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女装剤  作者: 嬉々ゆう
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第2話 「宿命」

運命は、努力次第で変えられる。でも宿命は、どんなに足掻(あが)こうとも(あがら)おうとも変えられないという。

それでも大晴と義斗は、宿命に抗うのか、それとも受け入れるのか。



文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。


「まあ、ね! もう話してもええかもね! 私も、昔は男やったからね!」


「「え゛え゛え゛え゛え゛~~~!!」」



 これは驚いた! いや、信じられなかった。まさか母親も昔は男だったなんて! それより、母親は女装剤についてよく知っているようだ。


 この後、もっと驚く話しを母親から聞くことになるのだった・・・



「おかん(お母さん)! これ、どーゆーことよ!」


「おおお・・・お、俺が・・・女の子に・・・俺が・・・姉ちゃんみたいになるのか?」


「・・・?」



 義斗が、「姉ちゃんみたいになるのか?」と言ったが、どういう事だろうか?

 義斗の姉は、超絶美人なのに、なぜ?

 もしかして、「性格」のことを言っているのか?

 確かに、義斗の姉は少々変態・・・

 げふん!げふん! 個性が強い気もするが・・・



「まさかなぁ~ホンマに、お義母さんの言うた通りになるやなんてなぁ~」


「お義母さんって、サクラ婆ちゃんが言うたんか?」


「え? な、なん・・・何て? え? 大晴のお婆ちゃんが、俺らが女の子に変身する事を言うてた・・・知ってたってとこ?」


「そうよ!」


「「ええ~~~・・・」」


「まあ、聞いて? これから、お義母さん・・・大晴のお婆ちゃんについて、ちょっと話しちゃるから!」


「「はい・・・」」



 大晴の母親の名は、白鳥(しらとり) (かえで)


 日本人女性らしく可愛らしい名前ではあるが、実は昔の母親は男だったらしい。

 そして今から母親が、サクラ婆ちゃんの事を、少し話してくれるそうだ。



「白鳥 サクラ、大晴のお婆ちゃんね! 実は魔法使いやったんよ!」


「「やっぱり!」」



 ほおら! やっぱりそうだ!


 サクラ婆ちゃんは、本当に魔法使いだったのだ。大晴と義斗は、揃って母親を指差して、そう言った。苦笑する母親。



 大晴と義斗が、「女装剤」と呼ばれる魔法薬を飲んで女の子に変身してしまった事実を考えれば、疑う余地などなかった。

 男が女に変身する、または変身させられるなんて昔話しや伝説は、世界中に残されている。



 有名な伝説では、ヘルマの泉の伝説だ。


 むかしむかし、あるところに、ヘルマという絶世の美少年がいた。

 彼は、生まれ故郷を離れ旅に出たが、途中立ち寄った「妖精の泉」で水浴びをしていたら、その泉の妖精に一目惚れされ、関係を迫られてしまう。

 ヘルマは、頑なに拒否したが、妖精はなんとしてもヘルマと一つになりたいと神に願うと、なんと泉の妖精の願いは叶えられ、神の神力により、ヘルマと泉の妖精は、男と女の両性を持つ1人の人間になってしまったのだ。

 仕方なく、ヘルマはその後、泉の管理をする事になる。後にその泉は、「ヘルマの泉」と呼ばれるようになった。

 そんなある日のこと。泉の傍て神と女神が喧嘩をしていたので、ヘルマが「おお、神よ、女神よ、いったい何があったのですか?」と聞くと、「男と女が合体したとき、どちらの方が気持ちが良いか?」で揉めていたらしい。

 そこで、神と女神はヘルマに、「男と女が合体したとき、どちらの方が気持ちが良いか答えよ。両性のお前なら解るだろう? 真摯に答えたならば、其方の願いを叶えてやろう」と言うので、ヘルマは真面目に正直に、「女の方が100倍気持ちいい」と答えたのだ。

 それを聞いた女神は大歓喜! 女神は、ヘルマの願いを叶え、泉の妖精と分かれさせて、ヘルマを一人の人間の男に戻してくれたのだった。

 そして、泉の妖精は悲嘆(ひたん)()れて、泉を去ってしまった。

 だが、一方の神は怒り、泉を去ろうとするヘルマに、「そんなに女が良いなら本当に女になってしまえ!」と、ヘルマを神力で本当に女にしてしまった。

 ヘルマは、悲しみのあまり、泉で自らの命を絶ってしまうのだった。

 それからというもの、ヘルマの泉で水浴びをした男は皆、「ヘルマの呪い」で、皆女に変身してしまうという呪いにかかってしまうのだった。

 その後の、「元泉の妖精」が、どこへ行ってしまったのかは定かではない。


 なんとも、迷惑極まりない神である。


 そんな「ヘルマの泉の水」が、「女装剤」の素材の一つだったする。



 だが、現代の常識や既成概念では有り得ない事象の事柄だ。

 そんな伝説も、ある意味、夢物語やファンタジーとして捉えられている。

 でも、現に大晴と義斗は男から女に変身している。

 これは魔法でなきゃ説明ができないのだから。


 だが、母親も昔は男だったと言われると、俄には信じ難い。

 それもそのはず。

 だって俺は、女である母親から生まれたのだから、母親が男だった頃を確認なんか出来ない。

 どう見ても、どう考えても、母親が元は男だったなんて想像もつかない。だって、物心ついた時から、母親は母親なんだから。

 当たり前ではあるが、当たり前であるという「既成概念」がために、母親が元男だったなんて信じられないのだ。


 それより親父は、知っていたのか?

