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女装剤  作者: 嬉々ゆう
10/91

第9話 「学校」

いよいよ学校へ行く、晴蘭と海音。

夏休みの休み癖が付きまくって、元の生活に戻るには一苦労?

それでも何とか心を振るい立てて、海音と2人で頑張るのですが、初っ端から失敗?

いきなり前途多難?

はいはいさてさて、この先どうなる事やら。

みたいな感じですかね。



文章力が無いので、もしかしたら読み辛い部分もあるかも知れません。また「紀州弁」を意識して書いたので見苦しい所もあるとは思いますがご了承ください。あえて主観「紀州弁」を設定しました。

 



「晴蘭ー! 起きなぁー! 朝やでぇー!」


「んん・・・はっ! もう朝か」



 嗚呼・・・とうとう今日が来てしまった。


 今日から、学校が始まるのだ。

 ゔゔゔ~~~だりぃ~~~

 夏休みの1日目に戻せる魔法ってないのか?

 そしたら、あの日に戻って蔵になんか入らなかったのに・・・


 なんて、過ぎてしまった事ばかり考えてた。


 えええええ━━?!

 ガッコが始まる━━━?!


 あー行きたくなーい! むーりーきょーひー!

 始業式?! 意義あり!

 夏休み終わり?! 却下します!

 すみません 聞き取れませんでしたー

 もう一度言ってください。。。


 めちゃ憂鬱。時計を見ると、まだ6時半。

 なのに、もう起きなきゃいけないのか。

 これから毎日この時間に起きる日が続くのかと思うと、嫌だー! 人間やめたーい! とばかり考えてた。人間やめてるけど? でも、男をやめるつもりは無かったけどな!


 夏休み中は、早く起きても8時回ってて、平気で2度寝して午後起きしたときもあったのに。

 嗚呼、あの頃は、ちあわちぇだったわ・・・


 スリープモードに入ります・・・

 ・・・・・・んがっ!

 って、いかんいかん!

 今日から2度寝はダメったらダメ!!


 ちと、グダグダになり過ぎたな。

 再起動します!


 ・・・・・・・・・・・・はっ!!

 やっばぁーい! また寝そうになった!

 ダメだ、ぜんっぜん、やるが気出ない!

 俺の、やる気スイッチどこ?!

 え? あの象さんが、やる気スイッチだったの? あらぁ~やだぁ~! じゃあ、私のやる気スイッチはもう無いじゃん! ここは誰?! 私はどこ?!

 アホな事ばかり考えてて、脳みそばーんあうとぉ! もう殆ど病気!!

 あーもー子供やめたーい! 早く大人になりたーい!

 んで、月曜だけ仕事をして、火曜から日曜まで休みたい!(普通そんな仕事はありません)


 晴蘭は、のそのそと起きて、布団を適当に畳んで部屋の隅っこへ寄せると、その上に枕を投げた。そして、ふと考えた。


 魔法使いなら、月曜だけ魔導具やら魔法薬やらを作って売って、後は日曜まで休みーって出来んじゃね?

 だって、魔導具も魔法薬も、めちゃ高額なはず。

 空間拡張収納魔法鞄(くうかんかくちょうしゅうのうまほうかばん)なんて、軽トラ1台分の収納機能があれば、国産高級スポーツカーが買えるくらいの額になる。それくらい魔法って特別なはず!

 だから、魔導具を一つ二つ売れば、後は遊んで暮らせるじゃん! と、親父に言った事があったが、いくら魔法があるとはいえ、現実はそんなに甘くないらしい。


 なんと! 魔法使い達を、管理?束縛?支配?隷属?する機関があるらしい。

 要するに、魔法使いの力を利用して、ガッポリ稼いじゃおぅ!って、危ない集団だ。


 国は、その存在の肯定も否定もせず。


 一般には公開されていない、知る人ぞ知る、「魔女魔法使まじょまほうつか管理保護法務省かんりほごほうむしょう」、通称「魔管保省(まかんぽしょう)」に加盟していない白鳥家と相良家の様な「野良のら魔法使まほうつかい」、通称「ノマ」は、魔法で目立つ行為をしても、魔管保省が魔法でもみ消す・・・なんて事にならないので、慎重にならなきゃいけないらしい。

 もし、ノマ達が何らかの理由で、魔管保省に人々への記憶の消去の以依頼をすると、おっそろしい額の請求が来ることも。

 それもまあ、魔管保省にとっては、ノマに魔管保省へ加盟させる口実と言うか、奴らのやり口らしいけどね。

 親父は何時も言っている。


「奴らに、強制的に加盟させられる大義名分を与えるな」


 ・・・と。

 何それヤダ怖い!


