大きく成長しました
ゴールデンウィークのある日、突然家に佳菜がやってきた。
元々今日は宿題を写させてもらう約束をしていて、ファミレスにでも行くのかと思っていたが、朝、というよりも生活習慣が乱れたせいで正確には昼なのだが、とにかく目が覚めれば佳菜が居た。
最近は朝起きれば佳菜がいる事にもなれたもので、特に困惑したりはしない。
しかし、この時ばかりは違う。
「おぉ、佳菜ちゃん、大きくなったんだねぇ」
家に居た俺の親父はそう言って佳菜に笑みを向ける。
いつも佳菜が家に起こしに来るときには親父は家を出ているので、佳菜と再会するのは久しぶりなのだろう。
佳菜は一瞬誰かと戸惑っていた様子だが、俺の親父だとすぐに気が付いて挨拶をする。
「おじゃまします。お久しぶりです」
「いらっしゃい。どうしたの?」
「陽と宿題をしに来ました」
なんてことない会話、しかし俺は冷汗が止まらなかった。
寝起きの頭もすっかり覚めて、いつもは優秀な脳みそも今日は柔軟さが無いように感じる。
「行こう」
俺は急いで荷物をカバンに詰め込み、佳菜の手を引く。
「え⁉行くって……陽の部屋でもいいのに……」
「いいから」
俺は強引に佳菜を連れ出した。
佳菜は戸惑っている様子だが、特に抵抗することも無く俺についてくる。
久しぶりに人前でこんなにも取り乱したことを後悔しつつも、冷静になる事はできなかった。
近くのファミレスに行くまで、これといった会話は無かった。
というのも、佳菜は話題を振ってきたが、その内容はすべて親父の事ばかり。
俺があからさまに分かりやすく話をすぐに終わられたりそらすものだから、あまり居心地がいいとは言えなかった。
おれもこのままではまずいなと思い、自分の機嫌を直すように努め、ファミレスの料金は奢ろうと誓った。
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