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聖女の守護者(お兄ちゃん)  作者: 山石 土成
22/52

第22話 領都(まち)のドイナカ人






夏も終わり、ギラギラとした太陽は穏やかさを取り戻

し、優しい陽射しがラッケ・スワーニュの湖面に反射していた。


秋と言えば、食欲、運動、読者、等々色んな言葉が浮かび上がるが、此処では『備蓄の秋』が常識である。

俺も冬に備えて、備蓄に勤しむ。

デッチに全てを任せて。


いや、俺も外に出て食料を確保したいんだよ?

だけど、フルリンのセイで俺はまだ1人では外に出れ無

いのよ。


3歳児なんだからしょうがないじゃない。


とにかく、腐ってはいるが森の賢者様で有る。

デッチの確保した食糧は多岐に渡る、里芋、菊芋、食用キノコ全般、栗、胡桃、パセリにローズマリーそして

1番のヒット商品が山葵である。


水が綺麗な場所だから、湧水が流れる所に生えているのでは無いか?

と、デッチに聞いたらビンゴよ。

人の入れない森の深い所なので、まだ使う人はいないから取り放題である。

「鼻がイタクナッテ食エナイ」とほざいたが。

薄く切った肉に薄く塩を降り、火で軽く炙りほんの少し

だけ付けて喰わせたら、一発で嵌まった。

今では率先して採ってくるし、近くの沢で栽培もし始めた、ここに春は「行者にんにく」が加わる楽しみだ。


しかし、俺も鬼では在るが悪魔ではない。

前世の地球と同じく、1週間で区切り働き休んで貰って

いるよ?本当だって!


この世界でも1週間は七日間であり、この国の国教である『ケーネ主教』の神話を元に決められている。

内訳は以下の通りである。

臨・在・石・火・水・木・土

「神が降臨し、此処にある塵芥を集め、石を作り

火をくべ、水となし、木が生え、土に還る」

と、言う教えらしい、地球と被っている所が面白い。


「それじゃ、出発するぞぉ」

「「は〜い!!」」

パパンが声を掛け、舟が桟橋を離れる。

今日は土の日、地球で言う日曜日であり、休養日だ。

本日はこの世界に生まれて、初めて街へと家族全員で

お出掛けである。


俺とマーシャは生まれて初めての街にドキドキである。

パパンは1日置きに行っているので、慣れているが

意外なことに、ママンも5年振りの街なのだそうだ。

「街には何があるのかなぁ?」

マーシャの喜びっぷりは相当だが、俺達はその理由が

判るので何も言わない。

本当は春に街へと行こうとしたが、マーシャの魔力暴走

で何回も流れた為、誰も何も言わなくなり、マーシャの

落ち込みは相当で、ターブランが家に来るまで笑顔を見せてくれる機会はかなり減っていた。


そして今日である、そりゃ浮かれるわな?

分かるぞマーシャ、お兄ちゃんも実は隠れてワクワクだ

「マーシャこっちに来てお母さんと座りましょ?」

ママンが浮かれるマーシャを抱きよせて落ち着かせて

いた。

それでもマーシャはママンの腕の中で忙しなく動いては

ママンや俺と目が合うと笑顔で応えていた。

マーシャ、パパンにも笑ってやってくれないか?

お前の後ろで、2mの大男が落ち込んでいるのだが?

そんな面倒臭い事も有りつつ、俺達は無事に街へ

『領都・シャールエラン』へ足を踏み入れた。


落ち着かないマーシャをパパンが肩車して勝手に何処か

に行かないように確保させ街を探索する。

街全体は丘の上に有る領主館が城塞都市オストゥーニ

を思わせ、街はアルベロベッロのトゥルッリを思わせる

可愛らしい家が並ぶ街で有る。

全ての家が漆喰を塗った白い壁の家々は、湖に映えて

御伽の国に来たのかの様で有る。


港から街へ入ると、正面にケーネ主教の教会があり右に

宿屋が有り、左は通りを挟んで市場が有り街の人の台所

になっていた。

「わぁ〜大きい〜」

マーシャも教会の大きさにビックリしているようだ。

「お父さんコレからどうするの?」

俺もマーシャも街へ行く、としか聞いて無いために

予定はパパンに聞かないと判らない。

まさか、パパンも判らないなんて無いだろ?無いよね?

