片瀬さんは天使です
くらくら、ぐわんぐわん。
そんな擬音がよく似合うような感覚。
照りつける太陽が、体力をどんどんと奪っていって、終いにはその場に座り込んでしまう。
ここは街中、炎天下の下、少年がその場に座り込めば、誰もが熱中症だと思うだろう。
俺に声をかけてきてくれた人もどうやらそのようで、俺の名前を呼ぶ。
「ひーくん」
そう呼ばれた気がして、俺は目線を上げた。
しかしそこにいたのは、俺が思っていた人物ではなく、何度も何度も俺を救ってくれた唯一の人。
「市川君⁉大丈夫⁉救急車呼ぶ⁉」
「片瀬さん……あんたマジ天使だよ……」
そう言って、俺はその場に倒れた。
「市川君、ホントに大丈夫?」
夏休み、何度か働いている喫茶店に来店してきてくれたので、片瀬さんに会うのは久しぶりではない。
しかし今は状況が違う。
なんとなんと、俺が今いるのは片瀬さんの家だ。
ことの説明をすると、街中で熱中症で倒れた俺は、たまたま片瀬さんに見つけてもらえた。
片瀬さんは救急車を呼ぼうとしたが、俺はそれを断固拒否。
せめてという事で、片瀬さんの親に車で迎えに来てもらい、今は片瀬さんの家で休んでいる。
片瀬さんの家に来るのは初めてではない。
自殺しようとした時、片瀬さんを家に送った時以来だ。
でもその時は玄関までだったので、家の中にあげてもらうのは初めてだ。
「片瀬さんの家って凄く良い匂いするね」
「恥ずかしいから辞めて」
むすっとした表情で片瀬さんは返すが、相変わらず曽於の目は俺を心配している。
「市川君、大丈夫?」
すると、リビングの方からスポーツドリンクをもって片瀬さんの母がやってくる。
「はい、もうすっかり元気です。ホントにご迷惑をかけて申し訳ございません。すぐに出ていくので。本当にご迷惑をおかけして、ごめんなさい…」
「大丈夫よ。子供がそんなこと気にしちゃダメ。それに熱中症の子が無理しちゃダメ。親御さんに連絡するから、迎えに来てもらって…」
「それだけは!」
すこし大きな声で片瀬の母の言葉を遮った。
「それだけは、許してください。自分で返るので、大丈夫です……」
俺があまりにも食い気味に言うものだから、片瀬さんの母はきょとんとしている。
そして何となく気まずい空気が流れたところで、片瀬さんが口を開いた。
「ねぇ、市川君、痩せた?」
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