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自殺しようとしたら同級生に助けられた  作者: ゆめ
自殺しようとしたら、また同級生に助けられた
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看病

 授業を受けながら、ずっと心がもやもやしていた。


 体調不良のけだるさや、頭痛、吐き気なんかはおまけのようなもので、さっきから片瀬さんに言ってしまったあの言葉が頭の中で繰り返されている。


 片瀬さんは気にしていないようだったけれど、俺はほんの一瞬でも怖い思いをさせてしまったのではないかと気が気では無かった。


 そんなことを考えているからか、いつのまにか病魔は俺の身体を蝕んでいったようで、四限目の授業が終わる頃には、机に突っ伏す事しかできなかった。


 いつもは一緒に昼食をとる佳菜にも、「今日は眠たいから寝る」と伏せたまま伝える。


 正直、そのわずかな言葉を発するだけでも吐き気がした。


 頭ががんがんと痛んで、きっとわずかにでも動けば俺はぶっ倒れてしまうだろう。


 横になって休みたい、辛すぎる。でも保健室に行く力なんてない。

 そう思っていても、俺には誰かに頼るなんて選択肢は浮かんでこなかったし、もうだれかに助けを求める力なんて残っていなかった。


 でも、そんな時、優しく声をかけてくれる人物がいた。


「市川君、大丈夫?お水買ってきたんだけど、飲める?」


 わずかに視線を上げると、そこには心配して俺を見つめる片瀬さん。


 その手には水が握られていて、俺はそれを受け取り、お礼を言う前に口に流し込む。


 体に染みわたるようだった。


 先ほどまで喉まで来ていた吐き気も、脳を締め付けるような頭痛も、体を沸騰させる暑苦しさも、全部一瞬で楽になるようだった。


 そのまま半分ほど水を一気に飲む。


「っぷはっ!…ありかとう、片瀬さん。でもなんで…」


 俺は今日、片瀬さんに強く当たってしまった。


 それでもなんでこの人はこんなに優しくしてくれるんだ?


 俺には分からなかった。


「市川君、ずっと辛そうだったから……立てる?保健室行こう?私もついて行くから」


 そう言って、片瀬さんは俺に手を差し出してくれる。


 俺に優しくしてくれるのが、俺が辛そうにしていたから?分からない。


 なんでそんなことで優しくしてくれるのか?


 そのやさしさは俺にとってはあまりにも分からないことで、でもとても暖かいものだった。


「市川君、今日は早退しよう?」


 保健室について、片瀬さんは相変わらず俺を心配してくれる。


「早退は……あんまりしたくない」

「そっか。じゃあ七限までここで休んでよう。バイトは?」

「今日もある」

「さすがにバイトは休もうね」

「いや、バイトも休めな…

「だめ、休んで」

「……はい」


 自分でもおかしなことを言っているのは分かっている。


 先ほど保健室の先生に早退を進められたにもかかわらずそれを拒んで、高熱にもかかわらず、バイトに行こうとする。


 それでも片瀬さんは優しく俺の話を聞いてくれて、前に心配された時とは違って、なんだか申し訳ない気持ちになった。


「なんで俺がバイトしてるかって、聞かないの?」


 ベッドに寝かされながら、俺は片瀬さんに聞いた。


 うちの高校はバイトが禁止されている、それにもかかわらず、法律で禁止されている夜勤のバイトをしている俺。


 普通なら疑問に思うはずだろう。


 でも片瀬さんは深入りしようとしない。


 俺も深入りしてほしくないと思っている。


 でも、今日は、今だけは聞いてほしいと思った。


「聞いてほしいの?」

「……うん」

「じゃあ、なんで?」

「……言わない」

「そう」


 聞いてほしい。


 それは少し違った。


 俺は片瀬さんに俺の事を聞いてほしいんじゃなくて、片瀬さんにそばにいて欲しいと思ったんだ。

 ただ、いつものように冗談が思い浮ばないから、適当に聞いてほしいなんて言っただけ。


「休憩時間の間、ここにいて欲しいって言ったら怒る?」


 俺はそう尋ねた。


 休憩時間が始まって俺に水を持ってきてくれたのだから、片瀬さんはまだ昼食をとっていないだろう。他にもやりたいことだってあるだろうし、貴重な休憩時間を、俺に費やすなんて嫌だろう。


 そんなわがまま、許されるはずがない。


 でも、それでも、今は片瀬さんに甘えていたかった。


「うん、いいよ」


 片瀬さんは嫌な顔することなく、そう言ってくれた。


 物凄く申し訳ない気持ちになったけれど、それがものすごくうれしくて、安心した。


 俺は生まれて初めて、人に看病してもらえた。


片瀬さんぐうかわ


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