 魔管保省!? 何じゃそりゃ? 和漢方やったら知ってるけど、まかんぽしょー? 知らんわ! 本当に、そんなのあったのね・・・都市伝説だと思ってた。

 だから、一般の人達に魔法使いだと知られちゃいけないのね。


 でも何? 魔法使いは、魔法で無茶苦茶やってますから事後処理が大変ですわ!みたいに聞こえるんですけどぉ?

 俺らが何をした?! なーんもしてないっしょ?

 魔管保省こそ、奴隷みたいに魔女や魔法使い達をこき使って、魔導具や魔法薬を作らせて、法外な額で売り捌きボロ儲けして、金の力で世界を支配してやろー!って企んでるんじゃないの?


 何にしても、今じゃ魔管保省はSGEEEEE!権力持ってるから、怒らせたら何するか分からないのはマジみたいだ。

 薬漬けにされて、魔導具や魔法薬の製造マシーンにでもされたら、たまったもんじゃない!


 それにもし、魔法使いだとバレて魔管保省へ密告されたら、ソイツらは報酬を貰えるらしいから、率先して魔法使いを売る奴が居るらしい。

 怖いですねぇ~人間って恐ろしい。。、


 俺達の様な、野良の魔法使いは、魔管保省に加盟している魔法使い達から、野良の魔法使いで略して「ノマ」と呼ばれていて、救済援助も無いし、魔管保省が設定管理推奨している魔法使いとしての教育も受けられないし、専門の保険も加入できないとか。


 確かに、魔管保省に加盟すれば、素材使い放題!魔導具作り放題!魔法薬作り放題!INT上がりまくり!給料ガッポガッポ!みたいな、それなりに旨味もありげだが、精製したポーション類は必ず取り上げられるし、作成した魔導具も魔管保省に著作権があるため、「見た目や甘い言葉に騙されるな!」と親父に言われた。

 それに親父は、イギリスのマジカル・エンジニア・グループ(MEG)が後ろ盾にあるので、平気だと言っていたので、まあ最悪、魔管保省や国に見放されても大丈夫だろう。生きていける自信はある。


 いやはやそれでも、魔導具を考え作るのって、ホント楽しい!!

 学校なんか辞めて、魔導具のエンジニアになるのも悪くないな。(まだ義務教育です)

 って、親父の仕事じゃん!!


 おおーっと! 無駄に回想が長かったな!



パン! パン!


「うう~~~お! 痛ってぇ~」



 俺は、眠気覚ましに頬を思い切り叩いた。

 朝から妙な事を考えていたから、気持ちを現実に戻すのに、のつこつした。親父の仕事に憧れるなんて、今までなかったのに、やっぱり血は争えないか?


 それはさておき、サッサと朝の用意を済ませてしまおう。

 俺は、便所でナニしてから、ナニを取り替えて、歯を磨き顔を洗い、朝食を済ませたら、庭の花の水やりをして、部屋へ戻った。

 そして学校への最終確認。今日は始業式だけど、授業が2科あるから、それの用意と、防犯ブザーと、数枚のナプキンと、もしもの時の替えのパンツと、小さな臭い消しのスプレーと・・・

 なんだか、アレの心配ばかりしてるな。。。


 そして、壁に掛けられている、学生服に目をやる。



「コレを着るんかぇ・・・」



 そう。ソレは、セーラー服だった。



 晴蘭の通う中学校の女子生徒の制服は、お馴染みの夏用の白いセーラー服ではあるが、何の工夫もない、紺色の襟と袖口に2本の白いラインが入った、んで赤いスカーフの、オーソドックスなタイプだ。

 確かスカーフの色は学年別で、1年が赤で、2年が青で、3年が自由だったかな?

 なんでそんな事をするのか分からないが、昔からの伝統らしい。

 晴蘭は、もう既に何度も虹音に着せられたので、着るぶんには慣れてはいたけど、やっぱりコスプレしている気分が拭えない、


 男子生徒の制服も、カッターシャツがゴワゴワして不快だったな。冬は、学ランの肩のゴツイ縫い目の所が痛いのと、襟が顎に当たって痛かったなぁ・・・なんて思い出していた。って、首短かくないか?

