また、何も言われなかった
近所の小さな山にやって来た。
ここなら夜でもどれだけ大声でしゃべっても誰にも迷惑をかけない。
何てのは建前で、俺はここで首つり自殺をしようとしている。ばっちり紐も持ってきた。
幼馴染に見られながら自殺って、なんかいいな。心配されたい。
「ねぇ、なにしようとしてるの?」
近くにあったよさげな気を見つけて、そこにロープをかける。
そうしている間に、佳菜は俺に尋ねる。
「……何って、自殺だけど」
冷たく俺は返す。
すると佳菜は激怒して、腕を振り上げる。
叩かれる。
すぐに分かった。
もう身体が覚えているんだ。
その人間の腕が肩以上の高さに到達するだけで、怖いとか、トラウマとかではなく、身体が反応する。
「っ!!」
俺は頭を抱え、その場にしゃがみ込んだ。
小さいから虐待で育った俺は、突然の大きな音、近くで人が動くだけで身体が勝手に防御姿勢を取るようになった。
例えば車のクラクションの音だったり、壁の電気を消そうとする動作だったり、そんなことだけで、俺はビビってしまう。ほんと、情けない。
「っ、ごめん………ついかッとなって……そんなつもりは無くて……その……」
佳菜は俺を見て、焦ったように振り上げた手を下ろす。
俺はそれを見て、ため息をついて立ち上がり、紐をかけ直す。
「ねぇ、ひかり……」
佳菜の声はとても小さい。
でも、凄くうっとおしい。
なんでこいつはついてきたんだ。
高い位置に結び付けた輪の紐。
ここに首をかければ、ほんの少しの間、苦しいのを我慢すれば、何も感じ無くなれる。
俺はその輪に首を……
「陽っ!!!!」
その瞬間、佳菜が俺に抱き着いてきた。
「もう……なんなんだよ
「アタシ、陽が好き」
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