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女装剤  作者: 嬉々ゆう
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第36話 「天使のお仕事3」聖女先生

晴蘭は、天使のお仕事である、魔法薬の精製と、回復魔法を、他の天使達に教えることになる。


文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。





••✼••ネチコイ教会••✼••



 教会内には、教会関係者達だけが集う場がある。

 教会関係者専用の、言わば「スタッフルーム」だな。

 

 晴蘭は、天使達(神官見習い女性)だけを集めて、天使達に回復魔法と回復薬の精製方法を教える事にした。

 この世界では、決して秘匿しなければならない事柄ではない。

 むしろ、広げなきゃいけない事柄だ。



「ええ~~~と、みんなに集まってもらったのは、これから毎日2時間、回復魔法と回復薬の精製方法を教えたいと思います」


「「「「おおおお~~~!」」」」


「うわっ・・・・・・」



 みんなの、この反応・・・・・・

 どうやら、他の天使達は、晴蘭の能力を知りたかったようだ。

 「他の天使達」は、下は10歳で、一番年上では28歳までの、全員で10人の天使がいる。

 ただ、天使になれる・・・選ばれる基準は分からない。

 と、言うか謎だ。

 恐らく、金に相談だろう。

 天使達みんな、それなりのお嬢様っぽいから。

 聖女ともなれは、神官同等の位に扱われ、貴族で言えば伯爵位相当である。

 下級貴族としては、大金を積んででも、娘を聖女にしたいだろう。

 それに1番年上の天使にしては、もうとっくに行かず後家なので、聖女になれなければ、その先は無い。

 ただの修道女止まりだ。

 まあ、必死さがマジマジと伝わってくる。

 なんとかしてあげたい。

 それにみんな、晴蘭に憧れていたようだ。

 そりゃそうか。


 晴蘭は、魔法使いであり、魔女である。

 

 『回復魔法を使えて、魔法薬を精製できる』

 これは、天使のお仕事としては、最も高度で高貴で誇れること。

 天使のお仕事の中でも、「聖女」に一番近い存在となれる証。

 天使なら、誰でも欲しいと願う力だ。

 それに聖女は、1人だけでなければならない理由も無い。


 高ランク冒険者の回復職でさえ、使えるのは中級回復魔法のヒールがやっとのところだし、魔法薬は精製できない。

 この世界で魔法薬を作れる職業は、魔法使いと魔術師だけである。


 聖職者として、ヒーラーとして、天使としての専門の知識と能力があれば、尊い聖女として祭り上げられるだろう。

 まさに今の晴蘭のように。


 この世界で『聖女』とは、回復魔法が使えて、回復魔法薬が作れる女性が、聖女として定義されているだけに過ぎない。

 なので、仮に回復職の冒険者OBが、回復魔法薬が作れるようになり、教会に取り込まれたなら、聖女になってしまう。

 まあ、自由を好む冒険者が、不自由で社畜同然な聖女になんてなりたくも無いだろうがな。


 今の晴蘭は、聖女として崇められていた。

 晴蘭にとっては、冗談じゃないし、迷惑な話しだ。

 とっとと教会から出たいのに・・・


 晴蘭は、正確には聖女ではなく魔女っ娘である。

 

 額の五芒星を魔法薬で隠し、髪と瞳の色を魔法薬で変えているから良いものの、もし今の姿、額に五芒星、プラチナブロンドの髪に、赤い瞳のまんまなら、きっと今後の晴蘭の活動の妨げになる。