 なにせ、学生服って、学ランもセーラー服も、どっちも着るのは好きじゃない晴蘭だった。


 さあ、そんな事考えててもしゃーない!


 俺は自分に言い聞かせた!



「セーラー服は元々男の服やったんや! セーラー服とは、本来は軍服!! 船のセールを操る男! 水兵さんの服! セーラーマンの服!! パポイ ザ セーラーマン♪ ポッポー!」



 でも、女の子用に改良されてるもんなぁコレ・・・・


 サクラ婆ちゃんの使ってた3面鏡の前でスカーフを結び整え、他に変な所は無いかと、左右に向きを変えたり、後ろ向きになって振り返ってみたりしてみる。すると・・・



「あははっ! そんなんジィーと見やんでも、晴蘭はセーラー服似合ってて可愛いで!」


「んなっ?! へ、変な事ゆーなよ!!」


「きゃははははっ! 何顔真っ赤にして! 照れてんの?」


「ばっ!・・・」


「ホンマに可愛いぞ? でもこんなに可愛いと、我が娘ながら世に出すのは心配になるなぁ?」


「いやい、や、やめろってぇ!!」


バタバタバタバタッ!


「「あはははははは!」」


「っくぅ~~~」



 確かに我ながら不覚にも可愛いと思ってしまった。


 魔法薬で髪を肘くらいまで伸ばし、ポニーテールに後ろで括って、青い大きめのリボンを結んだ今の俺は、正直俺自身でも可愛いと思ってしまった。

 母親と父親は、ツインテールにしろと言うので、試しに母親に結んでもらったが、流石に子供っぽく見えたので断固拒否した。セーラー服でなきゃ、小学生にしか見えなかったから。


 ブツブツ言いながら食台の前に胡座(あぐら)で座り、朝食を食べる。

 何時も通りの、ご飯と、海苔の佃煮と、豆腐とワカメとなめ茸の味噌汁と、冷たい麦茶。納豆はあまり好きじゃないのでパス! でも嫌いではない。



「ほぉら、足! 女の子が胡座(あぐら)かかない!」


「ああん? 家に()るときは、別にかまへんやろ?」


「んもぉ~・・・ほら、肘を付かない!」



 背が低くなった分、茶碗を持つ腕を上げなきゃいけない。力も弱くなったし、肘をテーブルにくっ付けた方が楽なんだ。



「一々、うっさいなぁ~ この方が楽なんじゃよ」


「せやったら、正座したらええやんか」


「・・・」



 確かにそうだ。正座した方が、座高が高くはなる。ごもっともです。はい。

 俺は言われた通り、正座をする。



「あーもーはいはい!」


「そーゆー事は積み重ねやで! ちゃんとせんと、何時まで経っても、女の子らしくなれやんで?」


「はあっ?! 女の子やからって、何で女の子らしくせにゃならんのじゃ?!」


「女の子として自覚が足りへんから、そんなんやろう?」


「女の子としの自覚はあるよ! 象さん、もう居てへんし? おかんも解るやろ! 昔は持ってたんやから」


「ぶほっ!! げほっ! げふんげふん!」

 吹き出す父親。


きゅ━━━ん・・・・・・ピ━━━!!

 楓怒気ゲージが一気にカンスト!


バチィ━━━ン! バチャ!

「きゃん!!」



 思い切り左頬をひっぱたかれた!

 晴蘭は99ポイントのダメージを受けた!

 追加効果で、持ってたお味噌汁をこぼしてしまった。



「いっだぁ~い! すんすん」


「いい加減にしなぁっっっ!」


「・・・ごみんちゃ 今のは言いすぎた」

 しょんぼりする晴蘭。


「はぁ・・・」

 ため息を付きながらテーブルを拭く母親。


「昔の楓ソックリやな?」


「なんて?」

 布巾を投げる姿勢の母親。


「はっ!! いえ・・・なんでもないです」

 思わず両腕でガードする父親。


「・・・」

 キョロキョロと両親の顔を見る晴蘭。



 相変わらずウチは、かかぁ天下だ。



パン!


