第35話 「天使のお仕事2」善の男 悪の男 揺らぐ心
晴蘭は、天使のお仕事を、少し頑張り過ぎたようだ。
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
┈┈••✼••┈┈ネチコイ教会┈┈••✼••┈┈
チョッ チョッ チチチチッ
「!・・・んん~朝かあ~~~」
教会の朝は早い。
めっちゃ、ごっつう、どえらい、どてこい早い!
まだ、未明で暗いのに、起きなきゃいけない。
これなら、日本の方がまだマシだ。
ピチャピチャ
「うぅうぅうぅ~~~さむっ!」
もう水が冷たいと感じる季節。
これからは、もっと水仕事が辛くなりそう。
本来なら、外の井戸から天秤樽を肩に担いで水を汲んで、大きな水瓶に溜めるんだが、俺には魔法があるので、水汲みの作業は楽だ。
だから、耐えられない仕事では無い。
だが、便所だけは耐えられん!!
便所は、小部屋の床に穴が掘られていて、穴の底に排泄物を溜める口の大きめの「かめ壷」を置き、その上に板を敷き、しゃがんで跨り、シシ~~~
それを毎日、自分で処理しなきゃいけない。
しかも、自分の部屋のと、神官のと、来客用のんと・・・
この世界の人には、羞恥心ってものは無いのか?
自分の汚物を人に処理させるなんて・・・
ああああ~~~やだ!!
処理するのも、されるのも嫌だ!
何が辛いかって、これが一番辛い!
肉体労働なら、たとえ こんな女の子の身体でも、魔法があるからなんとでもできる。
でも、汚物処理だけは、魔法を使っても、キツイ、汚い、臭いの3Kの三拍子揃ってる。
これらはみな、俺の仕事なのだ。
これらの仕事をしたくないのは本当の気持ち。
でも、これらは絶対に身体に良くないのも事実。知らんけど。
汚物は時間が経てば、病気などが発生するのもありありだ。知らんけど。
感染症も考えられるから、絶対に綺麗にした方が良いのも事実。知らんけど。
だったら、綺麗にしようじゃないか!
そこで、スライムの登場だ。
異世界名物のひとつで、スライムは汚物や動物の死骸や生ゴミなどを食べて綺麗にしてくれるし、臭いまで消してくれる益獣とされている。
この世界のスライムも例外なく。
スライムを利用しないテはない!
なのになんでこの世界の人達は、スライムを利用しないのか?
なぜならスライムは汚物を食べるので、「汚い魔物」というのが、この世界の人達にとっての認識だ。
へんっ! バッカじゃないの?!
スライムみたいな、こんな便利で有難い益獣を汚い?!
スライムの神様のバチが当たるぞ!ってなもんだ!(?)
実はスライムは、とても綺麗好きで、とてもとても可愛らしい生き物だ。
ペットとして飼いたいくらいだ。
だから、臭くもないし、汚くもない。
むしろ人間の方が汚いと言ってもいい。
例えば、自分の身体は見た目綺麗だと思っても、スライムを触っていると、肌の些細な汚れや汗や死んだ皮膚細胞を食べてくれるのだから。
それだけ人間は、「汚れている」のだ。
俺だったら、スライム風呂に飛び込みたいくらいだ!
「神官さん!」
「なんでしょう?」
「スライムって、捕まえて来る事はできますぅ?」
「スライム?・・・あの、魔物のスライムの事ですか?」
「そうです あの、魔物こスライムの事です」
「もちろん、あの魔物のスライムなら、森の中や草むらにでも生息していますが・・・それがなにか?」
何この人?
なんで、「魔物」って強調するんだ?
なにか余程魔物に嫌悪感でもあるんかいな?
「うむ そのスライムが欲しいです!」
「はぁい?」
俺がスライムが欲しいと言っても、先ず神官には俺が何を考えているのか理解できないだろう。
だから、これからスライムには実用性があり、その用途について話す。
「スライムは、汚物や、動物の死骸や、生ゴミなども食べてくれます・・・よね?」
「はい そうですね それが?」
「ふむ なのでスライムに、便所や排水を綺麗にしてもらいましょうよ!」
「?!・・・それは、どういう?」
あれれ? この世界では、スライムを使った浄水システムを使わないのか?
神官さんが、知らないだけじゃなく?
