表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装剤  作者: 嬉々ゆう
28/91

第27話 「妖精セラティーとダンジョン」

名も無きダンジョンの管理者妖精は、名も無き妖精だった。

妖精には、もう主人は居ない。

とても可哀想な妖精だった・・・



文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。

 



 ••✼••破棄されたダンジョン••✼••



「誰か来るわ!」


「ぬっ?!」


「「「「 !!・・・ 」」」」


「え?・・・・・・」



 それは、妖精だった。


 でもその妖精は、自我が無いのか、死んだ魚のような目をしていた。


 属性は「土」のノームのようだ。

 他の妖精達の様に可愛らしい妖精なのだが、まるで物言わぬ人形を前にしているような印象だった。


 リオティーが、その妖精に話しかけてみる。



「貴女のご主人様は、どこに行ったの?」


「・・・」


「・・・貴女のお名前は?」


「・・・・・・」


「・・・私達に、何か出来ることはある?」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・ダメね もう完全に自我を失っている うぅん、違うわね! 最初から自我がなんて無かったのかも?」


「むぐぐ・・・なんと言う事じゃ」


「なんてよ・・・そんなん・・・ないわ」

 涙を流す晴蘭。


「くっ・・・クソッタレ!」

 強くコブシを握り悔しがる海音。


「・・・ええふっ なんでぇ?」

 涙をポロポロ流して泣く千春。


「・・・・・・」

 ただ(うつむ)き、何も言えない虹音。


「彼女はきっと、ダンジョンに侵入者を感知したから、ここまで確認に来たのね」


「じゃ、じゃあ、自我は? 心はあるんじゃ?」

 晴蘭がリオティーに聞く。


「うぅん この反応は、あくまでもダンジョン・コアとしての反応にすぎないの! 侵入者を排除するためのね」


「そう・・・なんか? でもじゃあ、なんで攻撃してきぃへんの?」

 晴蘭がリオティーに聞く。


「だって、私達に敵意が無いからよ」


「なるほど・・・」


「それにしても、ホンマに人形みたいに無表情やな・・・」

 海音が呟く。


「しーっ! 聞こえるで!」

 千春が口に人差し指を当てて言う。


「聞こえてても理解してないんとちゃうん?」

 千春に虹音が言う。


「さて、どうしたものか・・・」


「「「「・・・・・・」」」」



 本当に、どうしたものか・・・


 いつまでも、こうして睨み合っていても、仕方がない。

 どちらかが、何かアクションを起こさなければ、なにも状況は変わらないのだが、相手の出方が解らない以上、下手に動くと何が起こるか解らないので怖い。

 もしかしたら、コチラの何らかの動きで、攻撃して来るかも知れない。

 そう思うと、すごく怖い。

 可愛らしくも物言わぬ無表情な顔は恐ろしく見えるものだ。

 まるで、夜中の薄暗で見る、フランス人形のようだ。


 仕方ない。 出てみるか。

 晴蘭は、思い切って妖精に話しかけてみた。


 

「貴女の名前は・・・」


「え? セーラちゃん?」

 突然動き出した晴蘭を不思議がる千春。


「なんじゃ? 急にどうしたセーラよ」


「・・・・・・」

 相変わらず無表情な名も無き妖精。


「「「・・・・・・」」」

 晴蘭の出方を見守る海音と虹音とリオティー。


「俺の名は、晴蘭 セーラと呼んでくれ」


「・・・・・・」

 一瞬、目が動く妖精。


「はっ?! 今、目ぇ動いた!!」


「は? ホンマかえ?」


「うそ?!」


「セーラちゃん?! もしかして!!」


「う、うん!」


「セーラよ! もう少し話し掛けてみるんじゃ!」


「うん! 俺の名はセーラ! そして、貴女の名前は、『セラティー』 どうかな?」


「・・・・・・」


「「「「「・・・・・・」」」」」


「・・・・・・せ」


「「「「「 ?!・・・ 」」」」」


「せらてぃ・・・私の名前は、セラティー」

 急に瞳が輝き始める妖精セラティー。


「「「「え?!」」」」


「おお! なんと?!」


「この()の名前は、セラティーってゆうの?」

 晴蘭に聞くリオティー。


「んや? 今、付けた! この()は、最初から名前なんか貰ってなかったんじょ!」


「「「「ええ?!」」」」


「!!・・・・・・そうか!!」

 理解した良子。



 そうなのだ。

 この妖精は、最初から名前を与えられていなかったのだ。

 名前を与えられていない妖精は、主人を持たないのと同じ。

 つまり、この妖精は、今日のこの時初めて名前を与えられて、主人を持つ妖精となり、自我が芽生えたのである。


 そして、セラティーにとって、晴蘭が名付け親となり、この時から晴蘭の妖精となったのだ。



「きゃあー! なにこの() こんなに可愛かったの?!」

 はしゃぐリオティー。


「私、セラティー! 私の名前は、セラティー!!」


「そう! よろしくな! セラティー!」


「うんうん! よろしくねセーラ!」



 思いがけなく、妖精を持つ事になってしまった。

 本来なら、卵(魔晶石)のうちから、魔力を込めて温めなきゃいけないはず。

 そうしなければ、人として言えば、「養子縁組」となんら変わらないからだ。

 でも、後悔はしていない。

 この、セラティーが可哀想だったし、ニッコリ笑えば可愛いもんだ。



「それより、こん中って何も無いんよなあ?」


「え? えーと、ダンジョンの事?」


「そうそう 俺ら、ダンジョンにちょっと用事があってココまで来たんやけど、んでたまたまセラティーと出会ったんよ!」


「なるほど~ うん! このダンジョンは、元々盗賊達が財宝を隠すために作ったものだったの!」


「んなっ?!」


「「「「とーおーぞーくー?!」」」」



 なんと!!