「ごっつぉ~さん!」


「はい! どーいたしまして!」



 手を合わせ、食後の感謝の言葉。

 そして、そのまんま立ち去ろうとすると・・・



「晴蘭! 食べ終わったら、ちゃんと片付けて!」


「ん━━」


カチャカチャ・・・



 使い終わった食器を、炊事場(キッチン)の流しの水の張った大きな器に浸ける。

 我が家の炊事場は、昔は土間だったのを改装してるから、履物は要らないけど、一々1段上がったり降りたりするので面倒なんだ。



「ほな、行ってこよっかな!」


「うん! 普通にしとったら、何も起こらへんから!」


「普通って何なよ? 夏休み前までは男やって、今日から女の子としてガッコに通うのに これのどこが普通なんよ?」


「ぷぁっはっはっ! 確かにそーやな! 元々男やったもんな! 今は女の子やから、確かに、普通ちゃうわな!」


「直登さん!!」


「はい すんません」


「・・・・・・」



 何時もと相変わらずの2人だが、何処か嬉しそうだった。母親なんて、怒りながらも少し口角上がってるし。昨夜、なにがあったのかなぁ~~~なんて、野暮な詮索はやめよう。せっかく良い雰囲気なのに、下手に余計な嵐フラグは立てることもない。


 そして、空間拡張(くうかんかくちょう)キューブ収納型魔法(しゅうのうがたまほう)を施した学生鞄を持ち、玄関へ向かう。玄関で通学用の革靴を履き、爪先をコンコンと土間で蹴ると、すぐ横に俺が男だった頃の靴を見て想う。


 こんな大きかったんや?


 今更ながら、身体が小さくなった事を自覚するのだった。思わず、下唇を噛んだ。見るとまた何か想うところがありそで、下駄箱へ押し込んだ。そして、玄関の戸の前で振り向き・・・



「行ってきまーす!」



 と、家ん中へ向かって声を掛けた。



「「行ってらっしゃーい!」」



 と、両親からの「無事を祈り送り出す言葉」に・・・



「は━━い!」



 と、元気よく返事をした。

 とはいえ、「空元気」だが。

 こんな時は、無理にでも意識して、テンション上げりゃあ、何とかなるもんだ。


 さあ、今日から新しい学校生活だ。

 もう、迷わない。成せば成る! 案ずるより産むが易し! 女の子としての登校初日は、母親が付いて行こうかと言ったが、断った。

 もう中学だ。親に連れられなきゃ行けない訳じゃない。それに俺には強力な仲間が居る。


 海音だ。


 奴も俺と一緒に女の子に変身したのだ。だから俺1人でじゃない。そう思えるだけで、どれだけ救われるか。

 俺は玄関を出て門を抜けたら、隣の海音の家に向かう。そして、玄関前で奴を呼ぶ。



「おはよぉ━━! 義斗・・・海音ー!」



 おっと、いけねぇ! 今の奴の名前は、海音みおとだった。こうやって、以前の様に朝に奴を迎えに行くと、条件反射なのか、男だった頃の名前を呼んでしまった。



ガチャ・・・パタン!



「おいおい! 今の俺の名前をもう忘れたんかえ?」


「え?・・・」


「・・・何なよ?」



 もう何度も見るので今更だが、思わず見惚れてしまった。。。

 セーラー服を着、金髪碧眼で、魔法薬で髪を二の腕まで伸ばし、紺色のプリーツスカートから伸びるスラッと長い足。今の海音は、姉の虹音(ななと)に似て、身長は132センチと低いものの、嘘偽りなく、超絶に可愛いと思った。



「何なよ! 何フリーズしてんのな?! そんなに俺のこの格好が変か? ハッキリ言うてくれ!」


「いや、ちゃうちゃう! そんな怒んなよ 何か、めっさ似合ってて・・・」


「はぁん? また何か拾い食いでもしたんか? お世辞ゆっても何も出んぞ?」


「拾い食いなんか、せぇーへんわ!! お世辞ちゃうって」


「なんでもええけど、そのほっぺ、どした?」


「ちとな、おかんに叩かれた ちょーっと、象さん ってゆーただけで・・・」


「ほら、アホ言うてやんと、行くぞ!」


「お、おう」



 俺はこの時思った。コイツはきっと、学校ではチヤホヤされるだろうなと。元男の親友の海音は、元男の俺とはいえ、妬け羨むほどの可愛さだった。そんな海音の横に立つ俺は、返って目立たないだろうと、ちょっと気が楽になった、