 なぜなら、この世界での魔女の概念は、


『大量の魔力を持ち、回復魔法を乱発し、回復魔法薬を精製できる、プラチナブロンドの髪に、赤い瞳に、額に金色の五芒星を持つ』


 だからだ。

 晴蘭は、この世界の魔女まんまの姿だった。

 それはつまり、この世界の創造主の姿として伝承される姿だったらかだ。

 魔女だとか聖女だとかと騒がれると困るのだ。


 だったら、魔女の証とても言える、髪と瞳の色を変え、額の五芒星を隠すしかない。

 それに、晴蘭だけが聖女として崇められるのが困るのなら、晴蘭以外にも、聖女と成り得る者を増やせば良い事。

 晴蘭ほどの魔法使いを育てるのではなく、せめて中級回復魔法が使えて、中級回復薬が精製できる魔法使いを育てれば良い話。


 それには先ず、魔力制御と、魔力操作ができるようになってもらわないと。

 つまり、本物の魔法使いになってもらうのだ。

 でなきゃ、この世界の魔法使いは、精霊とは干渉しない、精霊と契約していないので、「個別魔法起動呪文(こべつまほうきどうじゅもん)」を使えない。

 魔晶石や魔石の魔力を使用して魔法を発動させるため、厳密には「魔術師」か、「魔導師」なわけだ。

 なので、晴蘭がこの世界に「魔法使い」を生みだす。


 即ち、本物の魔法使いを育てるのだ。


 晴蘭は、母親から教わった、魔力制御と魔力操作を、視覚的、体感的、心理的に完全にマスターする方法を伝授。

 それができる様になれば、次は総魔力量を測る。

 そして更に、魔力制御と魔力操作を、視覚的、体感的、心理的に、1魔力まで抑え操る術を叩き込む。

 それが出来れば、いよいよ精霊との対峙そして契約だ。

 精霊と契約ができれば、やっと()()()()()使()()として名乗れるようになる。

 固有魔法起動呪文(こゆうまほうきどうじゅもん)を設定すれば、もう立派な本物の魔法使いだ。


 ちなみに、晴蘭の固有魔法起動呪文は、「イカ焼き かば焼き しょうが焼き」だ。


 魔法使いから魔女っ娘となった今の晴蘭には、もう必要のないものだが、使い方によっては、魔法を暴発させないための、トリガーにも安全装置にもできる。

 覚えといて損は無い。


 そして、ほぼ1ヶ月後には、10人とも精霊から魔力を借りて魔法を発動する魔法使いとなれた。

 晴蘭は、たったの1日で魔法使いになれたが、この世界の人にとっては、1ヶ月で魔法使いになれたのは奇跡に近い。


 この世界の常識では、「魔法を学ぶ」=「修行」なのだ。

 例えば、魔法薬作る方法をひとつ学ぶにしても、「はい、こうです!」って教えてくれるものではない。

 本来なら、何ヶ月も助手のような手伝いをさせられて、勿体ぶってなかなか教えてくれないものだ。

 師匠の身の回りに世話から、掃除や洗濯やお使い、そして薬草ハーブの栽培から採取から、目が回るほどこき使われて、また同じ季節が回ってくる頃に、「魔法使いとして相応しい」と判断されて、やっとチョロチョロと教えてくれるのが、この世界の常識だ。

 それが嫌なら、とっとと出て行けってなものだ。


 晴蘭は、この世界の常識に疎いので、て言うか知らない。知ったこっちゃない。

 それに、そんな面倒な事などしない。

 もちろん、精霊の倫理に反する事の無いように、魔法使いとして相応しい人になってもらう為に教育はするが。

 できるだけ早く覚えてくれっ!てなもの。


 まあ、「好きこそものの上手なれ」ってやつだな。


 好きな事、なりたいものの為なら、人は熱心になれるし、上手にできるようになれるものだ。

 天使達みんな、聖女になりたくて教会に居るのだから。

 みんな、覚えるのが早い早い!

 本気なんだと理解できる。

 それこそ、教え甲斐があるってものだ。



「はい! 今日からは、回復魔法を教えまーす!」


「「「「わぁ━━━!!」」」」

 パチパチパチパチ!



