第26話 「可哀想な妖精」
まだ完成していないダンジョンを見付けた晴蘭達。
そのダンジョンに、晴蘭の作った「魔法使いの服セット」を封印しようと考えたのだが・・・・・・
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
••✼••街道外れの森林••✼••
「ここは・・・」
「マンドラゴラの森?」
「似てるね?」
「ふぅむ・・・・」
俺達は今、トスター領とネチコイ領を繋ぐ街道沿いにある、名前すら無い森林に居る。
強いて名前を付けて言えば、「トスターとネチコイをつなぐ街道沿いの森林」だな。
本当に名前が無いんだから、仕方ない。
海音の言う、マンドラゴラの森とは、マンドラゴラが採れたから、晴蘭達が勝手にそう呼んでいるだけである。
この森は、誰も気にしない、名前すら無い、誰にも注目されない森林なため、封印を施すダンジョンを造るには打って付けって理由らしい。
しかも、自然発生する妖精は居ないとされていたのに、良子が1体だけ妖精を見付けたのだと言う。
なぜ、良子はソレを知る事ができたのか?
それは、良子にも妖精がいるからである。
妖精は精霊に限りなく近い存在。
妖精だって、全にして個、個にして全!
妖精だって、他の妖精と繋がっている!
妖精に、他の妖精の居場所を認識できるのは当然なのだ。
だから、妖精を見付ける事は簡単な事なのだ。
「間違いないんかえ?」
「うん! 間違いないわ! それに、もう既にダンジョンが12階層まで出来ちゃってるみたい!」
「ほお?」
「でも、もう100年くらい放ったらかしみたいね! モンスターも居ないみたいだし!」
「なんじゃとお?!」
「「「「 ?!・・・ 」」」」
今、良子と話してる妖精は、良子の妖精「リオティー」という。
今まで、どこに居たんだ?
そして良子の魔女名は、「リオリオリョウコ」というらしい。
魔女名だって! すんげー!
俺も魔女名ほしー!
って、魔法使いだから魔女名は無いのか。
ザーンネン!
それより、リオティーによると、森林の奥深くに、妖精の反応ともう一つ、まだ生成途中のダンジョンがあると言う。
ただ、モンスターが1体も居ないと言うのだ。
モンスターの居ないダンジョン?
そんなのあんの?
もしかして、途中で作成を放棄した?
「良子さん!」
「なんじゃセーラよ?」
「そのダンジョンって、モンスターが居ないって事は、途中で作るのをやめたってことですか?」
「「「作るのをやめた?」」」
「ああ、そうじゃなあ・・・」
以前にも、良子から聞いた事があった。
ダンジョンは、妖精と妖精の主人となる魔法使いが共同で作るものらしい。
なんの為にダンジョンを作るのかと言うと、今回晴蘭が作ったような、「諸刃の剣」となり得る物を封印するために作るのだそうだ。
聖剣なんかも、ソレだと言う。
例えるなら、「彼の有名な鍛冶屋が作った剣が、あまりにも規格外で、とても世に出せない物と判断され、封印する事なった」とか。
または、「勇者が魔王を倒した剣」だとか。
はたまた、「世界を滅ぼしかねない竜王が現れたときまで使わない『賢者の石』」だとか、そんな場合だそうだ。
今回、晴蘭達が作った規格外の「魔法使いの服セット」も、ソレにあたる。
あとは、自然発生したダンジョンだそうだ。
自然発生したダンジョンは、主人を亡くした妖精が、元主人の持ち物を隠すために、ダンジョンを造り封印するのだとか。
そんな場合は、最終的に妖精はダンジョン・コアとなり、ダンジョンと隠した物を守るのだそうだ。
なんだか切ない話しだな。
主人を亡くし1人となった後も、主人の残した物を守るために、自らダンジョンを造り、そして最後は自我を無くしてダンジョン・コアとなってまでも主人の遺品を守り続けて、いつかは誰かに討たれるのだから。
「そうなのか リオティーよ?」
「うん! そんな感じね! 本当なら普通のモンスター・ダンジョンになっていたはずよ!」
「「「「 はず? 」」」」
「ほな、なんでモンスターが、いっこも居らへんの?」
海音が聞く。
「どうなんじゃ、リオティーよ?」
「たぶん、これからモンスターを生み出すつもり・・・だったんじゃないかしら?」
「これからって・・・」
「これから生み出すってことあるんですか?」
千春が聞く。
「いんや、普通・・・いや、普通かどうかは解らんが、だいたい新しい階層ができたなら、その都度モンスターも生まれる・・・とは思うんじゃが」
「そうなの! 普通は、新しい階層ができたなら、モンスターも生み出すものなの! じゃないと、もし造ってる途中で見付かったら、簡単に最深部までハンターに来られちゃうからね!」
「「「「なるほど・・・・・・」」」」
「ハンター」
妖精から見ると「冒険者」は、「ハンター」という解釈になるようだ
うぅむ・・・確かに。
魔物を狩る者なんだから、ハンターに違いないよね。
立場によって、見方が違うんだな。
例えば、勇者から見れば魔族は「悪しき者」扱いだが、魔族から見れば勇者は、魔族を片っ端しから殺す「殺人鬼」だよな。
などと、考えいた。
その後も、良子と妖精リオティーの話を聞いていた。
すると今度は、そのダンジョンを妖精と一緒に作ったという男性魔法使いが居るはずだと言うのだ。
男性魔法使いが居た? 今は居ないんだ?
