第51話 dragon cherry blossom 拷問編
お待たせしました。
「はあぁぁ〜」
大きく溜め息を吐いて緊張を解く、力を
抜いてコーナーポストに寄りかかり周りを
見れば、右膝を破壊されて動けないイワヲ
の修復を、アンお姉ちゃんがブツブツ言い
ながらやっていた。
「3歳で『森の賢者』を倒したからって
ウチのイワヲまで撃破するのはちょっと
おかしくない?あっちは魔法特化で格闘
貧弱って、弱点が有ったからまぁ納得は
したけどさぁ、ウチのイワヲは格闘最強
なのよ?鉄壁よ?青龍の従者なのよ?
それが4歳児に負けるって何?ちょっと
聞いてるの?」
ええっと、アンお姉ちゃん誰に言って
いるのかな?
俺なの?オコなの?ムカチャッカなの?
「何か、ごめんなさい?」
とりあえず、謝っとけ作戦発動。
「はぁ、マクート貴方『戦い方』を知って
いるわね?何処で教わったの?お父様?
それとも前世?貴方は現時点で、度胸は
上から数えた方が早い所にいるわよ?」
「『戦い方』は前世だよ、自衛官だったし
結構シゴかれたもんだよ」
イヤ!かなりシゴかれたな!現世の俺の
身体に染み着いている位に。
「後、度胸が上から数えてはちょっと違う
と思うよ?イワヲはかなり遠慮していた
んじゃない?本気なら俺はゴングと同時に
『あの世』にまた飛ばされた筈だよ
やるべき事が解れば、後は行動するだけ
だから度胸云々は違うかな?」
そして、前世のおばあちゃんにまた
ジャイアントスイングで還される所まで
がセットです。
それとも、『おじいちゃんミサイル』が
また飛んでくるかな?
間違ってこっちに来たら、悪霊化待った無し
だから来ちゃダメ何だけどね。
「それを差し引いても、イワヲにダメージ
を与えられる事が出来るって相当魔力操作
が上手く無いと出来ないわよ?」
「それは赤ん坊の頃から遊びながらやって
いたし、それが出来なかったらマーシャを
護る事が出来無いからね」
「何でソコで妹さんが出てくるのかな?」
「ターブランから聞いた話だと、マーシャ
の魔力は白いから輪郭がボヤけて暴走を
しやすいんだって、暴走した魔力を俺が
アース線代りに逃がしていたからね、魔力
暴走って辛いんだよ?物理で胸が痛くなる
からね?」
「物理で胸が痛くなるってどれだけよ!」
「100m走のペースで5キロ走れば
同じ痛みを経験出来るよ?やってみる?」
「それを知っているのも大概よね?」
「言ったでしょ?『シゴカレタ』って」
アンお姉ちゃんから憐れむ様な眼で
見られたけど、集団催眠状態に置かれたら
余裕で出来るよ?
肺が肋骨に押さえられて痛いけどね。
「よし!イワヲどう?違和感は無い?」
アンお姉ちゃんは、話しながらイワヲを
修理完了した様だ。
「さて、マクートには次なるステージに
上がって貰います」
「次なるステージ?」
「これよ!」
アンお姉ちゃんが得意気に指を鳴らすと
『龍子の部屋』が消えて真っ白な空間に
連れてこられた。
「マクートには、アレをやって貰うわ!」
そう言って指差した方向をみれば、遥か
彼方の点がこちらに迫ってくる。
それが何か?確認するよりも早く俺達の
前後を通り過ぎて止まる。
アンお姉ちゃん?あの映画の武器調達の
シーンを丸パクりしたでしょ?
あの銃弾の避け方が話題に成った映画だ。
「コッチの世界には無いからいいの♪」
それはどうだろう?
「それで、コレは何?」
電車がホームに滑り込む様に、俺達の前に
現れたのは、銃器の類いでは無く黒い背表紙
の本が収められた本棚だ。
その中の本を一冊、徐に選んで取り出すと
それは魔方陣が書かれた板で有った。
「ここに有るのは魔方陣よ!」
「魔方陣?」
「マクートには、ここに有る魔方陣を全て
覚えて貰うわ!」
えっ?ここに有るヤツ全部?千は越えている
よね?
「コレ全部でどれくらい有るの?」
何か聞くのが怖い様な?
「イワヲに聞かないと解らないわ!」
イヤ、そこは胸を張って答えちゃダメな
気がするんだけど?
「大丈夫よ!時間は無限に有るわ♪
ここ限定だけど」
「コレ覚えても現実の世界に戻ったら
忘れない?」
「そこは抜かり無いわ!ちゃんとテストを
するもの」
「因みに合格点を聞いても?」
「理想は満点よね!」
「イヤ!絶対に無理!それなら俺帰る!」
「大丈夫だって!魔方陣って数は多いけど
パターンは決まっているから、基本の6個
を覚えれば後は、その中身を理解さえして
しまえば、余裕だって!」
「それに、ここで魔方陣を覚えればマクート
だって魔法を使えるわよ?」
「よし!やろう!」
そりゃ、折角のファンタジー世界ですもん!
