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聖女の守護者(お兄ちゃん)  作者: 山石 土成
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第44話 嫌〜of the dragon 郷愁編





南大陸に脚を踏み入れるのは何年振り

になるのだろう?

正直、こちらの大陸には大嫌いな大帝国

が大陸の半分を支配しており、好んで

脚を踏み入れようとはしなかったのだ。


四聖とガラン大帝国は因縁がある。


本来、青龍は大陸の東側を守護する立場

であるが、初代皇帝が己れの国内を守護

する四聖に邪な感情を抱き

南を守護する朱雀と共に、愚かにも

『妃にしてやるから来い』なる召還状

を勝手に送り付け、青龍、朱雀が共に

無視していれば、面子を潰された皇帝は

両方に軍を差し向け、力ずくで手に入れ

ようと試みるも、力の差に敢えなく敗退

するが、仮にも大陸の半分を支配する

男である、力が無理なら知恵を使い

青龍には、真冬の極寒のなかで挑み

その力を十全に使わせず、朱雀に対して

は、その優しさに漬け込まれ少年にも

為らない、幼年兵を全面に出される

という、卑怯な手段を用いられ朱雀は

投降し捕らわれ、青龍は撃退には成功

するも力を使い果たしてしまい、朱雀の

救出を行う体力は残されていなかった。


青龍と朱雀の、異変を察知した玄武は

ヴァネッサ山の住みかを出立し、帝国

内部を悉く蹂躙する、いや帝都に向けて

歩いていただけなのだが、玄武の巨体は

歩く自然災害である、青龍は力の回復を

玄武の住みかを借りて行い、玄武は

朱雀を解放せねば、このまま帝都を訪問

してやるぞ?と行く先々で伝え、根負け

した帝国が、朱雀を解放し玄武は大山脈

を越えて、行方を消した。


500年前の出来事である。


大帝国は、この時に力を大幅に落とし

各地で内乱に明け暮れ、今も内乱や

権力闘争に余念がない。


ガラン大帝国の再建は、非常に

前途多難であり、それでも世界最大の

大国としての体面を保っている事が

実は政権中枢ですら、謎に思って

いたりする。


そんな500年の時を経て、再会を

果たした玄武と青龍であるが、残念な

事に感動とは程遠い、出来事で有る

ことを知るものは、ただ1人である。


「ふう」

一息付いて、青龍は回りを見渡して深呼吸

をする、湖が近いからなのか?空気は少し

湿度が高めに感じるが、不快には感じない

南大陸の西側は、白虎の守護する世界で

あるが、アレが己れの責務を果たす事は

まず無いので、従者が頑張っているので

あろうな。

アレが責務を果たしていたら、天変地異が

起こってしまうから、そのままでも善いが

四聖序列二位とは大きく出たな?

とりあえず、ボコるのは後回しにして

先に玄武との再会と、御礼詣りをせねば

なるまい。


玄武の気配を辿り、一軒の何の変哲もない

民家に辿り着くと、二人の幼子が家の前で

なにやら遊んでいるのだろうか?

しかし、其処には玄武の他に『森の賢者』

も居り、ある意味この世界で最も豪華な

顔触れによる遊戯になるのでは無いか?

そんな事を考えていたら、女の子が玄武を

預けて、家に入って入った。


どれ、挨拶でもしておくか。


「久しいな、玄武達者でいたか?」

(青龍か久しいな、何時振りであろうな?)


全く、このような無防備な新生体になって

も、マイペースに挨拶を交わして、何事も

無かったように振る舞い、此方がどれだけ

心配したか、考えてもいないのだろう。

玄武を抱き締めて感謝したいのに、それ

以上に怒りが湧いて来るが、思わぬ方向から

ソレは中断する、玄武を載せた幼子が此方を

向いて、挨拶して来たのだ。

幾ら、人に化身しても其なりの気配は感じて

いる筈なのだが、其を歯牙にも掛けずに

笑顔で、普段通りの挨拶をしてきたのだ。

それが、青龍には新鮮で可笑しくもあり

思わず笑ってしまう。

しかも、朱雀が「仔犬ちゃん」と表現する

のも良く判った、豆柴の様に愛くるしい

のだ、その容姿が。

思わず抱き締めて、そのまま帰りたくなる

位に、ああ朱雀はこの愛くるしさにやられ

たのか、確かにやられてしまうな。


一頻り笑い、幼子の頭を撫でながら謝罪する

「済まないな、少年私にはその様に普段

通りの挨拶をしてくれる者はいないのだ

それが、とても新鮮でな!出来れば此から

もその様に接してくれると嬉しいのだがな?」



「えっ?そんな事で良いんですか?」

そうかぁ、このお姉さんボッチなのか〜

高嶺の華って案外、男女両性から避け

られやすいのか?