どういう事だろう?
ダンジョンって、「ダンジョン・コア」となる妖精が1人で作るんじゃないの?
なんて考えていた。
すると・・・
「ふむ なるほどの 製作者が居たんじゃな?」
「そう! きっと、何かを封印するつもりだったんじゃないかしら?」
「「「・・・・・・」」」
「製作者? 封印?」
考え込む晴蘭。
おそらく、「製作者」とは、ダンジョンを設計というか、形作った男性魔法使いのことなのだろう。
ところが・・・
「でもね! その魔法使い、今は居ないんだって! もう100年くらい帰って来ないんだって! でも、あの娘ずっと待ってるんだって!」
「うむ そうか・・・わかった」
「100年? 帰って来ないって? ほなもう、ダンジョンが要らなくなったってこと?」
晴蘭が聞く。
「うむ そのようじゃな はぁーこりゃまた難儀なもんじゃな」
「え? なんでですか?」
海音が聞く。
「そりゃあなあ? 100年も製作者が居なくなると言う事は、実質そのダンジョンは放棄されたも同然じゃ」
「「「「放棄?!」」」」
「そのダンジョンを作るための妖精そのものも、放棄したと考えられるんじゃ」
「「「ええっ?!」」」
「ちょっ、なんで?!」
虹音が聞く。
「さあな? 何があったのかは解らん じゃが、そのダンジョンはもう枯れかけているようじゃ 妖精の力が弱々しいからな」
「枯れかけて・・・」
「良子さん! ダンジョンが枯れると、どうなるんですか?」
千春が聞く。
「うむ・・・このままじゃと、ダンジョンと妖精は消えるんじゃ」
「「「「ダンジョンと妖精が消える?!」」」」
なんと!
このままだと、ダンジョンと妖精が消えると言う。
消える?! なんで?! 製作者が居なくなると、消えちゃうの?
妖精が居るのに?
良子によると、妖精とは無限に近い寿命を持ちながら、すごく寂しがり屋さんなのだそう。
主人を持つ妖精は、妖精を孵化させた主人と死別すし、1人で居る年月が長くなると、その孤独の寂しさから自我が崩壊し、また魔晶石に戻ってしまうのだとか。
また、ダンジョンの管理のために孵化された妖精は、愛情を与えられないで孵化されたため自我を持たず、主人の命令に忠実な下僕にすぎないのだとか。
なんだよそれ・・・
主人と死別、または、長い年月を放置されると魔晶石に戻り、ただのモンスター製造マシーン(ダンジョン・コア)と化してしまうものらしい。
だが稀に、モンスターを生み出す事を覚えなかった妖精の場合は、ダンジョンを作る事しかできないと言う。
また、妖精を孵化させた主人が途中でダンジョンを放棄した場合、妖精はダンジョンから離れられず、ダンジョンが朽ち果てるまで居座らなければならないとか。
なんと、いくら自我が無いとはいえ可哀想な・・・・・・
「なんなよそれ? 妖精が可哀想やん!」
晴蘭が言う。
「ホンマにじょ!」
海音が言う。
「そういう心無い魔法使いも居るって事なんじゃよ」
「「「「・・・・・・」」」」
重い・・・・
なんて、重い話だ。
とにかく俺達は、その放置されたダンジョンへ向かった。
そこは、森林の奥の奥。
長年人が入った形跡も無ければ、獣道すらも無い。
「ここよ!」
「うぬ?」
「え? どこ?」
晴蘭はダンジョンの入口らしきものを探したが、どこにも見当たらなかった。
「あ! セーラちゃん、そこ!」
虹音が指を差して言う。
「え? あ!」
虹音が差す場所には、小高い斜面にポツンと不自然な岩があった。
もうコケだらけで、長く放置されていた事を物語る。
きっと、ダンジョンの入口の目印なのだろう。
「うん! 間違いないわね!」
「そうか なら、開けるぞえ?」
「「「「はい・・・」」」」
ゴトッ!・・・パラパラパラパラ・・・
トスン・・・・・・
良子は、浮遊魔法で岩を浮かせ、すぐ横へそっと置いた。
すると、地下へと続く階段が見えた!
確かに、ダンジョンのようだ。
すると、リオティーが近付いて来る者が居ると言う。
「誰か来るわ!」
「ぬっ?!」
「「「「 !!・・・ 」」」」
「え?・・・・・・」
それは、妖精だった。
でもその妖精は、自我が無いのか、死んだ魚のような目をしていた。
破棄されたダンジョンから出てきた妖精には、生気が見られなかった。
とそらく自我が無いものと思われる。
それでも、何も無いダンジョンを100年以上も1人で守り続けた妖精さんが可哀想で、なんとかしてあげないのだが・・・・・・




