第13話 「仲間とお友達」
女の子になって初の登校は、なんとか無事に済んだのだが・・・・・・
新しくお友達ができたと思いきや、こんな事になるなんて。
晴蘭に、また新しくお友達ができたのだが、何か思ってたのと違うのだった。
文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。
••✼••学校からの帰り道••✼••
俺は、なんとか女の子として学校へ通う1日目をクリアした。
いや、クリアしたとは言い難いかも?
クラスの奴らと話すのは千春だけだったし、他の奴らとは避けてしまったし、明日はちゃんと皆と向き合おうとは思うものの、なんだかやっぱり怖い・・・
千春は、たまたま、ああいう性格だし、魔法使いだったから、俺が元は男の白鳥 大晴だとバレても問題は無かったが、他の奴らとは上手くできるかは不安だ。
みし、クラスの皆に知られたら、皆なんて言うかな・・・
「気持ち悪い」って言うかな?
「信じられへん」って言うかな?
「友達やない」って言うかな?
いかんいかん・・・
考えれば考えるほどに、悪い方へ悪い方へと考え込んでしまう。
あーもーやめやめ!
あまり悪い方へ考えすぎて、望まない未来せ向かってしまうのは嫌だ。
最悪な事になっても、俺には魔法使い仲間がいる。
仲間が居れば、なんとかなるわな。
そう思い、ふと横を見れば海音が居る。
などと考えれながら歩いていると、いつの間にか家の前にまで来ていた。
「ほな、まな明日な」
「おお! また明日」
俺の家の門前まで来た海音は、そう言って自宅へと戻って行った。
同じ境遇の仲間が居るというのは、心強いものだ。
それでも完全に不安なんて拭い切れるものではないが、俺には家族も仲間も居る。誰も居ない何も知らない世界に、たった1人残された訳では無い。
学校にだって、千春に、真奈美に、鬼和田という強力な仲間も増えた。
確かもう1人魔法使いが居るとか聞いたな。
保健の先生の片桐 良子先生だっけか。
今日は会わなかったが、またいつか会える日が来るだろう。
きっと俺達の助けになってくれるはずだ。
そう思うと、少し気が楽になった。
俺は、女の子になる前と同じように学校から帰ると、玄関の戸を開けて、無事に戻った挨拶をする。
••✼••晴蘭自宅••✼••
ガラガラガラガラ・・・
「ただいまー!」
「おかえりー!」
炊事場から顔を出す母親楓。
「うん」
ガラガラガラガラ・・・ピシャン!
玄関の引取を背にして閉める。
母親と、そして今は親父も、俺が無事に戻って来た事を喜び挨拶をしてくれる。
こんな、何時もと何も変わらない毎日が続く事を願い、心から安らげる我が家で、ホッと安心できる事を、家、家族に、感謝する気持ちを持ち、また明日も無事にここへ戻って来れる事を願って、ホッとする晴蘭。
夏休みが始まる前は、もっと刺激のある日々を夢見たはずなのに、こうやって特に何も変わらず、何も起きずに無事に帰って来れるだけで、こんなにも喜びを感じるなんて思わなかった。
いや・・・めちゃ大きな出来事があったではないか?
めっちゃ変わったし!!
変わり過ぎたし!!
俺、女の子になってるし!
ってか、魔法使いだし!!
あまりにも変わり過ぎて、今までの思い出こそが、まるで実感が無くて霞んでぞ?!
でもなぜか、以前の自分には戻りたいなんて、コレっぽっちも思わなかったな。
確かに今の俺の境遇ってば、これからどうなるか解らないし、いきなり女の子になって、生き方も変わってしまって、解らない事にだらけだけど、でも楽しみもできた。
決して前途を悲観したりしない。
ゲーム感覚で、難しいクエストをクリアして行く感じで、やってくか!