 大晴の父親の名は、「白鳥しらとり 直登なおと」。

 現在は、イギリスで魔導具の研究開発の仕事をしている。


 親父は今、単身赴任中で家に居ないし、仕事柄、滅多に連絡も取れないので確認する事はできないが、親父が家に居たときも、自分の嫁が昔は男だったなんて話は、一度も聞いた事などはないし、普通に考えれば話せないのは理解できる。


「宇宙に人が住む時代に魔法だって? そんなこと信じてんの?」


 と、言われるのを恐れたのかも知れない。


 それより、母親は白鳥家の嫁だ。

 母親も女装剤を飲んで女に変身したって、どんな経緯で女になった? なんで元男が男と結婚なんて事になった? いやそれより、まさかサクラ婆ちゃんまで、昔は男だったとか?

 俺は母親に聞いてみた。



「ほな、サクラ婆ちゃんも、昔は男やったんか?」


「あ、それ知りたい!」


「うぅん! お義母さんは、元から女やったそうやよ」


「あれっ!? へぇ~・・・そーなんや?」


「へぇ・・・」



 あれれ? 予想と違う答えが返ってきたぞ?

 俺が男から女になって、母親も男から女になってて。だったらその流れから考えると、サクラ婆ちゃんもてっきり男から女になったんだと思っていたのに、ちと期待外れだった。


 いやそれより、魔法使いだったんだから、もっと深い秘密があるのかも知れない?! いや、あって欲しいと期待していた。

 だって、魔法がファンタジーのこの世界で魔法使いだなんて、凄いじゃん! カッコいいじゃん!

 もし俺が、サクラ婆ちゃんがまだ元気なときに魔法使いだったと知っていたら、いや信じていたなら、俺も魔法使いになれたかも知れない?

 あの魔法使いの映画の主人公マネーボッターみたいに、呪文を唱え魔法の杖をクルリと回してポン!って、魔法を使ってみたい! なんて考えていた。



 大晴は、サクラ婆ちゃんの秘密について聞けると思ってワクワクしていた。

 自分が女の子に変身してしまった事も忘れて。

 それより、母親の年齢だ。

 確か母親は今年で54歳だったはず? ってか、中1の一人っ子の俺が子供にしては、エライ年食ってないか? 高齢出産? 単純計算でも、40過ぎで出産したことになるぞ! 何で今まで気が付かなかったんだ? 普通に知りたくなるだろう?


 それにしては、めちゃ若く見える。

 見た目だけなら、18~19歳くらいに見える。

 聞いちゃいけない気もしたが、思い切って聞いてみた。



「ちょっと待って?」


「なに?」


「・・・?」


「おかんって、今年で54歳よな? 凄く若く見えるんやけど」


「うっ・・・」


「あ、そー言えば!」



 歳のことを聞くと、母親は気まずそうな顔をする。

 ああ、女性に歳を聞くのは野暮か? いやいや、アンタは元々男だったんだろ。

 それとも、女として生きた年月の方が長いから、心も完全に女になったのか?


 なんてことを、グルグルと考えていたら、突然!



「しゃーないやろう!!」


「「ひっ!」」


「二十歳になったときに、いきなり女にされて、オマケに結婚させられて、はい子供産めー! なんて言われても、はいそうですか! って出来るわけがっっっないやろぉ━━━!!」


「「はいぃいぃいぃ~~~」」



 あービックリした!

 母親は、いきなり顔を真っ赤にして怒鳴るもんだから、マジでビビった!

 何なんだ?! いったい何があったんだ? 女にされた?! 確か結婚したのは二十歳のときだとは聞いていたが、俺を生んだのは結婚から20年以上も後?

 だが、なんとなく察した。


 母親は、二十歳のときに、女装剤を飲んで女になった。

 だとしたら、父親の白鳥(しらとり) 直登(なおと)はそれを知っていたのか? 元男だった人と結婚なんて考えられるの? もしかして、お互いに思うところがあって、俺が生まれるまでに時間を要したのではないかと。

 もしかして俺にも、将来結婚する事になるような野郎が現れるのかな?

