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女装剤  作者: 嬉々ゆう
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女装剤 プロローグ

「パラレルワールド」というワードをよく耳にします。「魔法の存在しない世界」の他に、よく似た世界でありながら「魔法の存在する世界」がある。私達の世界にも、「魔法」という概念は存在する。それはつまり、この世界の他にも必ず「魔法の存在する世界」があるはずだと思います。そんな「魔法の存在する世界」の物語を、想像、空想、妄想、してみました。


前作の「女装剤」は、執筆途中で身体を壊して入院してしまって、そのまま掲載していたサイトも消滅。

今回の「女装剤」は、私が20年ほど前に書いた前作の「女装剤」とは、また別のお話しとして新たに書き始めました。


むかしむかし、この世界には「魔法」という力が普通に存在した時代があった。


 その時代を「魔法時代」と云う。


「魔法」とは、人には到底成しえないことを行う事ができる不思議な力であり、その源を、「魔力」と、されている。


 かつては、「魔法、魔力」という概念はなく、「神の力」や、「奇跡の力」や、「精霊の力」や、「ナマ」などと呼ばれていた。


 それらの不思議な力は、「神や精霊」にしか存在しないものと考えられていたが、近年では普通の人にも、魔法を発動できる程ではないものの、微量ながら魔力は存在する事が判った。


 だが、そんな不思議な力は人々から恐れられ、「悪魔の力」、つまり「魔力」と呼ばれ、その魔力を操り人の理解できないことを行う術を「魔法」と呼ばれ、魔法を使う者達を「魔法使い」と呼ばれ始めた。


「精霊」もまた、人には認識できない存在であり、魔法使い達にとっても、不思議な存在ではあるのだが、魔法使い達は、精霊の力を借りて魔法を発動する術を手に入れていた。ただ、その力や術は、何時の頃から存在していたのかは定かではない。


 また精霊とは、「自然の霊」ではないかとされていたが、人々には見る事ができないし、感じる事もできない。人は見えないもの感じないものを恐れるものだ。また、信じなかった。


 魔法使い=術者は、そんな精霊と意思疎通するために、何をどうして欲しいのかを具体的に伝える「詠唱」をし、魔法を発動させる合言葉、いわゆる「呪文」を唱えて、魔法使いの微量な魔力に含まれる感情、記憶、知識を対価に精霊から膨大な魔力を借り、その魔力を利用して魔法を発動するので「魔法使い」と呼ばれた。


 でも中には、詠唱や合言葉を必要としなく、いわゆる「無詠唱」で魔法を発動させられる者達が現れた。そんな彼らには、元々魔法を発動できるほどの膨大な「魔力」があったのだ。


 何時の頃からか、自分の魔力で魔法を発動させる事ができる者達の事を「魔女」と呼び、精霊から魔力を借りて魔法を発動させる者達の事を「魔法使い」と呼び分けていた。


 つまり魔女は、男も女も「魔女」、魔法使いは、男も女も「魔法使い」と呼ばれる。

 あえて呼び分けるなら、魔女なら「女性魔女、男性魔女」と呼び分け、魔法使いなら「女性魔法使い、男性魔法使い」と呼び分けたのだ。


 そしてまた魔法使い達は、得意とする能力別に差別化を行った。


 「回復魔法、復元魔法、特殊魔法」を得意とする者達を、「魔導師」と呼び、「魔法薬、魔導具、付与魔法」などの開発や制作の「儀式魔法」を得意とする者達を、「魔術師」と呼んだ。

 そして、それら全てを行える者達を、「魔法使い」と呼んだのだ。


 また、魔法をいっさい使わない人々の事を、「人」と呼んでいた。彼らにとっては、「魔法は害悪なもの」とされ、魔女や魔法使い達を恐れ嫌っていた。


 そして、この世界では、魔法を使わない「人」の数が圧倒的に多かった。そのせいか、人から見て魔女や魔法使い達は別種族とされ、「人族こそ神に選ばれし至高の種族」という思想が強く人々に植え付けられ、魔女や魔法使い達を排除しようとする風潮が起こり始めた。