「まず、教会で洗礼だな」

あ〜それな。教徒としての洗礼ね。

「洗礼ってなぁに?」

「神様にご挨拶するんだ、コレから宜しくってな」

「本当?お母さん」

俺はパパンを信じない。ママンを信じる。

「コレから、神様の教えを守り、正しく生きていきます

って、約束して誓いをたてるのよ」

だとよ、パパン。

「マーシャ、わかった?」

「ん〜わかんない」

「じゃあ、お兄ちゃんと一緒に洗礼受けような」

「うん!!」

フム、マーシャの笑顔は本日もキラッ!キラッ!である


教会の中は外見の大きさ通りに高い天井、礼拝に訪れる

教徒用のベンチが幾つもならぶ、広さを有し前世の教会

のイメージそのままであった。

違うのは、教会正面に十字架はなく、変わりに球体が

設置され、四聖の守護を思わせる竜、亀、鳥、虎が球体

の周りに配置されていた。

あれ?ターブランって神様だったの?


神父様の有難い説教を聞き終え、讃美歌を歌いはい終了

と、思ったが続きがありました。

俺とマーシャの洗礼だ。

教会に来たの教徒の人々が神父様に挨拶をしてから帰っ

てゆく、暫く待って人が疎らになった所でパパンが神父

に挨拶をする。

「神父様、此方が先日お話した息子と娘です、今日は

洗礼を受けたく、連れて参りました」

頭を下げて、神父と話しているがパパンよアンタでかい

んだから膝を折れ!

それじゃ、神父にメンチ切るブロディだっての!

しかし、神父は気にする素振りもなくパパンを受け流し

「はい、私も貴方の子供に逢えるのを楽しみにしており

ましたよ」

俺と神父の目が合った、どうやらまともな人間らしい

評価は貰えたかな?だがな神父!!

ウチのマーシャの天使っぷりを見ておののけ!ひれ伏す

が良いわ!ブワッハッハッハ〜


と、暗黒卿ゴッコを心の中で済ませて挨拶をする。


「先ほど紹介を受けました父オイゲン、母エレノアの、息子マクートです」

よし、こんなもんか?

さぁ!マーシャ!天使の笑顔でこの神父を導くのだ!!

「・・・えぇちょ・・」

此方を見るマーシャに微笑んで伝える。

「マーシャ、お兄ちゃんの言うことを真似してね」

「うん!!」

「「パパとママの娘、マーシャです」」

「はい、良くできましたぁ〜」

頭を撫でながらマーシャを誉める。

「エヘヘヘ〜」

神父は目を大きく開き驚愕の顔をしていた。

お前もマーシャ教に入れてやろうか?

「猟師、オイゲン 貴方が教えたのですか?」

「いえ、全然、勝手に覚えました」

おい!こら!ブロディ其所はママンが教育した事にしろ

「ラオル神父お久しぶりです」

ママンが一礼して話し掛ける。

「おぉ、信徒エレノアお久しぶりです、その笑顔は試練

を乗り越えた様で何よりです」

試練を乗り越え?何の事だろう?

ママンは俺の背中に手をまわす。

「マクートはとても賢い子なのです、コレくらいの事は

卒なくこなしましょう」

笑顔で俺を見るママンはイタズラが成功した子供の様に

嬉しそうだった。

「そうなのですか?では、洗礼をしましょう皆さん

此方へどうぞ」

神父の招きに教会の奥の部屋へ入る。


さて、此方の神様にご挨拶をするべく、準備体操を俺は

部屋の隅でしていた。

パパンとママンは何をしてるのか理解して無かったが

俺は密かに楽しみにしていた、この世界の神にもしかし

たら逢えるのかも?と。

神様、覚えてますか?貴方に逢ったら報連相の重要性を

垂直落下式の脳天頭蓋砕きと猛虎杭打ち91と共に貴方に

教えて差し上げますよ?






洗礼は厳かに進む。






結果、神様の試合放棄により不戦勝。

あの野郎逃げやがったな!!!










































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