 なんて考えると、ぞわわわわ~って全身鳥肌ものだが。


 そりゃそうだわな。

 二十歳になったときに女にされたとして、いきなり子作りなんて出来ないわな。

 だって心は男だもの。

 いくら身体は女だとしても、心は男なんだから、男に抱かれるなんて考えたくもないだろう。


 だが母親は、これ以上は話したくないのか、急に話を変えた。



「そんな事より、アンタら汚れてドロドロやん!」


「「えっ?!」」


「これは、まあ・・・」


「いろいろ、ありまして・・・」


「ほら、行って行って!」


「「え?」」



 母親に押されながら、母親の顔を見ようと振り返ると、俺が男のときは、母親と同じほどの背丈があったのに、今では俺も義斗も母親よりもかなり背が低い。

 それに、母親の怒りとも戸惑いともつかない表情は、「これ以上聞くな」という無言の圧を感じる。


 どうやらこれ以上は、昔の話しは聞かれたくないようだった。

 なら、サクラ婆ちゃんの話は、お預けか?


 でも、サクラ婆ちゃんが亡くなってから、酷く落ち込んでいた母親が、いつしか元気になっていて少し嬉しかった。

 こんなに元気で声を大きくする母親を見るのは久しぶりだった。

 そのせいか、俺も義斗もちょっとテンションが高くなっていた。


 母親は、どうやら俺達を風呂場へ連れて行く気のようだ。

 2人を風呂場の脱衣場へ向かって尻を突っ突くように追いやって行く。


 大晴の家の風呂場は土間にあるので、履物を履いて行くのだ。

 昔は五右衛門風呂(ごえもんぶろ)だったようで、まだその形跡が残るのだが、今の風呂場は拡張されてタイル張りになっている。

 タイルとは言っても、丸い石コロのような、黒とか水色とか白の小粒なレトロタイルだ。

 それだけでも古さを物語る。

 でも大晴にとっては、物心ついた時からこれだったので、こんなものだと思っていた。


 しかも、異様に広い! ガラーンとして広すぎて、冬なんて寒すぎ!


 そして・・・



「女の子が、何をこんなにドロドロになるまでほたえて(暴れて)んの!! 先にお風呂に入っちょいなぁ! 」


「女の子ちゃうわぁ!!」


「そーですよおー! 女になんか嫌ですよ! 女の子やなんて言わないでくださいよー!」


「でも、女の子でしょーがぁー!!」


「「あうう・・・」」



 そうなんだ。そうなんだけど、人から女だと言われると、なにかガツン!とくるものがある。

 やっぱり風呂か! だぁー!! 女の子女の子って言うな! 母親は、2人がまるで最初から女の子だったかのような言い方をする。

 何か引っ掛かるのだ。母親の言い方には。


 ところが・・・



「ほらほら! 女の子用の服も下着もちゃんと用意してるから、サッサとお風呂に入っちょいなーって!」


「はぁ?! ちょっと待てぇ! 本気で俺を女の子にする気か!?」


「なん、なんすか?! それ、どーゆー事っすか?! 俺、女の子の服なんか着ませんよ!」


「どないもこないも、あらへんわ! 女の子なら、女の子の服を着るのが、当たり前でしょーがぁ━━!」


「「ぬわぁ~にぃ~~~!!」」



 なんだとぉー?!

 女の子用の服も下着も既に用意しているだとお?!

 母親の言い方からすると、俺達2人が女装剤を飲んで女の子に変身する事を以前から知っていたってこと?

 手際が良すぎる!

 まさか母親ってば、魔法使いか占い師なのか?



「なんか、おかんは俺らがこうなる事を知ってたみたいやな?」


「ふん! まあ~ね! お義母さんから、大晴が女装剤を飲んで女の子になるのは、今年の夏休み中って聞かされてたからね!」


「「はあっ?!」」


「まあ、義斗君はオマケみたいなもんけど」


「へっ?! 義斗はオマケ?」


「オマケってゆーか・・・巻き添い食った?」


「んなっ?!」


「ぬわぁ〜〜〜にぃ〜〜〜?!」



 なんと!!

 サクラ婆ちゃんから、俺が女装剤を飲んで女の子に変身する事を聞かされていたぁ?!

 しかも、この夏休み中だとぉ?! 未来予想? 予言? 未来予知!? 怖っ!!

 なら、本当にサクラ婆ちゃんは、魔法使いだったんだ!

 って言うか、こうなるように仕向けた? だから、わざわざ女装剤を残していた? もう、何が何だか解らない!

 いろんな事をグルグルと勘ぐってしまう。


 それより、義斗が女の子になるのはオマケ?

 巻き添いってか? は? もしかして、俺のせいで義斗も女の子になってしもたとか?

 もしそうなら、すまん義斗・・・許せ。

 でも、俺の贔屓目で見てもお前はトビキリの美少女だ。

 いや、美幼女か? なんて言っても慰めにもならないか。

 でも、何だか母親が、俺が女の子になった事が嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか?



