
この世界でも、貴族達は平民や冒険者達からはあまりよく思われていない。
それにレベル150を超えるオパール級の冒険者ともなれば男爵位と同等の地位がある。
なので、下級貴族は、冒険者の前ではあまり強気に出ない事も。
あまり関わり過ぎると、将来その冒険者が、アクアマリン級の冒険者に育てば、どんな仕返しをされるか分かったものではない。
ましては、最下級貴族の男爵令嬢である。
猫の集団の中へ、ネズミが1匹で迷い込むようなのだ。
圧倒的に冒険者の方が数的にも多いし、下手に騒ぎを起こせば、ボロ雑巾にされてしまう。
この世界の貴族は、せめて伯爵位でなければ、相手になどされないし、大きな顔はできない。
そんなソフィー令嬢が可愛そうで堪らない晴蘭だった。
「ソフィーさんやっけ?
もしソフィーさんさえ良かったらの話しやけど、話しくらいは聞くよってこと」
「まあ! まあまあまあ!
それは、本当でございますか?」
顔の前で手を合わせて、表情がパアと明るくなるソフィー。
「とにかく、話しを聞きましょう?」
「ありがとうございます!!」
「いえいえ!」
「「「「はぁ━━━・・・」」」」
晴蘭は、ソフィーをプライベート・ルームに入れてあげる事にした。
すると冒険者達が・・・
「ふん! どうせ見返りを目当てなんだろう?」
「?!・・・」
「そうさ! 対価無しで誰が貴族の面倒事なんて!」
「お前ら・・・」
怒る海音。
「そんなもん、見返り期待して何が悪い?」
開き直る晴蘭。
「「「「は?」」」」
あっけにとられる冒険者達。
「貴族相手に恩を売って、後に利を得られるように忖度するのが何が悪いんや?」
「「「「!・・・・・・」」」」
黙り込む冒険者達。
「晴蘭、お前・・・言い方!」
「海音の言いたい事は解るよ?
でも、男爵は下級貴族とはいえ貴族は貴族や
今後何かしら得するように縁を繋ぐ事がそんなに悪い事か?」
「そりゃまあ、普通の事なんやろうけどな?」
「せやろう? 確かに俺も貴族は好かんけど
恩を売っておくのは損は無いやろ?
それに、いざ俺らが困ったときに、助けてくれるかも知れへん・・・やろ?」
「うむ まあ、うん・・・そーやけどな」
やれやれな表情の海音。
「「「「・・・・・・」」」」
黙ったまんまの冒険者達。
「また面倒な事に首を突っ込みくさってからに」
呆れる良子。
「テヘヘ・・・」
テレペロの晴蘭。
「ほぉら! とにかく中へ入ろ!」
晴蘭の背中を突っつく虹音。
「え? あ、うん」
パタパタパタ・・・パタン!
キュ~~~ン・・・
ドアを閉めたと同時に、遮音結界が施される。
晴蘭達は、男爵令嬢ソフィーと一緒にプライベート・ルームに入った。
••✼••プライベート・ルーム••✼••
「さて! 早速、話を聞かせてもらいましょか?」
「あ、はい
私は、コチマナマーチ男爵の娘、ソフィー・コチマナマーチと申します」
「ああ、どうも・・・セーラといいます」
「ミントです「チャルです「ナナトです「良子じゃ」
「よろしくお願いします!」
「よろし!」
「「「「よろしく」」」」
「ほな、早速 聞かせてよ?」
「あ、はい!
