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4 世界最強の魔法兵団

「アザミ、下がってるでごわす……!」

「は、はい……」


 言われたとおりにガナールの背後に隠れ、アザミは立ちはだかる影の様子を覗き見た。

 ローブを着た魔導師風の若い男だった。


「人間? じゃあ、やっぱり……」

「始まってるみたいでごわすな。森で暴れてるのは、おそらくこいつらでごわす!」

「ほう、今度はオーガか。本当に化け物ばかりの森だぜ」


 そう言いながら男はゆっくりと手を上げた。

 同時に身体がふわりと浮き上がる感覚を覚え、次の瞬間には地面に横たわっていた。続いて耳をつんざく爆発音。たった今立っていた場所に爆煙が上がっている。


「大丈夫でごわすか?」


 アザミはガナールの腕の中にいた。どうやら、危険を察知したガナールが自分を抱えて地面に飛び伏せたらしい。


「あ、ありがとうございます」


 慌てて立ち上がるも、追撃が二人を襲う。二人は次なる爆破魔法をすんでの所でかわした。


「今でごわす!」


 魔導師がバランスを崩した隙に、ガナールが一気に距離を詰めようとする。

 しかし、魔導師はすぐに体制を立て直してガナールの突撃を交わした。


「ぬぬ?」 

「ガナールさん! 気をつけてください!」


 今度はよろけたガナールの背中に魔導師が手の平を向ける。アザミはやっとのことでその手に飛びつき、なんとか反撃を阻止した。


「邪魔だ」


 魔導師がアザミを振り払い、彼女は樹木に叩きつけられた。


 くっ……やはり、身体が思うように動かない……


 普段ならばガナールの一撃も間に合っていただろうし、アザミも簡単に振り払われたりはしないはずだった。まだ瘴気のない空間に、身体が順応できていない。

 おそらくはあの稲光も、この魔導師たちの仕業だろう。森の瘴気を丸ごと消し去ってみせるとは、人間の魔力を少々侮っていたかもしれない。


 ブラキリス魔法兵団――

 そうか。彼らこそがグラントの言っていた世界最強の魔法兵団か。


「ガナールさん!」

「わ、分かったでごわす!」


 アイコンタクトで頷き合い、二人は一目散に背中を向けて逃げ出した。


「悔しいですが、今はこれしかありません!」

「くくぅ……だけどそれでも……」


 背後で幾多の爆発音。追いかけてくる魔導師との距離はまるで離れない。いや、むしろ少しつづ縮まっているような気がする。


「やっぱり、駄目でごわす……!」

「く、くそ……! 身体が動きさえすれば……」


 息を切らしながら、二人は森の中をデタラメに走った。人間では超えられないような崖を登ってしまえば簡単に逃げおおせるだろうが、今は自分たちですら登れるかどうか怪しい。


「キャー!」


 爆発音と共に背後で悲鳴が聞こえた。 


「え?」


 二人が思わず振り返ると、そこに傷だらけになって倒れ込む妖精の姿があった。


「ちょっと大丈夫!?」

「わーん、ピンキーがやられちゃった!」 


 傷ついたピンキーの周りに、例の妖精カルテットたちが心配そうに寄ってくる。 


「ちょっと、あなたたち!」

「ア、アザミ!?」


 戸惑いの色を隠せないガナールの呼び声を無視し、アザミは慌てて妖精たちのもとへ駆け寄った。


「危険ですからすぐに隠れてください! ピンキーさんは拙者が預かりますので!」

「ピンキー、死んじゃうの?」


 チャーミーが悲しげな瞳でアザミを見上げる。


「妖精が死ぬもんですか! 大丈夫ですから早く!」

「アザミ! 後ろでごわす!」


 ガナールの声に反応し、アザミは背後を振り向いた。


「あっ……」


 アザミは絶句する。そこにはいやらしい笑みを浮かべた例の魔導師が佇んでいたのだった。

 すでに射程距離内。魔導師の手は真っ直ぐこちらに向けられている。

 アザミは傷ついたピンキーを身体でかばいながら、思わずその名を心の中で叫んでいた。


 パッヘルさま――

 パッヘルさま! どうかお助けください……!

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