などと考えていたら・・・
「妄想タイムは終わった?」
いつの間にか目の前に立つ母親。
「へ?・・・あ、おお、うん」
「ふふっ 帰って来るなり、玄関で立ちんぼうして、なんか考え込んでしもたみたいやからチョット心配になったけど、今日1日、なんとかなったみたいやね?」
「うん んまーなんとかな!」
「それは、良かった」
「おう」
家族の顔を見ると、ホッとするもんだ。
俺は、部屋に荷物を置いて、制服を脱ぐと部屋着に着替え、洗面所で顔と手を洗い、うがいをした。
親父はまだ帰ってないようだ。
なんでも、和歌山市と大阪の境の山の上に出来たニュータウンに新しくできた、県内最大級だとかなんとかのショッピングモールに、親父の経営する魔導具専門店ができたのだが、そこが今の親父の新しい職場だ。
聞くところによると、魔管保省に加盟していようが、なかろうが、魔法薬類なら、「ローポーション」よりも更に効果の低いもの、つまりは、「目立った回復効果があると認められないもの、大して金にならないもの」なら、所持、使用、販売はできるらしい。言い方を変えると、国も魔管保省も、見て見ぬふりをするわけだ。
また、魔導具類でも、「玩具」としてなら作成販売がてきるんだそうだ。
魔管保省も、ノラを完全に見捨てるつもりなどはなく、あまり利益の望めない物に対しては、目を瞑ってくれるようだ。
早い話が、魔法薬類など目立った効果効能のある物を販売して、医療業界や製薬業界や健康食品業界に喧嘩を売ったり、また、魔導具類なども、玩具メーカーなどに喧嘩を売るなような物を作り販売するなよって事だな。
要は、面倒を起こすなって訳だ。
十分に「目の上のたんこぶ」の様な気がするが・・・
まあ、魔法薬や魔導具なんて、大量生産なんてできないんだから、心配なさんなって。
俺はできるけどな! やらないけど。面倒臭い!
とはいえ、親父が何を作って売ってるのかは知らないがな。
たぶん、この間見た、「登録した効果音が鳴るだけのピコピコハンマー」とか、あの程度の物だろう。
それよか、父親によると、俺達は優秀な魔法使いらしい。
着替え玉や、空間拡張魔法鞄なんて作れる魔法使いなんて、そうそう居ないと言う。
親父が言うには、各国の魔管保省たる機関に所属のエリートと呼ばれる魔法使い達でさえ、普通のポーションを作れる者は、国に数人程度だとか。
ここ日本では、たったの1人らしい。もちろん、魔管保省所属の奴だけどね。
もしかしたら、ノラの魔法使い達を探せば、もっとすごい奴が居るかも知れないがな。
俺には負けるだろうけど!
魔管保省所属とはいえ、名前も性別や年齢さえも非公開らしいが。
だがソイツらは、保持魔力が少なく、魔晶石や魔石を使用して魔法を発動するらしいから、「本物の魔法使いとは言えない」らしい。
つまり、「魔術師」なわけだ。
だから、寿命も普通の人と変わらないとか。
それに比べたら、普通に魔導具を作れる魔法使いの俺達って、凄くない?
ほほー! じゃあ俺って凄いってこと?
そりゃあ、下手に大っぴらに知られちゃダメだわな。
魔管保省に取り込まれて、魔法薬や魔導具の製造マシーンされてしまう。
ま、目立たなきゃ良い訳だ。目立たなきゃね。
それは、まあ置いといて。
夕食を済ませ、風呂に入ったとき気付いた。
風呂場の浴室内に、一見湯沸かし器みたいなのが付いていたのは少し前から気付いていたが、親父に聞くと、風呂場でシャワーが今日からもう使えるのだとか。
どう言う仕組みかは知らないが、とにかく夢だった!
おおー! 憧れのシャワーだー!
ひゃっほー! いえーい!
これでもう、浴槽のお湯を使いすぎて怒られずに済むぞ!
なんて喜んでお風呂してたら、長すぎると、母親に怒られた。
それと、そのうち便所も水洗に変わるそうだ。
ぃよおぅーし! 我が家でも、憧れの近代快適ライフの始まりだ!
••✼••晴蘭自室••✼••
できれば、俺の部屋にエアコン付けて欲しいな。
冬には、コタツが欲しい。
自分で作れって?
「火事になっても、知らんぞ?」
って言ったら、冬までに作ってくれると父親が約束してくれた。
ほいほい! やるじゃーん!