実は私は、今期の『聖女候補』の1人でした」
「聖女?!」
「「「「?!・・・」」」」
なるほど。
ソフィーからの『聖女候補』という言葉だけで、ある程度の聖女のなり方に対しての嫌な部分を垣間見た気がした。
特に下級貴族の令嬢は、格上の貴族との政略結婚か、聖女になって伯爵位同等の地位を得るしかない。
または、家名を捨て冒険者になるかだ。
伯爵位同等とは言っても、本当に伯爵位を叙爵される訳ではなく、あくまでもイスヤリヤ国王が認めただけの「同等」である。
「聖女」の肩書きを得ると、王族との婚姻も有り得るからだった。
また貴族としても、聖女の肩書きのある者との結婚となると箔が付くのである。
そのため、回復魔法か魔法薬精製のどちらかの才能があれば、下級貴族の令嬢はみな、聖女になりたがる。
聖女としての寿命(期間)は、15~20年。
聖女としての活動は、結婚してからも続く。
活動期間は、年齢にしたら、30~35歳となる。
もし、子供ができたなら、その時点で聖女は引退。
今年もまた、今期の聖女が1人聖女を引退するので、まさに「今!」なのである。
ソフィーは政略結婚の場合、親子ほど年の離れたクズ貴族の愛妾にされるのだとか。
そんなの嫌に決まってるわな。
ソフィーの場合、冒険者になるには、考えるまでもなく力不足だ。
だとしたら、「プチ・ヒール」が使えるので、聖女になるのが1番現実的というところ。
ポーションを作れる技術を習得すれば、聖女見習いにはなれる。
ソフィーはまるで、そんな貴族のしがらみにできた渦から逃れられずに、足を取られ渦に飲み込まれた1人のようだ。
だがソフィーの場合、それだけではなかった。
ソフィーの家系は聖女の家系らしく、世代毎に1人は聖女が生まれているとのこと。
だがソフィーは、成人(15歳)まであと一ヶ月というところまできたが、聖女としての条件が揃えられなかった。
プチ・ヒールは使えるらしいが、ポーションの精製はなぜかどんなに頑張ってもできなかったとか。
ソフィーは、人よりも魔力が極端に低いのだ。
なのに、ソフィーはあと1ヶ月ほどで15歳になる。
もう、時間が無いのだ。
それまでには、ポーション精製ができるようになるために、薬草と小さな釜と魔導コンロと魔法陣の描かれた敷布団を持って、プライベート・ルームでポーション精製スキルを獲得するために、1人でポーション精製を延々と成功するまで頑張るつもりだったのだそうだ。
■===========■
・⋯━☞STATUS☜━⋯・
■===========■
名前 ソフィー
性別 女
年齢 14
種族 人族
職業 僧侶
・⋯━━☆★☆━━⋯・
状態
【健康】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
LV 8
HP 8
MP 4
STR 4
ATK 6
DEF 6
DEX 8
INT 10
MAT 5
SPD 8
LUK 14
EXP 597
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得魔法
【プチ・ヒールLv1】【アンチポイズンLv1】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得スキル
【パワーアップLv1】【ディフェンスアップLv1】【スピードアップLv1】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
・⋯━━☆★☆━━⋯・
資格
・⋯━━☆★☆━━⋯・
■===========■
ステータスを見ると、正直なところ、ソフィーは聖女には向いてないと思う。
回復支援職かも知れない?
職業も僧侶になってたし。
それでもソフィーは、聖女にならなければならなかった。
もしソフィーが聖女としての素質が無いと父親に烙印されてしまうと、コチマナマーチ男爵家から聖女が生まれなかった事になり、コチマナマーチ男爵は、今期で爵位剥奪の危機だそうだ。
そんなソフィーを見限ったのか、実の父親のコチマナマーチ男爵は、聖女としての素質のある平民少女を養女として受け入れ、ソフィーを屋敷から追い出してしまったという。
15歳の誕生日までに聖女としての条件を満たして帰れば御の字。
でも、ここでもし何もせずに家に帰ったなら、ソフィーは望まない政略結婚は必至。
帰らなくても、冒険者としてしか生きる道は見込み無し。
だったら、今まで聖女になるために教育を受け頑張ってきたんだから、立派な聖女になって帰る!
もし間に合わなかったら、他所の教会で聖女として生きてやる!
と、考えていたそうだ。
聞くところによると、このネチコイ教会では、二十歳になった聖女が、王都へ行く予定らしい。
1人減るので、聖女としての成り口が2人分あるので、余裕もあり、ちょうど良いってなもんだった。
ネチコイの聖女達は、とても優秀だと聞く。
そんなネチコイ教会の聖女になれたなら、自分を捨てた男爵家を見返してやれるはず。
だがソフィーは、ネチコイ教会の聖女達を育てたのが、晴蘭だとは知らない。
「うんうんうん!