 そうだ。俺は海音の「引き立て役」になれば良いのだ、と。

 なんだか海音が、俺が目立ちたくないがための「囮」みたいで心苦しいが、俺も必死なんだ許してくれ。


 俺達の中学は、区画整理されて他の中学校と統合されたので、歩いて1時間ほどかかる。俺達はまだ近い方らしい。遠い奴らは自転車やバスを利用するらしいからな。俺達はまだ恵まれてる方だ。

 昔は商店街だったであろうシャッター街を通り、県道に抜けると、そこそこ大きな交差点に出る。その交差点の信号を待つよりも、もっと先に行った歩道橋を渡る方が早いので、俺達は歩道橋を登り始めた。

 すると階段を登りきりかけたその時、突然ビュオー!と吹いた突風で、俺達のスカートが捲り上がるが、まったく気にしない。だって俺は元男だから、「こんな元男の俺のパンツなんて見たい奴なんて居ないだろう」と思ってたから。

 

 などと思っているのは晴蘭と海音だけで、元男だなんて言えども、晴蘭と海音を知らない人達にとっては、晴蘭と海音は、誰も疑わない紛れもなく本物の女の子だ。そう、本物の女の子に違いは無いが、女の子としての自覚が足りないだけなのだ。


 だが次の瞬間、「おおっ!」とどよめく声が後ろから聞こえた。

 何だ?と思って歩道橋の階段を登りきって声のした方を振り返ると、道路脇のバス停に集まる野郎共が俺達の方を見上げていた。

 特に気にせずに、また前を向き歩道橋を渡りきって、反対側の階段を降りた。

 そしてふと、先程の道路の反対側に目をやると、さっきの野郎共が俺達を、まん丸い目で凝視していた。



「何なアイツら?」


「さあ? 知ってる奴らか?」


「知らん知らん! ってか、俺ら何か変なかな?」


「そーじゃないやろ? 男やったら誰でも、女の子に視線を向けるもんやろ」


「・・・そうかもな ってか、女の子って自覚あるんや?」


「当たり前やろがぇ! いい加減そろそろ・・・・な?」


「!・・・まあ・・・な」



 確かにそうだと思う。俺もかつては、可愛い女の子を見るとそうだったし。目が合うと、慌てて目を逸らしたものだ。

 それに、もういい加減に、女の子として自覚しなければな。と思った。


 でも奴らは、まだ俺達を、しつこいくらいに目で追っている。何だ? 俺、本当にどこも変ではないのか? セーラー服の着方が変か? それとも歩き方が変なのか? 元男だとバレる訳ないよな? 何だか変な風に自意識過剰になってくる。



「おい、あんまり見んな! 気があるんかと誤解されてもつまらんぞ?」


「うん? そんな事あんのか?」


「そーやな 姉ちゃんが言うとったけど、見られてると思って見返したら、好かれてるって誤解されて、その日一日中追い掛け回されたらしーぞ?」


「げげっ?! 何じゃそりゃ!! そんなん有り得へんやろ!」


「ま、姉ちゃんやからな! 俺がゆーのもなんやけど、あー見えてなかなかの美人やし」


「ははっ そーやな お前が言うのも何か変やな?」


「あははははははっ!」


「きゃははははははっ!」


「「「「・・・・・・」」」」


 なぜか、俺達が学校に着くまで、人に見られてた感があった。男性だけでなく、女性からも見られてたような気がする。それに、何だか俺達の事を噂してるような気がする。

 ちと、気色悪かったが、そんなはずは無いと、心の中で自分に言い聞かせた。


 だが、それは当たっていたのだった。



「ほぉ~ 金髪碧眼か 小っちゃいけど可愛いな!」


「隣りのポニーテールの小っちゃな娘も、なかなか可愛いな?」


「そうやな! この辺ってゆーたら、あの中学か?」


「ふむ あの中学に、あんな可愛い娘らが居ったんやな?」


「なー?」



 などと、話し合う野郎共も居た。

 それに気付かない晴蘭と海音は、何も知らずに学校へ向かう。


 そして、やっと学校の門前に着いたが、何だか見られてる?

 平常心を装って、玄関へ入るが、やっぱり見られてる?!