「ほら、はやく!」


「なあん!! ちょっと押すなっ!」


「ちょっと待ってくださいってぇ! せやったら、なんでもっと早く教えてくれんかったんすか!」


「そーじゃよぉ! 蔵に入る前に、なんで教えてくれんかったんよ!! 知ってたら、女装剤なんか絶対に飲まへんかったのに!」


「うぅん・・・チッチッチッ! これは宿命なんよ」


「「宿命?!」」



 母親よ、人差し指を立ててメトロノームみたいに振って、何がチッチッチッだ?

 誰の何の真似だそりゃ? そんな母親のドヤ顔が妙にムカつく!



「そ! たとえ、アンタらが女装剤を飲まんよーに私が先に話したとしても、手を回したとしても、絶対に! 確実に! 必ず! 女装剤を飲むことになる! そうなるように宿命づけられてたんよ!」


「うっ!・・・そんな・・・」


「!!・・・なんで・・・なんで・・・」



 何でもいいけど、その、人差し指を突き刺すように俺の目に近付けるのはやめてくれ!

 そしてその「犯人はお前だー!」みたいな、ジトーとした目! 怖いんですけおどぉ!

 それに母親の、似たニュアンスの言葉を何度も続けて言うのがまたムカつく!


 コレは、シッカリと大晴にも気引き継がれてはいるが。


 よく、運命は努力次第で変えられると聞くが、宿命は変えられないと聞く。

 死刑宣告を下された気分だ。

 大晴は、絶望感で膝から崩れ落ちて座り込んだ。

 義斗もペシャリと女の子座りで座り込み、ガタガタと震えていた。


 そしてここで母親は、サクラから聞いたという話を、話し始めた。



「これは、お義母さんから聞いた事なんやけどね?」


「え? うん・・・・」


「ううう・・・」


「大晴、アンタはどうやら、女装剤を作った魔法使いと関りがあるらしいんよ!」


「「えっ?!」」



 それは、どういう事?!

 俺が女装剤を作った魔法使いと関りがある? なんで? だって、女装剤を作った魔法使いって、何十年前の人? 何百年前の人? 絶対に俺は生まれてないですよね? ねえ? それで関りがある? 有り得ないでしょ!

 母親は、続けて話す。



「お義母さんには、ずっと何度も何度も見る同じ夢があったらしくてね、その夢に出てくる女性魔法使いが、『生まれてくる両目の下に小さなホクロがある女の子』に、女装剤を託せ、と言うらしんよ」


「「?!・・・」」


「しかも! あの女装剤には消費期限が迫ってた! その期限が、この夏やったって訳やね!」


「「なっ?!」」


「生まれてくる両目の下に小さなホクロがある女の子・・・? 女装剤には消費期限があった・・・?」


「ん!?」


「なんや?」



 この時、義斗のには思い当たる事があった! 義斗は、大晴を指差して言う。



「まさか、それって大晴、お前とちゃうんか?」


「まてよ! 俺は()やろがよ!」


「・・・でも()()()()()やろ?」


「!・・・」



 義斗は、大晴の顔をじっと見て、そう言う。やめてくれ! それ以上言うな。


 実は大晴にも思い当たる事柄だった。



「って、おおい! いくらなんでも、それはこじつけやろ!」


「でもよお? 両目にホクロって、なかなか居らんのとちゃうか?」


「そんなん確率の問題やろ!!」


「そーじょ! 確率の問題じょ!」


「はぁん? 何が言いたいんじゃ?」



 大晴がそう聞くと、義斗は指を折りながら、大晴に言い聞かせるように説明する。



「せやからな、よく考えろよ? 『生まれてくる子供』に、『両目の下にホクロ』に、『女の子』に、んで『女装剤の消費期限の、このタイミング』やろ? 確率ってゆーけど、この4つも揃ってるんは、それこそ確率の問題で、()()()()()()()()とちゃうんかぇ?」


「んなっ?!」


「そ! 義斗君の言う通り! そーゆー事なんよ!」


「?! 嘘やろ・・・勘弁して~くれ~よぉ~~~」



 大晴は頭を抱えて座り込み、(うずくま)って叫んだ


 確かに大晴には、両目の下にホクロが1つずつある。

 とはいえ、あまり目立たないので、大晴自身、あまり気にした事などなかった。

 こんな、よく見なきゃ気付かないようなものが、そんな大それた宿命を持つ者の証明になんかになるのか?。

 それに、大晴は男だった。

 だが、サクラの見る夢では、「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」だと言う。

 確かに大晴は男だったが、女装剤を飲んで、まさにその「生まれてくる両目の下に小さなホクロがある女の子」に、なってしまった訳だ。 当てはまり過ぎて怖い。

 そして、「女装剤の消費期限」だ。それが本当なら、タイミングが良すぎる。

 それらが見事に当てはまり過ぎて、疑いの余地が無いのが、大晴を絶望させた。


 その後、母親が祖母サクラから聞いたという話を聞かされた。




 女装剤とは。


 女装剤には、男性が匂いを嗅ぐと、自分の意思では逆らえなくなるほどの強烈な「飲みたい」という衝動に駆られる、とても強い呪いがあるとされている。

 また女装剤には、普通の女装剤と、特別な女装剤があった。

 サクラが管理していた蔵の中の女装剤こそが、特別な女装剤なのだった。


 むかしむかし、ある女性魔法使いが、彼の浮気を許せなくて、彼が他の女性に対して性的に興奮すると、「女性に変身する呪いの薬」を作った。それが、後の世に「女装剤」と呼ばれる呪いの魔法薬だ。