そぉ~かぁ~~~! そぉ~~~かぁ~~~!」
ソフィーの話を聞いて号泣する晴蘭。
「何泣いてんねん?」
思考停止したかのような表情の冷めた海音。
「・・・・・・」
クシャミを我慢する表情で晴蘭を見詰める良子。
「「あはは・・・」」」
苦笑する千春と虹音。
「よしよし! んだばっ!!
俺がアンタを立派な聖女にしちゃる!!」
「え? 貴女が?」
もう一度言うが、ソフィーはネチコイ教会の聖女達を育てたのが、晴蘭だとは知らない。
「おぅよ! こう見えても俺は、ネチコイ教会の初代聖女やからな!」
「へっ?・・・初代聖女?」
「こりゃセーラ!」
「あっ!・・・ごみんちゃ 今のは無し! 忘れて!」
「?!・・・は、はあ・・・?????」
はい! また余計な自慢が出ましたー!
また、やってしまいましたー!
あんなに聖女の仕事が嫌だったくせに、自分から言ってしまう晴蘭。
何処から元聖女の情報が漏れるか分からないのに、ほんと、おバカである。
とにかく、ソフィーを俺達で立派な聖女にすっぞ!
教会の教官さんに丸投げすんものいいけど、「聖女にしてあげて」なんて言っても、どうせ教官さんも俺に丸投げするやろーし!
ほな、ハナっから俺達が教えた方がええわな。
ってな具合だ。
・⋯━☞4ヶ月後・・・☜━⋯・
••✼••ネチコイ北西部の森••✼••
ソフィーは、ネチコイの冒険者として活動していた。
「ありがとうございましたぁー!!」
とあるパーティーのリーダーが礼を言う。
「「「ありがとうございましたあ━━━!」」」
他のパーティーメンバー達も礼を言う。
「いえいえ、どういたしまして!」
ソフィーもみんなに応えての挨拶を言う。
ソフィーは、冒険者パーティーのスポット契約としての助っ人支援が終わったため、パーティーから抜けた。
この頃のソフィーは、みんなのお助け僧侶!
しかも!
封印する予定だった、【青の魔法使いの杖(MP回復、HP回復、状態異常回復、蘇生、防破、所有者設定)】をソフィーに所有者設定をさせて装備させ、魔力の指輪(魔力+120)も装備させていた。
そして、「限界突破」スキルは、晴蘭がソフィーに施したものだが、冒険者達に聞いた話しでは、自分で限界突破スキルを獲得する方法は次に通りだ。
クリスタル級の同じモンスターを256体以上。
アメジスト級の同じモンスターを256体以上。
ジェイド級の同じモンスターを256体以上。
レベル99以下のモンスターをソロで連続で狩り続けると獲得できるそうだ。
途中で違うモンスターを狩ると、カウントは0になってしまうらしい。
ソフィーの場合は、パーティーを組んだ冒険者達に手伝ってもらって、毎日毎日4ヶ月間休みなく雑魚モンスターの角兎(通称トニカク)を2~3体を狩らせてもらっていたので、なんとか「限界突破」を獲得できた。
めんどくさっ!