いや、確かスライムの習性を利用した浄化を聞いたことはあるが、たぶんそのシステム自体が思い付かないのだろう。
地球では、汚水を浄化して川に流すが、そんな既成概念すら無いのだろうな。
だったら、俺がスライムの使用方法を実戦してみせよーじゃないか?
「お願いがあるのですが・・・」
「はい できるできないは別にして、まずはお聞きしましょう?」
「ふむ では、俺・・・私を、スライムを捕まえたいので外へ行かせてください」
「それはできません!」
「!!・・・・・・即答かよ」
いかん! いきなり躓いたぞ!
スライムが捕まえられないのでは、話が進まん!
参ったな・・・どないしょ?
これからスライムの有用性について、あれじゃのこれじゃのと、くどくど説明してやろうか?
それとも、泣き落としか?
などと思案していたら・・・
「貴女を外に出す事はできませんが、代わりに冒険者ギルドに、スライムを捕まえて来てくれるように依頼してはどうでしょうか?」
「はっ!! なぁるほど!」
ほほお! その手があったか!
俺は、契約上外に出られない。
なら、冒険者に代わりにスライムを捕まえてもらうように依頼すれば良いのだ。
でも、幾ら必要なんだろう?
それに、その費用は誰が払うんだろう?
この教会で必要なものなんだから、教会で出してくれるだろう。ね?お願い。
「では、10匹ほど、スライムを生きたまま捕まえて来るように、冒険者ギルドに依頼できますか?」
「・・・それは構いませんが」
「・・・構いません・・・が?」
「その依頼分の費用は、借金に加算させてもらいますね!」
「っっっはあ━━━あ?! なんで?! この教会で使うんですよ! 教会のためになる事なんですから、教会から出すのが筋でしょう!!」
「教会のために、なる事でしたらね!」
「だったら・・・」
「ですが、まだ教会のためになっていませんよね?」
「んぐぐ・・・それって、屁理屈って言うんじゃ?」
「なら、こうしましょう!」
人差し指を立てて言う神官。
「な、なんでしょう?」
「もし、貴女がこれから行う事により、教会にとって本当にためになる事だったなら、今回の費用を借金から差し引いてあげましょう」
「! ほほお そうきますか でも、絶対に教会のためになりますよ! 教会どころか、この国、いえこの世界のためになりますね!」
「ふふん 随分と盛大に来ましたね? 解りました! でしたら、もし教会のために、この世界のためになると判断が出来ましたら、上乗せして借金から差し引いてあげましょう!」
「おおっ! でったいやで! 男に二言はアカンよ! 吐いた唾飲んだらアカンで!」
「セーラさん! 言葉遣い!」
「あ! はいはい! 男に二言はありませんね?」
「当然です」
「ふふん では、スライムの方を、お願いしますね 私は、他に必要な物を用意しますから、今日からしばらくの間は、天使のお仕事を他の天使の人達に、お任せしますけどいいですね?」
「!・・・それは、できません!」
「はぁ!! なんで?!」
「今となっては、貴女の魔法と魔法薬は、この教会にとって、無くてはならないものとなってます」
「おぅ・・・のぉ・・・」
「そんな貴女の代わりを、他の天使にできるとお思いですか?」
「うっ・・・できない・・・・・か?」
「できません! できないんですよ! ですから、1日でも貴女に休まれては、教会は大混乱となってしまいます!」
「えっ! そ、そんなにぃ?!」
「そんなに・・・です!」
「そんなに・・・ですか」
参ったなぁ・・・・・・
コレじゃあ、スライム便所どころじゃないぞ?
こうなったら、他の天使達にも、回復魔法と回復薬の精製術を教えてやろうか?
でないと、俺がいざ借金をチャラにできたとしても、教会が俺を手放してくれなくなる可能性が大だ!
うううう~~~ヤバいヤバいヤバいヤバい!
一番大事な事を失念してた!!
ってな事で、俺は他の天使を育てる事を始める事にした。
・・・・・・が。
「あの~~~すみません」
「はい? どうしたました?」
誰だっけ、このオッサン?
神官さんの知り合い?
だって、ここは教会であり、男性は教官さんしか入れないはず。
「はい あのですねえ、貴女にお願いがあるのですが」
「どこか怪我でもしましたか?」
「いえ 特に・・・・・・」
「・・・・・・???」
なんだ?
なんで男が教会の食堂に居る?
確かに怪我をした様子も無い。
いったい何しに来たんだ?
「神官さんの知り合いの方ですか?」
「いいえ、まったくの無関係ですよ?」
「はあい?」
何この人? 何この人? 何この人ー?