 そんな時代、魔女や魔法使い達は、人を害するつもりはなくても、魔法を使った事件事故などが稀に発生し、人々だけでなく、他の動物達や草木や自然も巻き添いを受けたのだ。


 魔法の力の被害に遭った人々は、ますます魔法を不吉なものと嫌うようになり、魔法を使う者達は、「悪魔の力に魅了された者達」とレッテルを貼られ、ここで初めて「魔法使い=悪魔の力を使う者」、「魔女=悪魔に魂を売った者」、「魔力=悪魔の力」という偏見がうまれた。


 それからというもの、魔女や魔法使い達は、人々から排除される事が多くなっていった。


 このままでは、魔女や魔法使い達の居場所がなくなる。いつか魔女や魔法使いと、人々との間に争いが起こるかも知れない。それをどうにか食い止めたい、回避したいと考えた精霊は、魔女や魔法使い達に「しばり」を与えた。


「縛り」とは、魔女や魔法使い、または魔法に携わる者達が、魔法の力で「精霊の倫理」に反する行いをすると、発動された魔法を、精霊の力によって中和されて、魔法が失敗に終わるというものだ。そしてそれらを、「ペナルティ」として数えられた。


 そして、精霊の倫理に反する行為「ペナルティ」を3回以上行うと、その者達は「魔女、魔法使いとして相応しくない」と精霊に判断されて、「魔女や魔法使いとしての魔力も記憶も消されてしまう」という罰を与えられた。


 こうして、魔法を使う者達や、魔法に携わる者達は、何人たりとも「魔法で悪い事はできない」ようになったのだった。


 だが例外として、精霊は、魔女や魔法使いも身を守るために、彼らに対して危害を加えようとする者に対しては、命に別状のない程度の攻撃や、反撃や、防御などの魔法が使えるとした。


 その事により、魔女や魔法使いと、人々との争いは何とか回避でき、「魔法は害悪なもの」という思想も薄らいでいった。


 そんな中、「精霊の倫理反する行為」に触れる事なく作り出されたものがあった。



 それは、「女装剤」だった。



 あるところに、将来結婚を約束した2人の魔女達、女性魔女と男性魔女のカップルがいた。


 2人は、若い頃からとても仲が良く、誰もが2人は結婚するものだと思っていたが、ある日から彼氏である男性魔女は、彼女である女性魔女のもとへ帰って来なくなった。


 彼女は、彼氏の浮気を疑い、彼氏の後を追う。その時彼女は、彼氏が他の女性と浮気をしている様子を見付けてしまったのだった。

 彼氏が彼女のもとを離れる前、こんな事を言っていた。



「魔法使いの寿命は、人よりも遥かに長い」



 その頃の人の寿命は50〜70年。


 魔女の寿命は2000〜3000年。


 魔法使いの寿命は800〜1000年。



 これは、魔力により肉体が常に健康体で居られる事と、普通の人よりも長く若々しく居られる事と、怪我や病気をしても、魔法や魔法薬ですぐに治せるからだと考えられる。

 だが、あまりにも寿命が長いため、魔女や魔法使い達の中には、人生に飽きて自らの生命を断つ者も現れた。

 また、わざと精霊の倫理に反する行為をし、人になり残り短くなった生命を全うした。


 魔女や魔法使い達は長生きだからと言って、決して「不死身」ではない。



「何百年も、ひとりの女だけを愛せない」



 それが、彼氏の言い分だった。


 彼女は、何年も悲しみ泣き伏せた。

 そして彼氏が自分のもとへ戻ってくるようにと、彼氏のために「戒めの魔法薬」を作った。


 その魔法薬を飲むと、魔法薬の制作者とは別の女性に対して性的に興奮すると、「女性に変身する」というものだった。


 それは、「戒めの魔法薬」なので、「人を害するもの」ではないと精霊に判断され、彼女には縛りは発生しなかった。


 だが、そんな彼女の企みを知った彼氏は、二度と彼女のもとへは帰らなくなってしまったのだった。


 そして、「戒めの魔法薬」だけが、後の世に残った。


 やがてその「戒めの魔法薬」は、後の魔女や魔法使い達に改良に改良を施され、今では「どんな怪我も、どんな病気も瞬時に完治し、副作用で男性が女性に変身する魔法薬」として、その名も「女装剤」と呼ばれ世に知らしめる事となった。