それと、護身のために、「電撃系攻撃魔法」の「サンダー」、として「シールド」と、「バリア」を晴蘭から教わった。
■===========■
・⋯━☞STATUS☜━⋯・
■===========■
名前 ソフィー
性別 女
年齢 14
種族 人族
職業 僧侶/聖女
・⋯━━☆★☆━━⋯・
状態
【健康】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
LV 210
HP 210
MP 224(+120)
STR 16
ATK 25
DEF 25
DEX 43
INT 74
MAT 28
SPD 43
LUK 72
EXP 1096666
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得魔法
【プチ・ヒールLv5】【オール・プチ・ヒールLv2】【アンチ・ポイズンLv4】【ハイ・ヒールLv3】【オール・ハイ・ヒールLv1】【サンダーLv1】【シールドLv1】【バリアLv1】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得スキル
【魔力制御Lv3】【魔力操作Lv3】【魔力量計測】【パワー・アップLv4】【ディフェンス・アップLv4】【スピード・アップLv4】【限界突破Lv2】【鑑定Lv1】【魔法薬精製Lv1】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
装備によるスキル
【MP回復(1/5秒)】【HP回復(1/5秒)】【状態異常回復】【蘇生】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
【救済の聖女】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
資格
【セーラ認定聖女】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
■===========■
聖女としての称号は、思いの外簡単に付く。
聖女か教会の神官から「聖女」として認められたなら、もう聖女なのである。
••✼••プライベート・ルーム••✼••
「さて! ソフィーさん
貴女はもう、立派な聖女になれたと思う」
「あ、はい! ありがとうございます!」
「んで、これからどうするつもりかな?」
「どうするつもり・・・とは?」
晴蘭の質問に、一瞬考え込むソフィー。
立派な聖女になって我が家へ帰り、家族やみんなに立派になった自分を見せたかっただろう。
だが今ではそんな気持ちなど、もうコレっぽっちも無いようだった。
ネチコイ教会の神官さんとも話したが、ソフィーならと受け入れてくれるそうだ。
有り難いものだ。
あとは、ソフィー本人の気持ちだ。
「結局、15歳の誕生日もとっくに過ぎちゃったし~
このままネチコイ教会の聖女になっても構わへんし~
今実家に帰っても、別の人が娘になってるからソフィーの居場所は無いし~」
「!・・・そうです・・・わね・・・」
「うん・・・」
「「「「・・・・・・」」」」
・・・・・・っは!
俺ってば、デリカシーの無い事を言ってしもたな!
どどどどないしょ! この空気・・・(焦)
やってもたぁ~~~! やってもたぁ~~~!!
「ご・・・ごめん 配慮に欠けた発言でした」
「いえ! 構いませんわ!
もう私は、あの家に戻るつもりなど、コレっぽっちもありませんから!!」
「そ・・・そう? ごみんちゃ」
「バホッ!!」
ゴツン!!ポン!
「ぎやっ!!」
「んまあ?! まあまあまあまあまあ!!」
良子に、ゲンコツを食らって、またケモ耳猫耳に変身してしまった晴蘭。
そんな晴蘭を見たソフィーは、猫耳に変身した晴蘭があまりにも可愛くて思わず抱きしめ頬ずりする。
「い”に”ゃに”ゃに”ゃに”ゃに”ゃ!!」
「なんて可愛らしいのお~~~♡」
「はいはーい!」
晴蘭をソフィーから引き剥がす虹音。
「あら? これは、どういう事かしら?」
なぜ晴蘭から引き剥がされたのか理解できないソフィー。
「セーラちゃんが可愛いのは解るけど、セーラちゃんは私のモノだからこれ以上はダメ!」
「あらん・・・」
指を咥えて残念そうなソフィー。
「ナナトさんばっかり、ズルいですぅ!」
猫耳晴蘭を抱きしめたい千春。
「じゅ・ん・ば・ん!」
「ふぅ~~~ん・・・」
下唇を突き出して拗ねる千春。
「勝手にやっとけ!」
呆れる海音。
「・・・・・・」
クシャミを我慢するような顔で見る良子。
「なんでもええけど、これからどーするんや?」
埒が明かないので、ソフィーに聞く海音。
「あ、はい やはり、このネチコイ教会の聖女になろうと思います!」
「ふむ そうか・・・」
「ほお? そうかえ?
なら、今お前さんが装備している杖と指輪は、もうお前さんの物じゃ
今後も使い続けるとええぞえ?」
「ええっ! 本当ですか?!」
「うむ じゃがもし、お前さんが聖女を辞めると決めた時には、必ず次の聖女と認めた者に渡すこと! ええかえ?」
「え? それはどういう・・・?」
「特にその杖は、伝説級と言っても過言ではない代物じゃ!
決して次の聖女と認めた者以外には、絶対に渡すんじゃないぞえ?