「なかなかやるわね、お父様?」
って言ったら、
「気色悪いって」
って言われた。
ひどっ!!
帰って来たら、息子が娘に変わってた!
いきなり女の子らしくされても違和感バリバリって?
そりゃあアンタが悪いんですぜ旦那?
滅多に帰って来ないのがね!
そのとき親父は、母親に頭小突かれてた。ぷぷっ
んで、俺は自室の部屋に戻り、宿題をして、さあゲームだあ!
って思ったけど、明日も学校だも思うと、やる気が失せた。
でも今は、スマホでもすんごいゲームがあるらしい。
クラスの男子達がワイワイ言ってたのを聞いた。
でも俺は、スマホもいいけど、パソコンが欲しいな。
夏休み前に、クラスの男子達が言ってた、PC版の「怪物ハンター」ってヤツやってみたいな。
スマホよりも大画面で、迫力あるのをやってみたい。
母親のお下がりの、ゲーム専用に使ってるブラウン管テレビと、カートリッジタイプの、ファミリア・コンピューターとか、スーパーファミリア・コンピューターとか、PCユニットとかじゃあ、そろそろ飽きるのも時間の問題だ。
ってか、こんな化石ゲームなんてやってるの、今どき俺ぐらいじゃね?
仕方ない・・・寝よ。
ふて寝だ。
あ、宿題・・・もう1つ忘れた。
「アニマル・ストラップ」の使用感想文を書け、なーんて言われてたっけ?
めんどいわ! 口頭でよくね?
気が付いたら、朝だった。
黒猫のナルが俺を起こしに来る。
ナルを抱きしめると、ナルはグルルングルルンと喉を鳴らしてる。
可愛いヤツだ♡
流石は、アニマル・アビリティ!
女の子になった俺でも、ご主人様がちゃんと判るようだ。
きっと、人の様に、視覚的感覚で誰だと認識しているのではなく、動物的な感覚?
視覚、嗅覚、触覚などを感知して、俺が誰なのかを理解しているみたいだ。
・・・・・・うん?
視覚に嗅覚に触覚?
そうか!!
これを魔導具に適応できれば!
今まである既存の魔導具なんかよりも、もっと優れた魔導具が作れるのかも?
なんか、ワクワクすっぞ!
俺はこの日から、視覚、嗅覚、触覚、さらに味覚も加えて、何か魔導具が作れないか研究する事にした。
そして、次の朝。
••✼••海音宅玄関前••✼••
「よ! おはよう!」
「おう! おはよう!」
「ほな、行こか」
「おうよ!」
俺と海音は、学校へ向かった。
そして、学校の教室にて。
••✼••「1-B教室」••✼••
「セーラちゃん、おはよう!」
「ああ、おはよう!」
真っ先に、千春が俺に挨拶をしてくれる。
すると、すぐ後から・・・
「セーラちゃん、おはようー!」
「あ、おはよう」
今、俺に挨拶したのは、狩野 美千代、通称、ミチョだ。
俺は、夏休み前でも、話す女子と言えば千春だけだったが、そう言えば狩野とは今日初めて話す事になる。
きっと千春と仲が良かったからか、俺にも話しかけてくれたのだろう。
「狩野・・・やったっけ?」
「うーわ、ひどお! うる覚え?」
「え? ちごたか(違ったか)?」
「そーやけどぉ! 私も名前で呼んでよ?」
「え? 名前で? えーと、名前なんやったっけ?」
「美千代! チャルには、『ミチョ』って呼ばれてるわ」
「ほぉ・・・ミチョね んじゃこれからは、ミチョって呼ばせてもらうわよ?」
「うん!」
「・・・」
なに? そんなに嬉しいの?
ミチョって呼ばれることが?
それとも、俺と話すことが?
いやいや、それはないか。
なんて考えてたら、次から次へと、他の女子達が俺に話しかけてきた。
「私もー!」
「ふぇ?!」
「ちょっと待って! 私も!」
「うえっ?!」
「はいはいはい! 私もー!」
「うおっ?!」
「ふふふ セーラちゃん、大人気やなあ?」
「や、やめろよチャル!」
順番に、
福本 紗枝、通称サエ。
天野 幸子、通称サチ。
清水 麗華、通称レッカだ。
彼女らも、魔法使いなのだろうか?