 だが結局、女装剤は使われることはなかった。

 そして彼女のお腹には、彼の赤ちゃんが居たという。


 だが、女装剤を作った女性魔法使いは、元彼だけでなく、「浮気は男の甲斐性(かいしょう)ではなく(さが)」という認識だったので、男性が匂いを嗅ぐと、「飲みたい」という強烈な衝動に駆られ(あらが)えないようにし、「全ての男を女にしてやる」という恐ろしい呪いの薬であった。

 

 だからサクラは、蔵の管理は女性にしか任せなかった。女性には、効果の無い代物だからだ。


 だからこそサクラは、男性である、息子の直登(なおと)と、孫の大晴には、絶対に蔵には近付かないように、鍵も触らせないようにするしかなかった。

 そして蔵には、人が近付かないようにと、サクラが結界を張っていた。人ももちろんのこと、動物達にでも入られ蔵の中で物色でもされて、万が一「女装剤」を持ち出されたり、瓶を壊されたりでもしたら、それこそ大変な事になるからだ。

 だが、息子直登の親友 光星(ひかり)が、交通事故を起こして瀕死になり、サクラは仕方なく蔵とは別に保管していた、「別の女装剤」を使って、光星を助けた。

 光星は、命は助かりはしたが、女装剤の呪いにより女に変身してしまったのだった。

 そしてその光星こそが、現在の嫁であり、大晴の母親である楓である。


 しかし、これにより、状況が変わってしまった。


 サクラには、800歳を超える高齢の魔法使いと結婚して、息子の直登が生まれていた。

 この頃になると、サクラの旦那は1000歳を超えていたのだ。この時点で息子の直登さえも数百歳だった。

 もう、正直子作りは難しい。

 サクラには直登しか子供が出来なかったため、仕方なく直登に女装剤を飲ませて、直登を女にするつもりだった。

 なぜ息子の直登を女にする必要があるのか? それは、サクラは蔵の女装剤の効果が無くなる前に、この世を去る事になることを、夢のお告げで解っていたからだ。

 それに、直登には結婚を約束した許嫁がいたのだが、飛行機事故で亡くなってしまったからだ。


 問題はそれだけではなく、蔵に厳重に保管している最後の1つとされる女装剤は、普通の女装剤ではなかった、


 「呪薬(じゅやく)の女装剤」


 その呪いの効果は、複数の男性を女性に変える効果があるため、必ず2人以上の男性を引き寄せる力がある。

 しかも、恐ろしい呪いの効果はもう1つ、呪薬の女装剤には、男性が飲んで女性化すると、自動的に1人に1本ずつ、新しい呪薬の女装剤が、ご丁寧にも瓶入りで勝手に精製されてしまうという。つまり、呪薬の女装剤は、使えば使うほど数が増えて、被害者が増えてしまう結果となるのだ。そうなると、更に管理把握が難しくなる。

 そして驚いた事に、サクラの一族は、呪薬の女装剤の管理を代々引き継いできた魔法使いの一族だという。

 また、呪薬の女装剤には、女性に精神的な嫌悪感を与える呪いもあるため、女性には近寄る事すらできなかった。

 楓が、蔵に近付けなかったのは、これが理由だ。

 もし、破棄したとしたも、川や海に流そうとしても、瞬時に蒸発して大気中に拡散されて、周囲数百メートルもの範囲の男性を女性に変えてしまう、「女性化爆弾」となり、最大最悪の大混乱を起こすのは想像に難くない。だからこそ、万が一の事を考えて、白鳥家の家は人里離れた場所に建てて住んでいたのだ。

 そしてサクラの管理する女装剤こそが、この世に残る最後の1つの「呪薬の女装剤」だと云われているのだそうだ。

 つまりサクラは、最後の1つである呪薬の女装剤を、完全にこの世から消し去るのが代々受け継がれてきた役目であり、義務であり、宿命であった。

 なぜなら、サクラの先祖こそが、女装剤の開発者の「大魔法使い」だったからだ。

 つまり、サクラの孫である大晴は、女装剤をこの世から完全に消し去るための役目と責任を持つ最後の子孫と言えるのだ。

 またその親友の義斗も、その呪薬の女装剤の呪いに引き寄せられたと言っても過言ではない。また、その理由があった。

 

 更に、その女装剤には、特殊な呪いがかけられている。

 女性が飲もうとしても、強烈な臭いと吐き気と嫌悪感を抱くよう呪いがかけられいて近付けないし、たとえ強引に飲んで始末しようとしたとしても、絶対に吐き出してしまうという呪いだ。