魔法の1つや2つは使いたいじゃない?
1度は諦めた夢よもう1度!
カムアゲインだ!コノヤロウ!
こうして、俺は自ら地獄に堕ちて行った。
イヤ、あれから何れ位時間が過ぎたの
だろう?
2日、3日じゃ利かない位の時間が過ぎた
筈だ、少しは考えろよ!あの時の俺!!
今の俺の状況を説明しようか?
午後の授業が体育の後、古文をやる。
って、言えば判るか?
ダルさも眠気もMaxなんだよ!寝かせてよ!
プリーズ.アイラブピロー&フトン何だよ!
なのにさ!
「おや?マクート眠いのか?ソレ♪」
って、問答無用で疲労回復
させられるんだぜ?
お腹が空いたって
「ほい!龍豆だよ〜♪」
って、何だよ!俺は育ち盛りなの!
豆一粒じゃ満足出来ないの(泣)
後、この豆アレをパクったろ?
動物性のたんぱく質が恋しいよ!
そんな味気無い日々を、どれ程過ごした
だろう?
最後の「白の魔力」の魔方陣を全て
覚えたよ、もう幾つ魔方陣を覚えたか
数えちゃいない。
ただ、お金に換算したら天文学的な数字が
弾き出される事は解っている。
この魔方陣だって、見るだけで丸金貨何枚
必要何だろう?因みに丸金貨1枚百万円
だぞ?
「アンお姉ちゃん終わったよ〜」
「案外早かったね?じゃマクートは
少し眠りなさい、疲れたでしょう?」
何だろう?アンお姉ちゃんが女神様に
見えちゃう。
指定されたベッドで、ゆっくり身体を
伸ばして眠るのはいつ以来だろう?
俺は目を閉じたら速攻で意識を失なった。
「マクート、そろそろ起きる時間だぞ?」
身体を揺すられ、意識が浮上してくる。
「んん、もう朝なの?」
「はい!朝ご飯だよ〜♪」
何時もの豆一粒ですね。
「さぁ!マクート!テストの時間だ!」
ああ、そう言えばテストするって
言っていたよね?何年前だっけ?
って、アレ?魔方陣の基本って何種類?
おやぁ?ど忘れしているようだ。
「アンお姉ちゃん、復習する時間を
頂戴、ちょっと忘れている所が有るから」
「何を言っているのかなぁ?ちゃんと
覚えていれば、頭に入っている筈だぞ?」
何だろう?アンお姉ちゃんの笑顔から
邪悪なオーラが滲み出ているぞ?
「さぁ!マクート頑張るのだ!」
こうして、俺は寝起きのポヤンポヤンな
頭でテストを受ける事になった。
結果は火を見るより明らかだ!
「残念!正解率は75%だった♪」
余裕でセーフじゃない?
「さぁ!残りの25%を完璧に覚えようね♪」
鬼や!あんたは鬼や!
こうして、再度俺は幾千万もの魔方陣を
相手に格闘することになった。
ここは地獄だ。
「マクート、暗記ばかりだと気が滅入る
だろう?」
とっくの昔に滅入っています
「ちょっと、反射テストをしてみようか?」
「反射テスト?」
俺の知っている反射テストは、ランダムに
光る数字をタッチするヤツだけど?
「マクートそこに立ってくれる?」
指示された場所に立つと、目の前に
36個の穴の開いたホワイトボードの
前だ、何だろう?嫌な予感しかしないぞ?
「じゃ、これから光った穴の所を
ピンポイントで魔力防壁を張ってね?」
「ちょっと待って!コレって命の危険が
危なくない?」
「だ〜い丈夫♪マクートの魔力操作は
人類上位レベルだから、余裕で科せる
はずだよ!じゃ、始めるよ〜♪」
「えっ!ちょっと待って!」
「ぷすっ」
何だろう?また三途の川を渡っている
みたい何だけど?渡河速度速くない?
アレ?何でおばあちゃんは背番号51の
ユニホームを着ているのかなぁ?
あっ!キャッチされた。
おお!レーザービームで返送されて
しまった。
だから、背番号51なのね。
「うおぅ!」
「あぁ!良かったー間に合ったぁー」
イヤギリギリアウトだと思うよ?
前世のおばあちゃんのファインプレーの
お陰だからね?
「アンお姉ちゃんいきなり致死レベルは
危険じゃないかなぁ?」
「そ、そうだね?うん少しランクダウン
しようか?」
薄々感じていたけど、アンお姉ちゃんは
後先考え無い所が有るね?ポンコツなの?
「さぁ!気を取り直して逝って見よう!」
「絶対に字が違うと思う」
何気に、前世のおばあちゃんはよく
登場するよね?
次回はどんな格好で出てくるのかなぁ?
もう既に!三途の川は渡る事は、決定事項
なんだよね?
こうして、俺のレベルアップと云う名の
拷問は更に続く。
俺の夜明けは何時になるんだ?
暑いですよね!
ここ最近は暑さの質が違う
と思うのは俺だけ?




