勘違い
「おはよー」
「あぁ、ほんとに来たんだね」
朝、一人暮らしに興奮して夜更かしをしてしまい、眠たい目をこすりながらインターホンに出ると佳菜が居た。
佳菜の家からこの家は微妙に距離があるため、これからは目覚まし機能付き幼馴染は利用できないかと思っていたが、変わらずに起こしに来た。
「わざわざ起こしに来なくてもいいんだぞ。めんどいだろ」
用意をする間、佳菜を待たせるわけにはいかないので、家に招き入れながら佳菜に言う。
すると、佳菜は分かりやすくいじけて、ツンツンという。
「別に無理なんてしてないし。それに、せっかく付き合ってるんだから、一緒に登校したいじゃん……?」
「…………ん?」
あれ、いまこいつなんて言った?
付き合ってる?俺と佳菜が?なんで?
俺が困っているのを不思議そうに見ている佳菜に、恐る恐る尋ねる。
「なぁ、俺と佳菜って付き合ってるの?」
「………え?」
「あ、やべ」
この後、佳菜は大泣きしました。
「だって、だって、だって!二カ月も一緒にいたんだよ⁉それどころか一緒のベッドで寝てたし⁉」
「いや、それはいろいろあったからだろ……」
「じゃあ陽は付き合ってない人ともそんなことするの⁉」
「まぁ、するんじゃない?」
「うぅ……最低!ばかっ!ひどいよ……あたしはひかりの匂い嗅がないと寝れない身体になっちゃったのに……」
「怖えよ」
どうやら、佳菜は俺と付き合っていると勘違いしていたらしい。
その理由は、あの二カ月の間、言ってしまえば同棲していたわけで。告白はしていないけれど、恋人関係にあると思っていたらしい。
「残念ながら、俺と佳菜は付き合ってません!てか告白なら断っただろ?」
「うぅ……そうだけど……そうだけどぉ……!」
佳菜は相当ショックだったようで、かなり不貞腐れている。
まぁ、俺自身、そうそう冷たい事を言っている自覚はあるのだが。
「でも、付き合ってないからって一緒にいちゃいけない事なんて無いだろう?」
「うん……」
何とか慰めようと試みるが、佳菜はうつむいたままだ。
このままでは学校に遅刻してしまう。これ以上遅刻してしまえば、留年の危険があるのだ。
「はぁ、分かったよ。じゃあ、幼馴染以上、恋人以下ってことで。それでいいだろ?」
「やだ!恋人が良いもん!」
「あぁ!もう!しつこいな!大体一緒に寝てただけで別にセックスしてないだろ!」
「っ!そ、そういうのはもっと大人になってからでいいんじゃないのかな……?」
「やだね!俺はセックスさせてくれる人じゃないと恋人にしません」
「うわぁぁぁん!ごめんなさい!エッチなことしていいからぁぁぁ!!!」
とまぁ、こんな感じで朝から騒ぐ頃には、すっかりと目が覚めていて、結局「幼馴染以上、恋人未満」という関係に落ちついた。
……そもそも幼馴染って恋人よりも下の関係なのだろうか?
これにて、第一章が完結です。
シリアスな展開が続く作品ですが、いつも読んでくださり、ありがとうございます。
だがしかし、シリアス展開はまだ終わりません……。
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