 もしそうなれば、被害は少なくなるとはいえ、「女性化爆弾」となるのは必然だ。

 なので、女性は呪薬の女装剤の被害から守るために管理保管はできるが、故意に始末はできないのだった。


 しかも、その最後の呪薬の女装剤の消費期限が、今年の夏と迫っていた。


 もし、消費期限内に使わなければ、自己消滅するよう設定されており、1000倍以上に倍増して爆発し、広範囲に女装剤の効果を撒き散らしてしまうという、最悪の呪いがかけられていたのだ。

 もし、そんな事になってしまうと、また新しく、いったい幾つもの呪薬の女装剤が生み出されてしまうのか分かったものでは無い。

 それだけは絶対に避けなければならない。

 それが現実のものとなれば、いつかはこの世から「男性」が居なくなる。まさに人類滅亡である。


 そんな時、サクラはある同じ夢をよく見る事を思い出した。


 その夢とは・・・

「両目の下に小さなホクロがある女の子が生まれてくる」

 そして、その女の子に、女装剤を託せというものだったらしい。

 その女の子なら、呪薬の女装剤の呪いを打ち消す力があると言う。

 サクラは、両目の下にホクロがある女の子を、それこそ世界中を探し回った。云われ、噂、伝説、関係があると思われる者、そして女装剤に関係ある物として少しでも疑わしい物、可能性がある物であれば、片っ端から手に入れて調査し処分したりもした。それでも、女装剤と関係のありそうな両目の下にホクロのある女の子なんて見付からなかった。

 結局、今から100年ほど前、両目の下にホクロのある女の子を探す事を諦め、この地に家を建て、蔵を建て、女装剤を厳重に保管した。

 なぜなら、夢では、「()()()()()()両目の下に小さなホクロがある女の子」である。

 もしかしたら、()()()()()()()()()()()()()()かも知れない。

 でも、あっという間に100年も過ぎてしまった。旦那は、既に1000歳を超える高齢の魔法使い。彼にこれ以上無理はさせられない。息子の嫁に期待するしかなかった。

 なのに、その彼女も、亡くなってしまった。それどころか、呪薬の女装剤の消費期限が迫っている。もうこうなったら、息子の波音に普通の女装剤を飲ませて、「女にして呪薬の女装剤の最後の管理者」にするしかないと覚悟を決めかけていた。

 そんな時、息子の親友の光星が瀕死の重症を負い、止むを得ずいざと言う時のために持っていた普通の女装剤を使って光星を助けたのだが、この時にサクラは、3回目の「精霊の倫理に反する行為」をしてしまい、魔法使いとしての記憶も力も失い、普通の人となってしまった。これにより、サクラの寿命が尽きる日が決まったも同然だった。

 だが予想外な事に、光星は「楓」と改名し、戸籍も女性へと変更し、なんと直登と楓が結婚することとなったのだ。

 

 そして生まれてきた子供は男の子であり、女の子ではなかったが、気になったのが、両目の下にホクロがある。

 サクラは諦めかけた心の闇が、一気に大きく晴れた気持ちになった! そしてその男の子に、()きく()れるとして、大晴(たいせい)と名前を付けたのである。

 

 そこでサクラは、賭けに出た。

 サクラが生きている間に、他に両目の下にホクロがある女の子が見付からなかったら、女装剤を孫の大晴に託すしかないと。

 だからサクラは、自分が死ぬまでは、大晴に蔵の中には絶対に入るなと言っていたのだった。

 それは、サクラの命が尽きるギリギリまで、大晴の他に両目の下にホクロがある女の子が見付かる可能性も考えての事だった。

 だが結局、最後までそんな女の子は見付かる事はなかった。

 もう、疑いの余地はない。いや、信じるしかない。

 もしも、大晴が宿命の「両目の下にホクロがある女の子」ならば、必ず女装剤を飲むことになる。

 それからというもの、サクラは「両目の下にホクロがある女の子」の夢を見なくなった。この事から、サクラは大晴こそが、「両目の下にホクロがある女の子」なのだと確信したのだ。

 そして、その女装剤は特別なものであり、大晴に1番関わりのある男性を引き寄せるだろう。

 だとしたら、大晴の幼馴染の義斗しか居ないと考えたのだった。

 相良家もまた、女装剤の開発者の大魔法使いの縁のある一族である。


 義斗もまた、関係がない筈がなかった。


 なので、大晴と義斗が女装剤を飲んで女の子になるのは、宿命だと言っても過言ではないのだ。



「━━━と、言うわけなんよ! だから、大晴は男やったから女装剤を飲めた。んで、女の子に変身したけど、両目の下にホクロがある女の子には、呪いを打ち消す力がある。それは、女装剤の作成者が、『両目の下にホクロがある女の子』になら、『呪いを消せる』という条件を与えた。だから、新しい呪薬の女装剤は精製されなかったってわけ! まさに宿命やね!」