 このダンジョンは、元は盗賊が妖精の力を使って造り始めたものらしい。

 きっと、財宝などを隠すためだったのだろう。



「うん! 盗賊の中に魔術師がいたのね 私はその魔術師に孵化されたの! 私にダンジョンを造らせるためにね!」


「へえ・・・で、その盗賊達は?」


「死んじゃった!」


「ええええー?!」


「「「はあっ?! 死んだあ?!」」」


「なんと!!」


「ダンジョンを12階層まで作ったら急に別の盗賊達が襲ってきて喧嘩になっちゃって、盗賊達も、私を孵化させた魔術師もみーんな殺されちゃって、後はどこかに行っちゃった!」


「それが、100年まえ?」


「う~ん わかんないけど、そうかも? ほら、アッチコッチに、盗賊達の骨がまだ残ってるわ」


「うげっ!!「やだっ!「こわっ!「ううむ・・・「わぁ~」

「なにそれ、闇過ぎるやろ(汗)」


「「「「・・・・・・(汗)」」」」



 確かに、盗賊達のものと思われる骨が残っていた。

 それだけでも十分にホラーだ。

 でも・・・・



「でもね! 奥に魔晶石が沢山あるのよ!」


「「「「ましょお~せきぃ~~~♡」」」」


「そう魔晶石! 私を孵化させた魔術師か死んじゃって暇だったから、私が作ってたの!」


「ん? 暇? 自我があったんか?」



 晴蘭は不思議に思った。

 完全に自我が無かった訳じゃなかったのかも?と。



「ほほお? それは物怪(もっけ)(さいわ)いじゃな」

 良子が言う。


「凄いじゃなあい! これで鉱山に行く手間が省けたってものね!」

 バンザイしてリオティーが言う。



 なんと!

 魔晶石がたくさんある?!

 それなら下手なユニークよりも、儲けものだ!



「それは、私達が貰っても良いもんかの?」


「元々私の物だし、今はセーラの物だから、セーラさえ良ければ、構わないわ! ダンジョン・コアとなる魔晶石を残してくれたならね!」


「へっ? 俺のん?」

 自分を指差して聞く。


「だ、そうだ どうなんじゃ? セーラよ」


「え? 俺は別に構わへんけど」


「ふっ そうか なら話は決まったな!」


「じゃあ、リオリオ! 魔晶石を採りに行くのね?」


「そうじゃな」


「「「いえーい!」」」


「はっは!」



 俺達は、魔晶石を探しにダンジョンの奥へと向かった。

 ダンジョン内は、様々な大きさの石ブロックで組み立てられた様な造りだった。

 通路の広さは、縦横3mほどの正方形。

 まるで、どこまでも続く石ブロックのトンネルの様だ。

 通路を進むと、少し大きな部屋になり、また通路のになる、そんなアリの巣の様な造りで、1番奥の2階層への階段がある部屋がとても広く、ボス部屋となっているようだ。

 ただ、階段への扉が設置されていないので、もしかしたらボスを回避して2階層へ行く事も可能ってやつなのだろうか?

 それOKしたら、ボスを倒さずに回避して先へ進む・・・次々とそんな奴らが出るぞ?


 それ、面白くなーい。


 だったら、俺達でモンスターを設定してやろう!と思った。


 でも、挑む冒険者達の生命までは奪わずに、HPが0近くなり倒れたら、「戦闘不能」とし、完全回復させてダンジョンの外への強制転移させるというもの。

 そしてモンスターも、モノホンのモンスターではなく、ゴーレムとした。

 見た目は様々なモンスターを模した姿と強さと攻撃パターンのゴーレムを設定し、倒したら経験値と金塊とドロップ・アイテムなども設定し、倒した後はある程度の時間が経つと復活するようにした!

 また、ボス部屋の手前には、避難場所として、モンスターのエンカウントしない部屋を設置。

 もちもん、「製作者」の俺達には、モンスターは襲って来ないように設定。

「回復の泉」なんかあってもいいかも?