 上履きに履き替え、膝を曲げ片足を後ろに上げた姿勢で固まり、晴蘭と海音を凝視している男子生徒。


 何度も振り返っては、廊下を歩く女子達。


 指を差して、話している男子達。


 ヒソヒソと話し合う数人の生徒達。


 

 ・・・晴蘭と海音は、急に怖くなってきた。



「しゃーない、行くぞ!」


「おお・・・」


「俺、A組やな 晴蘭、B組やんな?」


「うん? おお 組は変わらんからな」



 それは変わっていない。忘れるわけがない。

 だが、1つ忘れていた物があった。



「あっ!・・・あああ~~~」


「どした、海音?」


「うん えっと、上履きわ?」


「・・・・・・あ!」


「「しまったぁ━━━!!」」


 ザワザワ・・・・・・



 そうなのだ。上履きの事をスッカリ忘れてた!

 女の子に変身したんだから、サイズが合わないのと、男子は爪先と靴底が青で、女子は爪先と靴底が赤になってたシューズやったっけ? サイズ以前の問題で、男女色がぜんぜんちゃうやん!! ヤバいやん!! どないすんの?!


 すると、次第に生徒達が晴蘭と海音の周囲に集まって来る。



「ねえ、もしかして転校生?」


「え? お、おお」


「うん」


「何組?」


「俺・・・」


「おれ?」


「「!!・・・・・・」」



 いか━━━ん!! あかん!いかん!あかん!いかん!! 俺のバカ━━━!!

 初っ端から、やってしもぉたぁ!!

 あやや、いやいや、まだ望みはある!

 負けるな元超イケメン紀州男子(自称)!!

 何時もの何事にも乗り越えてきた臨機応変さを見せてみろ!



「え、あ、ぅわ、ぅわ、私は、A組?」


「ぅわぅ、私は、び、B?」


「あははっ! 何で疑問形? まだ決まってへんの? 聞いて来ちゃろか?」


「「いやいやいや! 決まってますぅ!」」


「「「あははははは!」」」


「「・・・・・・」」



 何か知らんけど、一応掴みはOK!

 誰も俺達が元イケメン男子生徒の、「白鳥(しらとり) 大晴(たいせい)と、相良(さがら) 義斗(よしと)」だとは、気付いてない!

 2人とも、俺達が転校生だと信じているようだ。



「アンタ、Bクラスなんやったら、私のクラスなんや!」


「えっ?・・・」



 あ! そー言えば! 何か目線が違ったから、知らない女子かと思ったら、コイツは、小学生の頃から俺が背が低いからと、からかって来た女子達の1人の飯田(いいだ) 千春(ちはる)じゃないか?!

 おぅのおぅ!! おーまいがー!

 選りにも選って、何でコイツがぁー!



「え? アンタなんで知ってんの?」

 千春の隣に立つ女子が千春に聞く。


「うん! さっき職員室で聞いたもん! ウチのクラスの白鳥君って男子が転校して、代わりに女の子が転入してくるって」


「「?!・・・」」


「ふぅ~ん」


ドキドキドキドキ・・・



 こっええええ~~~! めっちゃ怖ぇ~~~! チビりそうだ! 早く上履きの問題を解決して、教室に行きたい!


 などど思っていたら、女子生徒達が俺達を職員室へ連れてってくれて、上履きの件を何とかしてくれた。

 担任の先生に掛け合ってくれたのだ。

 元々学校には、何らかの理由で、上履きが必要になる事もあるだろうと、「来客用」と書かれた靴が用意されているらしい。あとスリッパもあるが、どちらか選べと言われたので、スリッパにした。

 何となく、誰かが履いた靴を履くのは嫌な気がした。とはいえ、スリッパも同じだけどな。

 大きい靴よりも、子供用のスリッパの方が履きやすかった。

 何より靴は、サイズが大きすぎた。




••✼••職員室••✼••



 そして、職員室にて。



「じゃあ、あなた達は、先に教室へ行きなさい 始業式の時間までには、体育館へ行きなさいね」


「「はい」」


「あ、教室に居る人達にも、体育館へ行くように伝えてな!」


「「「はぁーい!」」」



 今話しているのは、俺の担任の、古谷(ふるや) 真奈美(まなみ)だ。もちろん、男の頃からの担任なので、俺は覚えているが、女の子になってから再会すると、担任が以前より大きく見えるので、なんとも妙な気分だ。



「「じゃーねー」」


「「ありがとう」」


「「「いえいえ~~~」」」



 俺達を職員室へ連れてってくれた生徒達は、先に教室へ向かった。

 お世話になったので、お礼を言ったら、ニッコリ笑って手を振って職員室を出て行った。感じの良い娘達だ。千春も、いい感じじゃないか? ってか、俺が元大晴だと知らないからかな?