「!!・・・なんで・・・宿命」


「そんなん・・・そんなんないわ 俺も宿命を持つ1人やったなんて・・・」


「しゅ・く・め・い!! もう、アンタらは、男の子には戻れません!!」


「「!!・・・・・・」」



 大晴は、その場に後ろへ倒れ込んだ。

 まるで殺虫剤をぶっかけられたコックローチだ。義斗は、涙さえ流している。

 きっと心のどこかで元に戻れるはずだと思っていたのに、もう戻れない事を知った。更に、自分までもが「宿命」を持つ者の一人だったことに、ショックが大きかったのだろう。

 かと言って、このまま居たとしても仕方がない。


 2人は肩を落として、風呂場の脱衣場いに入った。風呂場のドアを開けると、そこも土間になっていて洗濯機と洗面所がり、すのこが敷かれている場所が脱衣場になっている。

 靴を脱いで脱衣場に入ると、義斗は(うつむ)いたまんま泣いていた。

 大晴は観念して服を脱ぎ裸になる。

 そして震えながら泣く義斗の服を脱がせ立ち上がらせると、義斗の肩を抱えて、風呂場へと入った。

 だが、義斗は風呂場の中でも、項垂れるように俯いていた。



 シャ━━━!


「うわぶっ!! 冷たっ! ちょっ、お前っ・・・」


「うるさい! はよ身体洗え!」


「・・・ううう」



 大晴は、泣いて何もしようとしない義斗に、頭からシャワーをぶっかけてやった。そうすると、義斗のことだから、吹っ切れて笑ってくれると思った。

 だが義斗は、一瞬驚いてはいたが、また俯いて力無さげに両腕をダラリと下ろす。

 そして、風呂場の冷たいタイルの床に、また女の子座りで座り込んでしまった。


 まるで人生に絶望したかのように。


 その、力無き座り込む姿はまるで、糸の切れたマリオネットだった。大晴は、そんな義斗の顔をかがんで覗き込む。



「・・・まるで、糸の切れたマリオネットやな」


「・・・うるさいわ」


「しゃーないやろう!? もう元の身体に戻れやんって判ったんやから、今更どないもこないも出来へんのやぞ!」


「わかってるってえっ!!」


 パチン!


「ぶわっ!!」



 義斗は、両手で床のタイルを力いっぱい叩いた。

 飛び跳ねた水が大晴の顔にはねる。

 その瞬間、無性に腹が立ったが、まるで捨て身かのような義斗の様子を見て、大晴も悲しくなった。



「何しとんじゃお前ぇ!!」


「くそお! くそお! くそお━━!」


 パチン! パチン! パチ~ン!


「義斗・・・」


「うわぁ~~~ん!!」


 パチン! パチン!パチン!


「・・・・・・」



 泣き叫びながら、両手で床のタイルを叩き続ける義斗。


 気持ちは解るよ。

 俺だって、最悪の事態を回避できたのは幸いにしても、女の子になってしまったのだから、これからどう生きて行けば良いのか分からない。

 だからって、今ここで足掻いても、何も変わりはしない。


 とにかく今は、風呂で身体を洗って、気持ちも立て直してから、母親にこれからについて話を聞こうと思う。

 だから、もう泣かないでくれ・・・と、義斗をなだめるはずが、大晴もとうとう・・・・・



 パチン! パチン! パチン!


「もう、やめろって・・・手が痛いだけやぞ?」


「ふぇえぇえぇえぇ~~~ん!」


「ううう・・・くそおっ!! うわぁ~~~ん!」



 大晴も威勢を張っていたが、泣き叫ぶ義斗を見ていると、大晴も将来の不安と絶望感で、結局は泣いてしまった。



 その頃、仏間の母親は・・・


「・・・・・・グスン!」



 母親も、涙を流していた。

 息子に何もしてあげられなかった事に、自分に怒りを感じていた。

 結局は、何も変えられなかった。いや、変えてはいけなかったのだ。宿命なのだから。

 そして、仏壇に乗せられた、義母サクラの遺骨の入った骨壷に向かって、1人こう話しかけた。



「お義母さん・・・お義母さんのった通りに、あの子は本当に女の子になってしもうたよ。隣の義斗君まで、巻き添え食って女の子になってしもうたけどね? もしかしたら、大晴は義斗君と2人で蔵に入ったら、宿命を回避できるかも?って思てたけど、やっぱり無駄やったみたいやね? 義斗君には申し訳ない事をしてしもたね。義斗君だけは、回避できるかも知れへんと思ったけど、あの子もやっぱり宿命を持って生まれてきたんやね。もしこれを下手に阻止したら、たぶん私らのこの世界は滅亡する。これで良かったんよね? お義母さん? でも、私はまた一つ、罪を犯してしもたんかも? この罪は、私は一生背負っていく! それと、義斗君も大晴のええ()れに、助け人になってくれるかも知れへん。お義母さん、ホンマにこれで良かったんかなあ? 大晴と義斗君は、受け入れられるんかなあ? でも、私みたいに大人になってから女になるよりかは、まだ子供のあの子らやったら、受け入れられるんも早いかも知れへんね? はあ━━・・・・」