 天使達みんな、回復魔法が覚えられるぞと、めちゃ嬉しそうだった。

 それもそのはずである。

 この世界では、回復魔法を覚えるためには、魔導師に弟子入りして、何年もの修行の後に、やっと覚えられるもの。

 精霊との契約をしないのだから、無理もない。

 でも今の天使達は、正真正銘の魔法使いである。

 回復魔法を使える素質のある魔導師であり、回復薬を作れる素質のある魔術師でもあるのだ。


 回復魔法には、晴蘭が精霊との対話で作り上げた固有魔法起動呪文(こゆうまほうきどうじゅもん)の、「プチ・ヒール」、「ヒール」、「ハイ・ヒール」がある。

 元々、この世界にも、同じ固有魔法起動呪文がある。

 だが、呪文の前に詠唱が必要とされていた。

 ところが、この世界の各々の魔術師、魔導師によって様々で違いがある。

 代々受け継がれた詠唱だったり、個人が長年使い続けた詠唱だったり・・・と。

 精霊と意思疎通できないのだから、自分の発動する魔法のイメージ力が大切な訳で、そのイメージを明確にするために、詠唱が絶対に欠かせなかった。

 また、そう信じていて疑わなかった。

 だがその詠唱こそが不完全であり不明確なため、完璧な回復効果など発揮できなかった。

 そのため力任せな魔法の発動となり、魔力を必要以上に無駄に消費していたのだ。

 晴蘭のように、地球の一般常識的に知られる物理的法則を少しでも知っておれば、また違ったかも知れない。

 

 でも精霊と意思疎通できれば、精霊の膨大な知識(データー)からどの回復魔法を発動するのかを指示できるのだから、合言葉(じゅもん)だけで十分だ。

 あとは精霊に任せれば良いのだから。


 そして晴蘭は、この世界の回復魔法の固有魔法起動呪文を、この世界の精霊の知識(プログラム)に上書きした事になるのだ。


 つまりは、回復魔法の呪文のバージョンアップだな。


 なので、晴蘭がこの世界へ来て、精霊と対峙した時点で、他の回復職の魔法の効果も急に上がったはずだ。

 もし、この世界に精霊の力を借りられる本物の魔法使いが居たなら、それは驚いたであろう。

 でも、この世界には、正式な?魔法使いは居なかった。

 精霊から魔力を借りて魔法を発動する、本物の魔法使いが居なかったのだ。

 だが、今日からこの世界にも、精霊から魔力を借りて魔法を発動させる、本物の魔法使いが生まれる。


 あとは、簡単なものだ。

 ただ、回復魔法の固有魔法起動呪文を唱えると、たったの魔力1だけで、あとは精霊が必要な魔力を貸してくれて、回復魔法を発動してくれるのだから。

 これにより、10人全ての天使達は、本物の魔法使いとなり、中級回復魔法ヒールまで覚えられた。

 ハイ・ヒールを覚えるには、彼女達の頑張り次第だろう。

 レベルが上がれば、精霊が教えてくれるはずだから。


 次は、回復魔法薬だ。


 この世界での魔法薬に必要な素材は、ラベンダー、甘い実、薬草、マンドレイクの根、魔法水、となっている。

 でも、本当は、甘い実だけでできる。

 それを、この世界の人は知らないだけなのである。

 晴蘭がここで教える魔法薬精製法は、この世界の既存の魔法薬精製法は教えない。

「甘い実」だけで作る魔法薬精製法だ。

 そもそも、甘い実と魔力だけで魔法薬は作れるのに、なぜ、わざわざ不要な素材を混ぜるのかが謎である。

 間違った知識としか、言わざるを得ない。


 既存の魔法薬精製法では、先の5つの素材を細かく刻ざんで、大釜でグツグツと煮込みながら魔力を込めてかき混ぜて、魔力の光の粒が消えたら、冷まして()して不純物を取り除けばできあがりだ。

 だが、この世界の既存の魔法薬とは、実に草臭くてネギをすり潰した汁のようで不味い。

 冒険者達が、鼻をつまんでポーションを飲んでいる光景をよく目にするのは、これが理由だ。

 濾す時に使う布も、綿のような目の細かな布が無いので、不純物も完全に取れないので濁っている。

 そのせいか、効果もあまり良くないのだ。


 その点、晴蘭が教える精製法とは、甘い実と魔力を使うだけ。

 これは実に簡単だ。

 晴蘭が開発した「魔法薬を作る呪文」の、固有魔法起動呪文、「ロー・ポーション精製」と唱えるだけである。

 すると、精霊が必要な魔力を貸してくれるので、術者の魔力1だけで、約50~80ccのロー・ポーションが精製される。

 流石に、ポーションを入れる容器の製造、つまり「錬金術」は、まだまだ彼女らには難しいので、ガラス瓶製造の専門家に任せるしかないだろう。

 それに、ガラス細工職人の仕事も増えるので、良き良きかなかなだな。

 出来上がった魔法薬は、甘い実の桃に似た味なので、とても飲みやすい。

 しかも、効果は抜群だ!