俺は、千春に耳打ちして聞いてみた。
《なあ、この娘らも魔法使いなんか?》
《うぅん この娘らは、違うよ》
《!・・・そうか》
《うん・・・》
あれれ? 普通の人やったのね?
そりゃそうか。
魔法使いが、そう簡単にホイホイ出てきたら大変だ。
たとえ魔法使いだとしても、余程付き合いがなければ、お互いに秘密にするものだろうからな。
魔法使いだったとして、もしかしたら魔管保省所属だったりすると、俺達ノラ魔法使いは、目の上のたんこぶだ。
でも、千春とかも魔法使いだけど、いったいどんな家系なんだろうか?
俺の父親やサクラ婆ちゃんは、元々魔法の国から来たって聞いた。
魔女や魔法使いばかりが住む世界だな。
でも、全ての魔法使い達が、魔法の国から来た訳ではいないという。
なぜなら・・・
「女装剤」である。
でも、俺と海音が飲んだのは、特殊な女装剤であって、その名も「呪薬の女装剤」だ。
俺達が飲んだものが、この世に残る最後の1本だったと聞く。
でも、普通の女装剤は?
まだまだ、あるかも知れない。
そんな女装剤がホイホイと出てくるとは思えないが、きっと女装剤を飲んで魔法使いになった人だって居てもおかしくはないはず。
一応、千春には、俺と海音は女装剤を飲んで女の子になり、結果的に魔法使いに覚醒したって感じに話してあるが、千春の場合はソレではないと思う。
なら、やはり魔法使いの家系なのたろうか?
真奈美と鬼和田は?
確かこの学校には、もう1人魔法使いが居るらしいからな。
ちと、安易に聞けるものじゃないので、いつか千春にTPOさえ良ければ聞いてみよう。
とはいえ、なかなか魔法使い人口密度高くね?
「じゃあ、ミチョに、サエに、レッカやな? よろしく!」
「「「よろしくー!」」」
「うんうん! よろしく頼むでぇ~♡」
いきなり抱きしめる。
「あだだっ! 痛いって!」
「ああー! ずる〜い!」
「あああ━━━!」
「ちょっと、独り占めはアカンよ!」
「なーんよアンタら! セーラちゃんはねえ、私のモンもんなんやからな!」
「「「ええええ━━━!?」」」
「こらこら! いつから俺がお前のモンになったんや?」
「昨日から」
「はあ?!」
「「「ぶ━ぶ━━━!」」」
「はいはーい! じゅ・ん・ば・ん!」
「ちょっと、お前らも・・・あぐぅ」
なんか、順番に抱きしめられた。
ちと、対処に困るが、まあ被害は無いし、仲良くできるのなら、別にいっか。
正直、千春の他に仲の良い友達ができて嬉しいし。
なーんて思ってた時期が俺にもありました━━。
••✼••昼の休憩時間••✼••
「・・・なあ、まだすんの?」
「ええー私まだなんやけど?」
ミチョが輪ゴムを手に持ち言う。
「ここを、こーやって、こーやって」
サエが俺の髪を結ってる。
「ふんふん あ、そこはもっと強く縛らんとアカンよ!」
レッカがサエに指示する。
「いだだだだだだっ!! 痛いってぇ!」
「ふぅん、三つ編みにすると、届かんよーになるんかあ」
サエは俺の髪を三つ編みにして、あれこれと考えてくれてはいたが、理想な髪型にするには、俺の髪は少し長さが足りないらしい。
「じゃあ、次は私ね!」
レッカがそう言って、俺の髪を結い始める。
「はぁ・・・・・・」
「ふふん なかなか可愛いの撮れた♡」
スマホに俺の様々な髪型写真を納める千春。
「なあ、そろそろやめへん?」
「「「「だめ━━━!!」」」」
「んなん?!・・・・・・あーもー(汗)」
あぁあ・・・海音と会えずに昼休憩が終わってしまった。
海音とは、俺のイメージする魔導具開発の構想を相談したかったんだけどな。
なんか、撮影会みたいになってるし。
まさか、こんな目に遭うなんて・・・・
「できた!」
「「「可愛い~~~♡」」」
「もう好きにして!」
パシャ!パシャパシャパシャ!(写メの音)
新しくできた女友達は、千春にかなり汚染されていた奴らだった。。。
結局、昼休憩はめいいっぱい使われた。
トイレにしか行けなかった。
教室の前で、ウロウロしていた海音に申し訳ない・・・
でも、そんな海音も、同じクラスの女子達がどこかに連行しててったわ。
なかなか人気あるみたいじゃのお?