確かに近寄り難い雰囲気はあるけどさ。


さて、笑わせては貰ったが、此方の用事も

済ませてしまおう。

私は少年の頭に載る玄武を手に取り告げる。

「玄武よ、貴方には感謝しきれぬ程に感謝

をいているのよ?私は、だけどね?

なんで、山越えして溺死しているのよ!!

そして、なんで!溺死に200年も掛けてる

のよ!サクッと逝けよ!サクッと!」


あれ?このお姉さん危ない(ひと)なの?


「こんのぉ!うっかり亀八兵衛ぇがぁ!!」


「お、御館様ぁ〜!!」


おお!東京デカイヒトの永久欠番16の投げ方

とは、マニアックだなこのお姉さん。

って、言うかターブランが星になってしまった

のだが?デッチが慌てて後を追うも無理じゃ

無いかなぁ〜?


ええっと、俺は水飴作りを残して

きら〜んと光を残して、逝ってしまった

友人(アイツ)の心の隙間を埋める為に

山の様な雑事を(こな)して凌ぐのか?


余りの展開の早さに、どうお姉さんに文句

を伝えるか悩んでいたら、お姉さんが後ろを

向いて、手を翳す。


何しているんだろう?


空の彼方から光と共に流れ星が、此方に

向かって来る、あれ?これって直撃コース

に乗ってね?


やがて、轟音と共に光が此方に向かって

来る、この世界のアルマゲドンは今日

なのか?来世の俺はもう少しマトモな

世界に飛ばされたいなぁ。


そして、流れ星は吸い込まれる様に

お姉さんの手の平に納まった。

流れ星の正体はターブランであった。


(フム、この世界は青く丸いのだな!)

えっ!この亀さん有人?宇宙飛行を

成し遂げたの!?


此方を振り向き、とびきりの笑顔を見せた

お姉さんの顔には「スッキリしたぁ〜」と

デカデカと書かれていた。


「少年、驚かせて済まなかったな?だが

我らはこと程度で死ねる程弱くは無いのだ

安心されよ」


打ち上げて、衛星軌道に載って

宇宙飛行をして宇宙空間から

大気圏突入をこの程度っすか?


このお姉さんも、ターブランも規格外の

存在で在ることが良く判ったっす。


「ふう、喉が乾いたな、少年よ済まぬが

水を1つ頂けぬか?」

「あぁ、それならコレをどうぞ」

水を張った桶に、入れておいた竹筒の水筒

をお姉さんに手渡す。

ソレは私の自信作『麦茶』である。

折角、パパンが結構な量の大麦を買って

来たのだ、ママンの機嫌を直す為に焙煎

して置いたのだよ!自家焙煎はエライ

苦労したぜ!次回はデッチにやらせよう。

って、デッチは何処まで逝ったのだろう?


少年から竹筒の水筒を手渡される。

うわぁ〜『時代劇』みた〜い!!

思わぬ小道具で、テンションが上がり

水を一口含むと、水じゃない!でも

これは、懐かしい、非常に懐かしい味だ。

これは『麦茶』だ!


あぁ、そうだ私がまだ『女子高生』だった

時分に、夏の暑い中を家に帰り真っ先に

冷蔵庫を開けてコレを飲んだっけなぁ。

その当時、嵌まっていた『執事の漫画』の

真似をして、無駄に高い位置から麦茶を

注ぐから、周りをビショビショにしてよく

お母ちゃんに叱られたっけなぁ。


あぁ、駄目だ‼️涙が我慢できない!

卑怯だよ!何千、何百年と忘れていた

記憶が溢れてくるじゃない!


『お母ちゃん・・』


お姉さんが突然黙りこみ、一言呟く

『お母ちゃん・・』

思わず目を見開く、だって今『日本語』

をこのお姉さんは口にしたのだ!

涙ぐみ、両手で竹筒の水筒を握るお姉さん

の手に思わず触れる。

「お姉さんちょっとごめんね」

お姉さんに関する情報が、頭の中で文字になり

浮かび上がってくる、其処には。


「四聖青龍序列二位・アンスィニョン(転生者)」


お仲間発見の瞬間である。

























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