 そう言って母親は、深く大きなため息をついた。



 その頃、脱衣所にて・・・


「ほら、ちゃんと身体拭け!」


「うん・・・」



 その後、2人はしばらく泣いていたが、不思議と涙をいっぱい流すと体内からストレス物質が減って気持ちがスッキリするというのは本当らしく、いつの間にかケロッとしていて、気持ちも少し晴れていた。

 2人は、身体を洗って風呂場から出ると、自分の服を探した。


 ところが、いつも大晴が穿くカラフルなトランクスが無い・・・



「あれ? 俺のパンツ・・・」


「あれ? あれ~~~?」



 義斗は、前開きのボクサーパンツ派だ。キョロキョロと見て探してはいるが、見付からない。やっぱり、義斗のパンツも無い。

 でも、金髪碧眼の美幼女の前開きボクサーパンツ姿ってどうよ?と、不覚にも想像して余りの不似合いさに頭をブルブル振った。

 洗濯機の上に、それらしき”もの”は丁度2人分あるのだが、どう見ても「女の子用の服」だ。

「これを着ろと言うことか」と母親の意図を理解しつつも、いやいやそれは違うぞと心の中で自分に言い聞かせる。

 仕方なく、いや一応、母親に聞いてみることに。



「おかーん! 俺のパンツわぁ━━!」


「洗濯機の上に畳んで置いてるやろー!」


「洗濯機・・・って、げっ! やっぱし(やっぱり)か」


「義斗君のも、置いてあるからー!」


「?!・・・マジか」



 確かに洗濯機の上に、大晴と義斗の2人用の着替えらしき物が、きれいに畳んで並べて置いてある。

 そして、小さい何かを持ってスルスルと開いてみると、それはショーツだった。しかもショーツには、ピンクの苺らしきイラストが描かれている。 もう一つのショーツには、パイナップルなのか?

 それと、パジャマなのかコレは?

 ピンク色の生地に苺柄と水玉模様のパジャマと、黄緑色の生地にパイナップル柄と水玉模様のパジャマのようだ。


 母親は、なんでこんなパンツとパジャマを選んだんだ?

 うん! 実に可愛らしいパンツだ。実に可愛らしいパジャマだ。

 これも良いが、女の子用の浴衣なんかも可愛らしくて良いかも? 金髪碧眼の美幼女の義斗ならさぞかし似合うだろうな。俺ならどうかな?


 うん、可愛らしい・・・って、ちがーう! 何を考えているだ俺は━━!!



「おかぁ━━ん! 何じゃコレわぁー! 俺のトランクスはどーしたんよぉ!! コレって、女の子用のパンツやないかぁー!!」


「・・・マジか」


「あっっったりまえやろお━━!! 女の子が男の子用のパンツなんか穿いて、どないすんのぉー!!」


「はぁー?! なんてよぉ~! い~やぁ~やぁ~!! こんなもん、穿けるかよぉ!!」


「・・・マジか」


「あっそう? じゃあー裸でいなさい!」


「「どぉぇえええええ~~~!!」」



 ふと窓の外を見ると、もう日が傾いて夕焼け雲が見えていたが、景色がユラユラと揺らめいている。涙で目が霞む・・・なんでこんな事に。


 2人は諦めて、女の子用の服を着ることにした。



「大晴、お前どっちを着るん?」


「俺わぁ~苺かな?」


「ええ~なんで~! 俺、苺がええんやけどなぁ?」


「わかったよ! ほな、パジャマは?」


「・・・ピンク!」


「やっぱし? もうええわ・・・ほら!」


「うふっ ありがとう!」


「・・・」 


「・・・・・・」


「「ちがぁ━━━━━━う!!!」」



 大晴と義斗は、頭を抱えて絶叫した。



とうとう来たか! 女の子用の服を着るということは、一線を超えるというか、自分は女の子だと受け入れるということ。

だが、他に何も着る服が無いのら、仕方ない・・・・

受け入れるしかない大晴と義斗。

でも、心のどこかで、元の身体に、日常に戻れると信じていた。

それでもどうやら、これは宿命のようだ。

大晴と義斗が見ている未来は、希望か絶望か。


なーんて、よくあるパターンですね。

でもそれが、このジャンルのストーリーのテンプレ経路。


「ヘルマの泉」の神話は、正しくは、「ヘルマフロディートス」です。

男と女のどちらが・・・の神話は、「テイレシアス」です。

どちらも、脚色していますw

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― 新着の感想 ―
[良い点] 見た目が変わるだけかと思って読んでたのですが、 まさかの母親が… 予想外でビックリです。 [気になる点] 最終的にどうなるのか続きが凄く気になります。 少しずつ読み進めます~。 [一言] …
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