それはそうと、午後一発目は、体育だ。
男子は、教室で着替える奴らも居たので、何にも気にしなかったが、実は俺も男子の頃の着替えは教室派だったのだ。
そんな何時ものノリで、セーラー服を脱ぎかけて、千春に頭小突かれた。
コツン!
「あだっ! なんなよ?!」
「まさか、ストリップする気?」
「・・・あっ!(汗)」
ああ、そうか。女子は全員更衣室で着替えてるんだっけ?
・・・・・・はあっ?!
こっ、こ、ここここ更衣室ぅ?!
これはマズイ!
女子達の着替えシーンを見ることになるのか?!
ヤバくね?
ちと楽しみな気もあるけど、それ以上にめちや不安。
千春は、俺が女子達と一緒に着替えるのを、何とも思わないのだろうか?
「ほら、更衣室行くで!」
「ちょちょっ! 待って!!」
「なに? ほら、急いで! 鬼和田にまた怒られるん嫌やで!」
「怒られるって・・・」
ははぁ~~~ん・・・・・・
そう言えば、以前着替えが遅くなって、体育の授業にも遅れて、鬼和田に怒られてた女子達が居ったっけ。
ふんふん 確かに、その時千春も居たな。
そうか、貴女ですか。
それより、千春アンタは平気なんかえ?
「だから、ちょっと待ってくれって!」
「んもおー! なによ?」
「チャルお前、俺が女子更衣室で着替えんの、なんとも思わへんのんか?」
「なんとも思わへんって、なんよ?」
「あーもー! だから、俺は元男やぞ?」
「え? 知ってるけど、それがどーしたん?」
「へっ?!・・・・・・」
あれれれぇ? なーんでー?
千春の奴、元男の俺が一緒に女子更衣室で着替える事が平気なようだ。
え? なんで?
もし、俺が男で、千春が女から男に変身して、男子更衣室で一緒に着替えるって事になったら、流石にちと思うものがあるぞ?
なのに、なぜ?
「あああ━もお━━━! ほら!」
痺れを切らして、強く晴蘭の手を引く千春。
「うおっ?! ちょっと!」
転びそうになりながらも、千春に手を引かれて女子更衣室へ連行される晴蘭。
そして、女子更衣室にて。
••✼••「女子更衣室」••✼••
「・・・・・・」
更衣室の隅っこで固まる晴蘭。
ワイワイガヤガヤ・・・
「セーラちゃん! なにやってんの?」
何もしない晴蘭に声をかけるレッカ。
「ひゃあ?! あ、ああ、いや」
「あれれ? どーしたん?」
「あ! もしかして、アレ?」
なんとなく察したサエ。
「えっ?!・・・・・・あ、そー言えば」
そうだった。
俺ってば今、アレの真っ最中だった。
少し量は減ってはきているが、まだ完全に終わった気配は無い。
もう、痛みもほとんど無いのだが・・・
「んもおー! それやったら、そーと言えばええのにぃ!」
晴蘭のアレに気付く千春。
「え、えーと・・・すまん、」
「ほな、鬼和・・・下和田先生に、ゆって来てあげる!」
そう言って、先に体育館へ向かうミチョ。
タッタッタッ・・・・
「・・・・・・」
はぁ━━━なんか、気を使わせたな。
そうじょなあ。
確か女子はアレの時は体育休んでたよな。
女の子って、大変やな。
母親が言ってたが、俺はまだ生理が安定していないからまだいいが、今後安定してくると、出血の量も増えるだろうし、痛みも強くなる事も考えられるらしい。
母親の場合は特に生理痛が酷い人らしくて、お腹もそうだが、時には歩いて顔の肌や頭皮が揺れるだけでも、肌や頭皮が千切れそうに痛みがある事もあると言う。
ホルモンバランスの問題で、肌にも影響が出るのだとか。
なにそれ? 怖っ! そんなんなんの? お腹なのに顔や頭も痛いの?
