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自殺しようとしたら同級生に助けられた  作者: ゆめ
自殺しようとしたら、また同級生に助けられた
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優しい嘘をついた

「「え⁉二人って付き合ってないの⁉」」


 お昼過ぎという事もあって、自分たち以外は無人のファミレス店内に、何人かの驚きの声が響く。


 明日からゴールデンウィークに差し掛かる今日、授業は昼までの早帰りで、部活は職員会議のため部活停止。

 普段は放課後部活で遊べない運動部の奴らと遊ぶいい機会という事もあり、男女を混ぜた何人かでファミレスに来ていた。


 一応はゴールデンウィーク明けに行われる中間テストの対策勉強会という事で集まったのだが、ノートを広げたはいいものの、仲のいい友達が集まったのだから、おしゃべりの方に花が咲いてしまう。


 みんなが驚いているのは、俺と佳菜が付き合っていないという事だ。


「え?じゃあ付き合ってないのに普段からあんなにイチャイチャしてるの?」


 女子のクラスメイトが食い気味に尋ねてくる。


「そりゃまあ!幼馴染ですから!」

「二年間疎遠だったけどな」

「こら」


 佳菜はその大きな胸を張って自慢げに語るが、決して俺たちが付き合っているように見られるほど仲が良い理由は、単に幼馴染だからではないだろう。


 幼馴染はそんなに仲のいい関係ではない。


 二年間疎遠だったにもかかわらず、特に気にすることなく距離を詰めてきた佳菜が特殊なんだ。


「ふーん。じゃあ今一宮フリーなんだ……」


 すると、男子がまじまじと佳菜を見ながらそう呟く。

 佳菜は可愛い。なので狙っている男子は少なくない。


 この男はおふざけで言っているので、佳菜はそれに乗っかるようににやにや笑う。


「そーだよー。今私フリーだよ?早く自分のものにしとかないと誰かに取られちゃうかもねぇ?」

「どうぞどうぞー。彼女でも妻でもセフレでも何でもどうぞー」

「ちょっ!最後のは酷くない⁉」

「いいよ、俺は別に他に彼女作る予定だし」


 俺がそう答えると、今度はテニス部の小柄な女がにやにやと笑って俺に話しかけてくる。


「陽君辛辣だねぇ、私なんてどうですかぁ?」

「んや、俺は乳のデカい女が好きなんでね」

「何それひっどーい‼。てかそれって結局一宮さんの事じゃん!」


 運動部の奴らはノリがよく、いじりも面白く受け止めてもらえるから話していてとても楽しい。


 こうして話しているうちは、本当に、普通の男子高校生でいられる気がした。


「ねぇ、律くんって今まで彼氏いたの?」


 会話の流れで、そのテニス部の女子が俺に尋ねてきた。


 俺が一瞬考え、こう答える。


「いたよ。一人ね」








「……どんな子だったの?」


 夕方の帰り道、佳菜と二人並んで歩いていると、突然そう言い出した。


 記憶を探って、何のことを言っているのを考える。


「俺の元カノの事?」

「うん。あたし知らなかった。ひかりに彼女がいたなんて」

「そりゃそうだろ、向こうの中学でのことだったんだから」

「そうだけど……そうだけど……」


 先ほどまでの楽しい雰囲気とは違い、二人きりの時の佳菜は少し大人しい。


 それは決して不貞腐れているからではなく、もともと佳菜は大人しい性格だ。

 いわゆる陽キャの俺のそばにいるから会話をすることが多いだけで、普段があんなにバカ騒ぎをすることは無い。


 それは俺も同じで、佳菜と二人きりの時は静かに過ごすことが多い。


「……はぁ、冗談だよ。今まで彼女なんていたことないよ。見え張ったんだ」


 俺がそう言うと、佳菜は疑うように俺の表情を伺う。


「ほんと?」

「本当だよ」

「嘘ついてない?幼馴染だから嘘なんてすぐ分かるんだからね?」

「幼馴染って便利だなぁ」


 そう言う佳菜の言葉は、心なしか少し弾んでいるように思えた。


「………私も彼氏居たことないから」

「聞いてねぇよ」


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