 そして、モンスターの選別になった。



「第1階層は、何にする?」

 晴蘭がみんなに聞く。


「そらやっぱし、スライムとかゴブリンとちゃうかえ?」

 海音が提案する。


「そうやね! 最初はやっぱし、弱いモンスターからでええんとちゃう?」

 千春も賛同。


「ねえねえ、じゃあ、第1階層のボスはなんにするのお?」

 虹音がみんなに聞く。


「ゴブリン・リーダーとか、ビッグ・スライムとか?」

 晴蘭がみんなに聞く。


「「「う~~~ん・・・・」」」

 悩む海音と千春と虹音。


「じゃあ、触手で攻撃してくる、イソギンチャクはどお?」

 虹音がニコニコ笑顔で提案する。


「「「ええ━━━・・・・・・(汗)」」」

 くしゃみを我慢するような表情の晴蘭と海音と千春。


「・・・・・・ダメ?」



 相変わらずの、虹音姉ちゃんだ。

 何を企み妄想しているのかが解る。

 もう、だいたいの虹音姉ちゃんの思考パターンは解ってきている。

 でもなんで、海でもないのにイソギンチャク?

 結局、ゴブリン・リーダーとか、ビッグ・スライムだとテンプレすぎるとは思ったが、巨大牙ネズミにした!


 なぜなら、基本、この世界のスライムは無害だ。

 「掃除屋」の異名を持ち、モンスターというよりも、益獣という位置付けだ。

 そして、ボスを倒したら、宝箱と2階層への鍵が解錠されるように設定した。



「ふー! ま、こんなもんかな?」

 汗を拭い言う晴蘭。


「ええんとちゃう? 第1階層やし?」

 頷きながら言う海音。


「結構時間かかったね!」

 やれやれの表情の千春。


「おんもしろかったあ!」

 ニッコニコの虹音。


「まあ、良いじゃろう では、次々どんどん進めて行くぞえ?」


「「「「はあーい!」」」」



 設定したのは、次の通りだ。


 ★第1階層

 牙ネズミ、牙ウサギ。

 ボス=巨大牙ネズミ。

 ドロップ=冒険者の靴(移動速度+8%)


 ★第2階層

 巨大牙ネズミ、巨大牙ウサギ。

 ボス=ゴブリン。

 ドロップ=銅の指輪(攻撃速度+8%)


 ★第3階層

 ゴブリン、ゴブリン・リーダー。

 ボス=ゴブリン・キング。

 ドロップ=腰ベルト(STR+3)


 ★第4階層

 モンスター無し。

 鉄鉱石、クリスタルなどが採れる。

 ドロップ=パワーリスト(ATK+3)

 セラティーが回復の泉を設置。


 ★第5階層

 ゴブリン・キング、オーク。

 ボス=オーク・キング

 ドロップ=マジック・バッグ、ウエストポーチ(8㎥)

    ⋮

    ⋮

    ⋮

 ★第12階層

 アイアン・リザード、シルバー・リザード、ミスリル・リザード、アース・ドラゴン。

 ラスボス=キマイラ。

 ドロップ=青の魔術師の服(DEF+50%、HP回復(1/5秒))


 である。


 最深部のラスボスに、「キマイラ」としたのは、なんとなく強そうでラスボスっぽかったからだ。

 こうして、全12階層のダンジョンは、完成した!

 そして最後に、このダンジョンに奥底に封印したのは、「青の魔法使いの服」だった。

 もう1週間も経っていた。

 風呂入りてー! くっさ!我ながら臭い!

 この時、ついでに「浄化魔法クリーン」を開発し覚えた!



「あはは・・・疲れたね」

 ヘトヘトの晴蘭。


「1週間もかかったな」

 座り込んで言う海音。


「でも、やり切った!!」

 ガッツポーズの千春。


「ふぅ~~~ん(汗)」

 結局、イソギンチャクを却下されて、しょんぼりする虹音。


「みんな、お疲れ様!」

 労うリオティー。


「あ~楽しかった! 本当は、こうなるはずだったんだよね?」

 満足気なセラティー。


「「「「・・・・・・」」」」

 そんなセラティーを見て、無言で笑顔で頷くみんな。


「さあ! なんとか一つだけじゃが封印のできたの! ネチコイ領へ行って、完成パーティーでもするかえ?」


「「「「やったぁ━━━!」」」」



 こうして、ダンジョンは完成した。

 なんとなく、ダンジョンを作ったと考えると、なんとも悪役になった気分だが、本物のモンスターを生み出すわけではないので、良しとしよう!

 

 その後、海音と千春と虹音は、セラティーから拳大の魔晶石を1つずつ貰った。

 そして晴蘭は、ダンジョン・コアとなる1番大きな魔晶石を最深部に残し、あとの残った魔晶石は、自分のマジック・バッグに仕舞った。


 また、ダンジョンの名前は、誰かがきっと付けてくれるだろう。

 なので、あえて名前は付けなかった。



「良くやったな、みんな! じゃが、封印できたのは、まだ一つだけじゃ! 先はまだまだ長いぞ? みんな気を引き締めるんじゃぞ!」


「「「「はぁ━━━い!」」」」



 こうして俺達は、ネチコイ領へと向かった。





思わぬ事に妖精を持つ事になった晴蘭。

勝手な行いで、また状況が変わる?

今後この先、晴蘭にとって、思いがけず持つ事になった妖精セラティーは、正規の妖精ではなかった。

その意味とは・・・・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