 時は流れて、およそ2000年後。



 新興騎士団によって、「魔法は害悪なもの」という思想がまた復活され、「魔女狩り」が始まった。


 魔女や魔法使い達は、自分達の力では手に負えなくなり、魔女や魔法使い達だけの異世界「魔女界」を創り、ほとんどの魔女や魔法使い達は魔女界へ行ってしまった。

 やがて「魔女界」を創った魔女は、「魔女界」の「創造主」として、「聖魔女」となった。


 そのため、「魔女狩り」によって殺された魔女や魔法使い達は1人も居らず、殺されたのは、ごく普通の人々だった。



「我らに歯向かう者は皆、魔女だとして殺してしまえ!」


「魔女や魔法使いに対して、少しでも擁護する発言や行いをする者達は皆、魔女だとして殺してしまえ!」


「あの爺さん婆さんは酷く醜く役に立たないから、魔女だとして殺してしまえ!」


「アイツは生意気で目障りだから、魔女だとして殺してしまえ!」


「あの領主は何もかもうまくいっていて、王様にも気に入られていてムカつく! 魔女の一族だとして、一族全員殺して財産を奪ってしまえ!」



 それはそれは酷いものだった。


 やがて、「こんな事を続けていたら、どっちが悪なのかわからない。もう魔女狩りなんてやめよう」という事になり、今では全く魔女狩りは行われていないし、「魔女狩りこそが罪悪」とされた。


 また魔女狩りのときに、魔女や魔法使い達の残した魔導具、魔導書、魔法薬、そして魔法薬のレシピなどは全て廃棄され、例外なく女装剤のレシピも失われた。



 そして、世界から魔法が消えた。



 更に時は流れて、数百年。


 魔女、魔法使い、魔法というものは、「夢物語、ファンタジー、非現実的なもの」とされ、世は「化学万能」と言われていた。


 だが、魔女や魔法使いのように、非現実的な存在とされるものに憧れる人々が増え始めた。「ファンタジー」と呼ばれる夢物語で、魔女、魔法使い、魔法が度々登場し、人々は皆夢に見て憧れた。


 「化学万能」と言われる世の中で、それでもどうにもならない事柄や、乗り越えられない苦しみや悲しみや理不尽さから解放されたいがために、「現実逃避」から生まれた「憧れ」だったのかも知れない。


 だが人々は、そんな「不可思議」な力や現象に憧れ夢を見るのを諦めなかった。


 その甲斐あって、昔はこの世界にも、本物の「魔法」という、「人には到底成し得ない事を行う不思議な力」と、そしてその力を操る、「魔女や魔法使い」と呼ばれる存在が、かつては、現実のものとして確かに存在したのだと、今も語り継がれていることを人々は知る。僅かながら、洞窟奥深くや、砂漠、森林、海底、古墳などの遺跡から、魔女や魔法使い達の遺品が発見されたのだ。


 そんな中、忘れ去られた筈の「女装剤」の存在もどこからか耳に聞くようになる。やがて、「女装剤」は現実ものとして、「知る人ぞ知る存在」として世に知らしめられた。


 そして、今現在の現存する女装剤は、世界中探しても、100を切ると云われている。


 そんな女装剤の幾つかが、世界中を人から人へ流れ流され、ここ日本の、とある小さな田舎町の古民家の蔵の中にあった。


 そして、その古民家に住む家族には、1人の少年がいた。


 その少年の家系は、「古の魔女」の末裔だった。その少年は、古の戒めの薬「女装剤」により、「魔法使い」へと覚醒することになる。


 またそれは、「宿命」でもあった。



 この物語は、その少年が「女装剤」により魔法使いへと覚醒し生まれ変わり、苦戦し翻弄されながらも楽しみを見付けて、強く生きていくお話し。

これは私の、想像、空想、妄想する物語です。

人は様々な世界を、想像、空想、妄想、します。本来は全ての人の意識は繋がっていて一つであり、世界もまた、様々な異世界と干渉し合い、繋がっているのだそうです。なので、漫画やアニメ、小説の様なフィクションの世界も、必ず何処かに存在する世界だとのことです。だから人にはそんな世界を想い描く事が出来るのだそうです。従って顔も知らない見ず知らずの人が、自分と似た世界や事柄を、想像、空想、妄想、するのは当然なのだとか。人の思想も皆と繋がっているのだから。でも人は「個人」という概念があまりに強くて、他人と繋がっていることに気付きもしないし、信じられないのだとか。私は信じたい。

こうして小説を書くことによって、「自分の、想像、空想、妄想、する世界」の、「創造主」になるのも楽しいですね。

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