 こうして、魔法薬も作れる魔法使いが増えたなら、既存の魔法薬の価格も少しは安くなるだろう。

 晴蘭の教えた魔法薬は、効果が抜群で甘く飲みやすいため、高くなるかも知れないが。

 できる事なら、晴蘭の教えた魔法薬を作れる魔法使いが増えてくれて、少しでも安くなる事を期待したい。



「今日の授業は、ここまでにします!」


「「「「ええ~~~!」」」」


「まあまあ、皆さん!

 明日からも、セーラさんの授業を受けられるのですよ!

 このような事はとても名誉であり有難い事なのです!

 皆さんも、その事を心に留めておくように!」


「「「「はぁ━━━い!」」」」


「照れるがな・・・・・・」



 そして、更に1ヶ月後。

 10人の天使達は、どこに出しても恥ずかしくない程の魔法使いとなり、回復魔法プチ・ヒールに、ヒールと、状態異常回復魔法のリペアを覚えた。

 魔法回復薬のロー・ポーションに、ポーション。

 これらを作れる、天使であり魔法使いが誕生したのだ。

 つまり、10人の聖女の誕生である。

 その頃からか晴蘭は、「聖女先生」と呼ばれていた。


 はずかしわっ!!


 この時、神官も、晴蘭が天使達に教えたものをチャッカリと吸収して全てマスターしていた。

 狡猾というか・・・ずる賢い奴よのぉ。。。


 授業料取るぞ!


 それからというもの、噂が噂を呼んで、ネチコイの教会では、助けを求める人で溢れていた。



••✼••教会の晴蘭の部屋••✼••



 バフッ!


「だあ~~~疲れたあ!」



 ベッドに飛び乗る晴蘭。

 もう、嫌という程に見た教会の自室の天井。

 石なのか陶器なのか分からないが、造りが日本の建物に比べたら疎かに見える。

 もうこの教会で暮らすようになって2ヶ月をゆうに超えた。

 海音達は、今も晴蘭を解放するため、借金を稼ぐために頑張ってくれているのだろか。

 最初は寂しくて堪らなかったが、なぜか今はそんな寂しさも、どこかへ行ってしまった。

 慣れとは、怖いものだ。

 昔から、住めば都、住めば城、などと言う諺があるが、どうやら晴蘭にも例外無く適応されるらしい。


 でも、そろそろ天使のお仕事は、他の天使達に任せて、晴蘭はスライムの浄水システム造りに専念したい。

 早速、神官に頼みに行ってみた。




••✼••神官の部屋••✼••



 コンコン!


「はい」


「セーラです!」


「はい! どうぞ~~」


 カチャ!・・・・・・パタン!


「どうか、されましたか?」


「えーと、神官さん! そろそろスライムの浄水システム造りを始めたいんだけど」


「ほおほお そんな事も言ってましたね」


「ちょっ! 言ってましたねって・・・」


「いいでしょう!」


「ホントですか!?」


「実はもう、冒険者ギルドに、スライムの生きたままの捕獲を依頼しているのです」


「おお~~~! さっすが神官さん!」


「セーラさんは、これまでよく頑張ってくれましたからね

 約束通り、セーラさんの思うものを造ってみてください

 費用は全て私が出しましょう!」


「いよっっっし!! やったあ!!」


「ですが、1人では何かと大変でしょう?」


「え? いえ、別に、特に・・・・・・」


「いえいえ、そういう訳にはいきません!

 天使のお仕事は、5人居ればなんとか回せます

 なので、2人誰かを付けてあげますから、明日からは3人で頑張ってみなさい」



 ふふん なるほど。

 手伝いとは建て前で、晴蘭のスライム浄水システムを手に入れたいわけだな?

 まあ、別に隠す事でもない。

 シッカリと盗み取ってくれ!



「はい! ありがとうございます!!」



 こうして晴蘭は、スライムを使った浄水システムの開発に力を入れる事になった。





この世界の初めての本物の魔法使い誕生!

これにより、晴蘭の天使のお仕事は減る!

ようやく、スライムを使った浄水システムの開発に入れる晴蘭。

思い通りに作れるのか?


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