ありがとうを伝えたくて
俺は今までの事を全部……ではないけれど、というか、もっとも大切な存在について軽く触れる程度で、話したくらいだったが、まぁそれなりに長い時間話した。
その間、佳菜は俺を確かめるように手を握って、話を聞いていた。
話が終わって、佳菜は最後に、涙を流して、俺に言う。
「話してくれてありがとう。私もごめんね、いっぱい悪い事しちゃった」
「お互い様だよ。だって、幼馴染だろ」
「っ………うん」
佳菜は嬉しそうに、俺の手を握り締める。
こうして、俺と佳菜はもう一度、幼馴染に戻った。
次の日、目が覚めると、佳菜は俺に「おはよ」と言って、学校へ行った。
そしてその三日後、俺も学校に復学が認められた。
学校に登校した日には、それはそれはお祭り騒ぎで歓迎されて、復学パーティーが開かれた。
本当に久しぶりの二人の帰り道。
「佳菜、これ」
俺はカバンからとあるものを取り出し、佳菜に渡す。
「……なに、これ?」
「クリスマスプレゼント」
「………今二月だよ?」
そうだ。
佳菜が俺の部屋で引きこもっている間、いつのまにか世界はクリスマスが過ぎ、年が明けていた。
行事ごとも、何も祝わなかった。
本当に、失われた二カ月だった。
「だよなぁ……。じゃあ誕生日プレゼント?」
「アタシ誕生日来月なんだけど」
「まぁ、なんだ……その、お礼的な?プレゼント的な?」
居心地が悪い俺に、何とか気持ちが伝わったのか、佳菜は静かにほほ笑んで、本当にうれしそうに佳菜はそれを胸に抱きしめる。
「うん、ありがとう。すっごくうれしい」
翌朝、一宮佳菜の髪にはいつもと違う、綺麗なヘアピンが付いていた。
鏡で自分の身だしなみを確認して、佳菜はインターホンを押した。
数秒後、陽の父が扉から出てくる。
「あ、おはようございます……」
佳菜は若干怯えつつも、陽の父にそう尋ねる。
佳菜は二カ月もの間、陽が父から虐待を受けているのを間近で聞いていた。佳菜にとってそれはトラウマのようなもので、陽の父は、とても怖い存在だ。
すると、陽の父はこう答える。
「陽ならもういないよ」
佳菜は何が起きたのか訳が分からなかった。
家に上がると、昨日までは確かにあったはずの、陽の部屋。
そこは、完全にもぬけの殻になっていた。
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