もし、悪さを企む者がその杖を手にしたら、絶対にこの世のためにならん! 解ったかえ?」
「は、はい! 解りました!!」
こうしてソフィーは、ネチコイ教会の聖女となった。
・⋯━☞2ヶ月後☜━⋯・
••✼••ネチコイ教会ホール••✼••
ソフィーも聖女として活動するようになって2ヶ月が過ぎた頃。
教会には立派な聖女服を着たソフィーの姿があった。
そして神官からこんな事を言われる。
「ソフィーさん 今日も、お疲れ様でした」
「うふふ 聖女として当然の行いですわ」
「いえいえ、この教会で初めて聖女として認められた『セーラさん』という少女が居るのですが、もしかしたらソフィーさん貴女は、あのセーラさんよりも、聖女としての力がおありになる聖女かも知れませんね?」
「ええ! そんなまさか・・・(汗)」
ソフィーの働きは、確かに素晴らしかった。
でもそれは、晴蘭が作った青の魔法使いの杖と、魔力の指輪のお陰でもある。
■===========■
・⋯━☞STATUS☜━⋯・
■===========■
名前 ソフィー
性別 女
年齢 14
種族 人族
職業 僧侶/聖女
・⋯━━☆★☆━━⋯・
状態
【健康】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
LV 282
HP 282
MP 265(+120)
STR 19
ATK 28
DEF 28
DEX 50
INT 88
MAT 33
SPD 50
LUK 83
EXP 2160443
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得魔法
【プチ・ヒールLv6】【オール・プチ・ヒールLv3】【アンチ・ポイズンLv5】【ハイ・ヒールLv4】【オール・ハイ・ヒールLv2】【サンダーLv1】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
習得スキル
【魔力制御Lv3】【魔力操作Lv3】【魔力量計測】【パワー・アップLv4】【ディフェンス・アップLv4】【スピード・アップLv4】【限界突破Lv2】【鑑定Lv3】【魔法薬精製Lv3】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
装備によるスキル
【MP回復(1/5秒)】【HP回復(1/5秒)】【状態異常回復】【蘇生】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
称号
【救済の聖女】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
資格
【セーラ認定聖女】
・⋯━━☆★☆━━⋯・
■===========■
そんなある日の事だった。
神官から告げられたのは・・・
「本日は、コチマナマーチ男爵とご令嬢が、天使のお仕事を見学に来るそうですよ」
「えっ?!」
驚き一瞬固まるソフィー。
「「「「ザワザワ・・・」」」」
ざわめく他の天使達と聖女達。
「そこでソフィーさん」
「は、はい・・・(汗)」
「貴女の事情はお聞きしておりますが、貴女はこの教会の筆頭聖女です!
何も引け目に感じる事などりません
堂々としておれば良いのですよ!
いつも通りに、お勤めに集中してくださいね!」
「は・・・はい・・・(震)」
ガクガクブルブル・・・
神官はそう言うが、ソフィーは気が気ではなかった。
お家存続のために、聖女の素質のある他所の娘を受け入れ、聖女の素質が無いと実の娘を放り出すような親だ。
そんな輩が、今のソフィーを見たらどんなリアクションを取るのか・・・
心配で不安で、仕方がなかった。
••✼••ネチコイ教会処置室••✼••
「コチラが、当教会の処置室です」
「ふむ なるほど」
「123456・・・・・・
凄いですね! ベッドが20床もある!」
「レベル100を超えるオパール級のモンスターを狩る冒険者達ばかりですからね!
怪我をする者も多いのです
これでも足りない日もあるのですよ?」
「なんと!」
「そんなんですか?!」
「はぁい! 聖女とは、とても大変な職と言えるでしょう!
もし、貴女も聖女になるおつもりでしたら、ここで毎日休みなく回復魔法を施したり、回復系魔法薬を精製する事になるでしょう
幸い現在は、今期最強の聖女がこの教会に在籍しておりますので、彼女のお陰でなんとかなっておりますが」
「ほぉ・・・その今期最強の聖女とは?」
「私も、その聖女様に会ってみたいです!」
「ふふふ そうですか
あ、ほら! ちょうど今施しを行っている彼女こそが、今期最強の聖女ソフィーさんです!」
「ソフィー・・・だと?」
「え? どうかしましたか、お父様?」
「?!・・・な、なぜアイツがここに?!」
ついにバレた!
だがソフィーはまだ、コチマナマーチ男爵が、この教会に来ている事に気付いていない。
さて!どうなる事やら・・・
「聖女ではない」と追い出されたそたソフィーが、ネチコイ教会で今期最強の聖女として働いていた事を知る、コチマナマーチ男爵。
彼の驚きと怒りは、並のものではなかった。




