ピアス
「ひーくん、痛い?」
陽菜は俺の手首を撫で、そう尋ねた。
その細い指が、俺の手首の切り傷を撫でるのがどうにもこそばゆくて落ち着いた。
「痛かったよ」
俺は短くそう答えた。
すると陽菜は俺の瞳の奥を見て問いかけた。
「私の体は傷付けなくていいの?」
「付けないよ。陽菜の体は綺麗だから」
「それ、すごく辛い」
なんだよ、それ。
陽菜の体は俺のものだけれども、それで陽菜が自分が傷つけて貰えないことに辛い気持ちを抱くことの訳が分からない。
「ひーくんに、傷つけて欲しい」
「嫌だ」
「私もひーくんとお揃いにしたい」
「痛いの嫌いなくせに」
「ひーくんに、私を刻みたい」
俺も、陽菜に俺を刻みたい。
「ねぇ、ひーくん。私を大切にしないで」
その言葉が、耳にこびり付いて離れない。
「ったぁ………」
お揃いのピアスが、お互いの耳たぶを貫いた。
耳が弱くて、そこをいじめられるのが好きな陽菜の耳に、穴が開いてしまった。
「あは、あはは。……これで、お揃いだね」
それから、行為の後のお互いの体にはたくさんの自分の物の証の花びらが付けられていた。
ピアスは開けない方がよいよ……うわぁ