うわぁ・・・女って大変やいて。
なんか痛いのは嫌だな。男に戻りたいなあ・・・
って、思った。もう戻れないけど。
とにかく、女子達も減ってきたので、俺は体育着に着替えた。
んで、体育館にて。
••✼••「体育館」••✼••
少し遅れてしまったが、鬼和田は怒らなかった。
「・・・そうか ほな、しゃーないか 体育は休んでもええぞ?」
気を使ってくれる鬼和田。
「うん でも、せっかく着替えたんやし」
「無理すんなって 顔に出てるぞ?」
「え?・・・」
いや、これはソレじゃない。
生理の事で悲観し過ぎて顔に出ただけやから。
顔が赤いのは、恥ずかしいからであって、別に今はそれほど痛くないから。
ってか、忘れてたら痛みさえ忘れてるから。
とは思うものの、ここは素直に体育は休むか。
今後の事もあるし。
もし、安定してきて、母親みたいに痛みが強かったら、それこそ大変だ。
市販薬の痛み止めと、魔法薬って、どっちが効くんかな?
確か、魔法薬の素材のハーブの中にも、痛み止め効果のあるやつ、あったよーな?
精霊に頼んで、痛み止め効果を強くしてもらえばいいわけだ。
今度、母親に聞いてみよ。
もし作れるんなら自分で作ったりしてもいいかも。
体育は、バレーボールだった。
楽しそうだった。いいなあ・・・
と、そんな時!
ボールが晴蘭に向かって飛んできた!
テーン!
「お?!」
テン! テン! テテン・・・コロコロ
「よいしょ!」
ボールを拾う晴蘭。
「セーラちゃーん! パス!」
手を挙げて合図をする千春。
「おー!」
晴蘭は、ボールを両手で持ち、うんと後ろへ振りかぶって~~~
「うりゃあ!」
ステ━━━ン!
「「「「?!・・・・・・」」」」
「あ!・・・」
テン! テン! テテン・・・コロコロコロ
「・・・・・・」
ボールは、真っ直ぐに飛ばずに、真下にテーン!と投げられ、ほとんど真上に跳ね上がり、何度も跳ねてから転がった。
「あ、あれ?・・・・・・あはっ」
頭をかいて、テヘペロの晴蘭。
「ぷぷぅ! きゃはははははは!」
爆笑する千春。
「「「「あははははははは!」」」」
「・・・・・・」
千春の爆笑が合図かのように、他の生徒達も、一斉に大爆笑!
みるみる顔が真っ赤っかーになる晴蘭。
「わっ、笑うな━━━!!」
「「「「あははははははは!」」」」
「もう~ 一々可愛いセーラちゃん♡」
「・・・・・・くっ殺せ!」
「「「「ぎゃははははははは!」」」」
「セーラ、今度調子がええときは、なるべく前に投げれるように練習しよな!」
笑いながら言う鬼和田。
「うっさいわ! ばぁーか!」
「はっ! お前みたいに小まこい奴に言われても、いっこも腹立てへんわ!」
「じゃがぁーしわぁ! 泣かすぞー! 次の体育の日、覚悟せーよ!」
「おう! 楽しみにしてるぞ!」
「っふぅ━━━んだ!!」
「「「可愛い~~~♡」」」
「?!・・・・・・なんなんよもぉ(汗)」
顔を真っ赤っかにしながら、悔しさと恥ずかしさで、うるうると目に涙をいっぱいにして、吠える小っちゃな晴蘭は可愛かった。
なんか、思ってたのと違うけど、クラスのみんなとも、鬼和田とも、なんとなく仲良くできそうだと思った。
思ってたのと、違うけど・・・・・・
新しくできたお友達。
ミチョと、サエと、レッカ。
なんと彼女らは、かなり千春に汚染されていたされた奴らだった。
今後がとても不安になる晴蘭だった・・・。