「あなたが好湾(すわん) 晴蘭(せいら)さんね?」


「あ、はい!」


「私はB組の担任の、古谷ふるや 真奈美まなみです。 よろしくね!」


「あ、はい よろしくです・・・」


「そして、あなたが、A組の愛羅(あいら) 海音(みおと)さんね?」


「はい!」



 そうだった。確か、海音も苗字を変えたんだっけ? 学校に通ってる間の仮の苗字だけど。俺が好湾で、海音が愛羅。なんとも直ぐには慣れそうにないなぁ~~

 でも、慣れなきゃ正体がバレそうだ。気を引き締めなきゃ! 

 でも担任は女の子になった俺を知らないはずなのに、なぜか直ぐに俺が好湾 晴蘭(すわんせいら)と言い当てた。

 あ、そうか。海音は金髪碧眼だもんな。見りゃ分かるか。

 と、その時は思ってた。



「愛羅さんはA組やから、A組の先生に挨拶しないとね」


「はい」


「A組の担任の先生は、ほらあそこに座ってて手を挙げてる人、下和田(しもわだ) 浩介(こうすけ)先生ね!」


「あ、はい じゃ、じゃあ俺。わ、私、挨拶に行ってきます」


「うん! そうして!」


「はい」


「・・・」



 海音が、担任の下和田先生の所へ向かったの見ていたら、俺の担任の古谷先生が、俺の肩を引っ張ってこう言った。



「エラい、可愛くなったね?」


「へっ?!・・・・・・」



 怖っ!! なんですとぉ~~~?!

 うっわぁ~~~なんか嫌っ!

 担任の目! 絶対俺が元男子生徒の「白鳥(しらとり) 大晴(たいせい)」だと知ってるだろ!

 真奈美の奴! あ、そうそう! 真奈美は自分から「真奈美ちゃん先生」と呼べとか言ってたっけ? んで俺は、「真奈美」と呼び捨てだったな。しかし、ニヨニヨした眼差しがムカつくんですけどぉ!!

 ぜぇ━━━ったい! おかんが手を回したな!!


 俺と海音は挨拶を終えて職員室を出ようとしたとき、俺の担任と、海音の担任のニヨニヨした目が頭から離れない。何なんだ?


 すると、俺の担任の古谷先生が言う。



「好湾さんと、愛羅さんには、この学校について説明があるから、この後、2人して談話室に行きなさい」


「え? 始業式は?」


「うん 始業式も大事やけどね。これから貴女達2人は、転入生として色々と、教頭先生から教えてもらいなさい」


「そう・・・ですか」


「うん! じゃあ、また後で教室でね」


「はい・・・」



 こうして、俺達は職員室を出た。



「「失礼します」」


スス━━━トン!


「「っっっはぁ~・・・・・・」」



 職員室の戸を閉めて、俺達は顔を見合せた。

 2人揃って、大きなため息を付いた。


 その後、担任から言われたように、海音と2人で談話室に行って、教頭先生からこの学校について説明を受けた。

 そんな事聞かなくても、知ってるのに。


 そして、教頭先生からの説明が終わったら、もう始業式が終わったようで、生徒達のガヤガヤとした声が聞こえた。



「うわぁ・・・」


「なんか、ビビるな?」


「ははは・・・うん」



 いよいよ、本日のクライマックスだ!

 でも、俺達の気待ちは、暗いマックスだ。


 俺はB組の教室へ行き、海音はA組の教室へ向かった。 

 



なんと!

先生は、晴蘭と海音の正体を知っている?

これも、母親楓の手回しか?

不安と緊張と、バレるのでは?と恐怖の中、晴蘭と海音の運命は如何に?

みたいな。


今どきの学校行事ってものが分からないので、間違いなどがあれば、ご指摘よろしくお願いします。( ̄▽ ̄;)ゞ

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