患者さん・・・・・・じゃない?
なんかヤバくない?
目ぇ、血走ってない?
晴蘭には、男に対して危機感が足りていなかった。
なにせ、身体は女の子でも、心は未だ男のまんまだ。
こんな時に限って、他の天使達は、お勤めで食堂には誰一人として居ない。
神官さんも、なぜか居ない。
女ばかりの教会内に、男が侵入したとなると、目的は一つしかない。
そして、一拍置いて・・・・・・
ズン!
「ぐぉはっ!・・・・・・」
「へっへっへ バカな女だ」
晴蘭は、男から鳩尾に強烈な一撃を食らった!
下っ腹の激痛で、立っていられない。
晴蘭は、その場に崩れ落ちた。
痛い・・・息ができない・・・
男は、そんな晴蘭を担ぎあげて、教会の裏の細い路地へと運ぶ。
『やばい! このままじゃ犯られる!』
男に運ばれるときに、チラッと見えたのは、倒れた神官さんだった。
コイツ、神官さんを倒して、俺を襲いに来たのか?
教会には、若い女しか居ない事を知っていて?
ヤバい!ヤバい!ヤバい!ヤバいいいい!
誰か助けて!助けて!助けて!助けてえ!
ドサッ!
「ぐふっ!・・・・・・」
「くっくっくっ 美味そうな身体しやがって! 女ばかりの施設だ どうせお前も男に飢えてるんだろう?」
『そんな訳あるか! やめろ!』
腹が痛くて声が出せない!
ヤバい!マジヤバい!
みるみる内に、服を脱がされていく。
やめろ!気持ち悪い!臭い息を吹きかけるな!
両腕を縛られてしまった。
やばっ! パンツにまで手を掛けて・・・
くっそ! こんな奴に! こんな奴に!
もうダメだと諦めかけた瞬間!
ゴスンッ!
「ごはっ!」
ドサッ!
「いでっ!・・・・・えっ?」
男は、鈍い音とともに俺の上にのしかかってきた。
そして、動かなくなった。
どうやら、気を失っているようだ。
重い・・・
そして、男が俺の上から剥ぎ取られると、そこには神官さんが居た。
なんとか俺が犯される前に気が付き、俺を助けに来てくれたようだ。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・どうやら間に合ったようですね」
「しん、じんがんざあん! うわぁ~~~ん!」
「無事でよかった・・・・・・」
「うわぁあぁあぁ~~~ん!」
神官さんは、頭から血を流しながらも、俺を助けてくれたのだ。
マジ怖かった。
殺されるぅ~思た!
その後、神官さんに しこたま怒られた。
神官のさんの言うように、俺には女としての心構え、つまり、男に対しての危機感がまったく足りないらしい。
日頃の言動を見れば解ると言われた。
はあ? そんなん何時から見てた?
まさか自分が、こんな目に遭うなんて思いもしなかったので、危機感なんて無かったし考えもしなかったから。
確かに、今の自分は女の子だと自覚はしているものの、ぱっと忘れる時がある。
教会の中なら安全だと思ってた。
俺は、盗賊に狙われてるのは理解ししていたが、こんな見知らぬ男にも狙われているのか。
いくら身体を成長させたと言っても、所詮は か弱き女の身体だ。
大人の男の力に適うわけがない。
そろそろ寒くなってきた季節なのに、男がから油のような、ツンとしたキツい汗の臭いがした。
吐き気がするほど、不快だった。
その後、何度も思い出して、ホントに吐いてしまった。
そして今までとは、違う思いが生まれた。
『女を見下し、性的捌け口としてしか見てない男って気持ち悪い』
恐怖のあまりに、魔法を完全に忘れていた。
何もできなかった・・・・・・
もしかして男の頃の俺も、こんな風に女の人から思われていた事あるんかな?
なんか嫌だな・・・
元男とはいえ、善の男、悪の男の見分けなんて無理。。。
改めて、やっぱり自分は女なんだと自覚したのだった。
この日、初めて、「男に戻りたい」という気持ちが揺らいだ・・・
初めて、男が怖いと思った晴蘭だった。
他の天使を育てる。
いざ、晴蘭が借金を完済さたとしても、教会から出してもらえなくなる可能性がでてきた!
仕方ないので、他の天使達を育てる事にした晴蘭だった。
それは詰まり、晴蘭が居なくなっても、大丈夫なようにするためだ。