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聖女の守護者(お兄ちゃん)  作者: 山石 土成
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第21話 kick of the dragon





今の俺には物凄く気になる事が有る。

そう、飛ばされたおじいちゃんの行方だ。

俺に、フライングクロスチョップを噛ました後のおじい

ちゃんの魂は無事に戻ったのだろうか?

間違って、こっちの世界に入り込んだらエライ事になってしまう。


『どれ、こっちで孫の頑張りを草葉の陰から見守ろう』

等と思われたら、闇の魔力に惹かれて悪霊化待った無し

である。

(おじいちゃん、孫からのお願いです。こっちに来てたら

早く化けて出て来て!おじいちゃん、髪の毛無いんだから

闇の魔力を纏っても伸ばせ無いよ?0に何を掛けても0

になるでしょ?)

そんな事を考えていたら、誰かの声が後ろからする。

俺は、おじいちゃん其所にいたんだぁ?今送るよ!

と、笑顔で振り向いたら、意識を取り戻した。


「マグゥウゥドォォ〜!!!」


想像してみて?

目の前にさぁ、涙と鼻水でグッチャッ、グッチャの髭面

のブロディがいたらどうする?

怖いよね?キモいよね?また死ぬよね?

イヤイヤ、今度はおばあちゃんが来てしまうかも知れないから、ここは頑張って生きていこう。


「お父さん、いたいよ?」

こうして、俺はこの世界に還ってきた。


とにかく、このブロディが抱き付いて離れないから強引

にモンゴリアンチョップを打ち込み、髭をロープ代わり

にして床に立つ。

おぉ、丁度良いところに適度に汚ない布発見!!

「お借りしまぁす」

とりあえずの声掛けで、了承を待たずに布を借りて

「ほら、お父さん顔が酷い汚いからコレで拭いて?」

と、布を渡す。

誰かが「それ、床吹き用の雑巾・・」等と言っていたが

今のウチのブロディよりはキレイだよ?

とりあえず、ブロディには正座させて顔をフキフキして

いたら、アレ?俺?今、何処にいるんだっけ?・・!!

しまった!此処は砦の司令室だった!!


俺は恐る恐る振り返る、目の前には膝をついた赤毛の髪

がキレイな茶色い瞳の女性と『ドリー』と『生傷男』が

目を真ん丸にして口を開けて固まっていた。

「時間が止まっているようだ、無かった事にしよう」

「「「それはない(わね)!!」」」

ちくしょう!よそ行きの(かめん)が出来ない。

不意に『生傷男』が吹き出し、その他の2名も釣られて

吹き出す。いつの間にか司令室は明るい笑い声に満たされていた。


「なんだ、お前ガキに遊ばれているのか?」

『生傷男』がブロディをからかう。

「違う、遊ばれてねぇ!!」

そうだね、『遊んでやってんだよ』パパン。

「先輩よりもその子の方がしっかりしてますね?」

「違いありませんな」

そりゃ、人類並べたらウチのブロディは下から数えた方

がはやいもん。


「坊や、ちょっとこっちに来てくれる?」

赤毛の綺麗なお姉様に呼ばれトコトコ向かうと。

「よいしょっと」

俺を抱き上げ、膝の上にのせた。

「もう、大丈夫だと思うけど、念のためにもう少しだけ

魔法を充てるね」


『マージ・ル・ペラスィオン』


赤毛のお姉様が俺に魔法を掛けてくれる。

考えてみたら、初めてまともな魔法を見たな。

デッチのアレは、魔方陣が現れたら魔力の塊を放った

だけの、射出魔法だからカウントしないぞ?

3歳児でも避けられたし?


お姉様の黄色い魔力が、優しく俺の痛い所を癒してくれている。

あぁ、幸せだなぁ、『黄色・回復』なんじゃそりゃ?

と、思ったが『癒し・鎮痛』効果が在るんじゃない?

或いは、『治癒速度上昇』とか?

まぁ、ゲームの回復系って感じなんだろ?

この世界は医療系統はどうなっているんだろう?

知らない事が多すぎるよ、まだ家の周りのしか出歩け

無いから、今度は街に行きたいなー。

家族全員でさ。


「はい!終わりました」

う〜ん、至福の時はあっという間に終わったかぁ。

お姉様が、指の腹で俺の頬っぺと顎を擽る。

あ!あ!あ!そんな!うぶで純情でナイーブな僕の心を

弄ぶなんて、イケナイお姉様だ。

気持ち良さに抗えず、目を閉じて口を半開きにしてたら

お姉様に笑われてしまった。

このお姉様、悪女だ!悪ぅいお姉様だぁ。


俺はふと、お姉様の指を見つめる。

その指は剣ダコでボコボコの指で、間違っても

『白魚の様な指』では無いが、努力家の頑張っている

指であった。

「お姉さんの手スゴく良い手だね」

お姉様は手を引っ込め、クスリと笑い。

「大人をからかっちゃダメだぞぉ」

と、笑顔で俺の鼻をツンツンした。

俺はお姉様の手を取り、瞳を真っ直ぐ見つめて

「ううん、お姉さんの手は努力家さんの頑張っている

素敵な手だよ?僕ねこの指大好き、だってね!お父さんもそうだけど、お母さんもね!指にコレがあるの」

と、剣ダコを指差し俺の小さな手が指をスリスリする。


そう、ママンの指にもタコが結構有るのだ、頑張って

レースを編んで家庭を支えてくれるのだ。

俺はそんなママンの手が大好きだ。

結論!この指の持ち主は素敵な女性。


だからさぁ!!俺をもっと誘惑してくれて良いのよ?


お姉様の瞳が潤み、涙を湛える。

鼻をすすり始め今にも泣きそうで有る。

あっれぇ〜、誘惑の続きを期待したら何処か間違えた

っぽいぞ?


ブロディを見る、『何泣いてんだ?この女?』

ドリーを見る、『・・・・・・・・・』

生傷男を見る、『・・・・・・・・・』

結論!このオッサンどもは頼りにならん!


俺は突然の変化について行けず。

「お姉さんごめんなさい、僕、悪い事言った?」

とりあえず、素直に謝ろう作戦発動!

お姉様は無言で首をふる。

作戦失敗!指示を乞う!ダメだ!

コイツら雁首揃えているだけだ!

お姉様が涙声で俺に伝えてきた。

「ううん、嬉しかったからね?」


俺はそれで理解した、あぁこのお姉様は男社会の軍に

いるのだ、この世界の女性でこの指は誉められない

のかも知れない。

いや、頑張っているのに正当に評価されないのだ。

それは、悔しくて、悔しくて、挫けそうで、悲しく

孤独な日々だったのだろう。

俺はお姉様の頭を『良く頑張ったね』と労うように

頭を撫でた。


不意に『生傷男』が大声で笑い始めた。

「坊主、オメェ凄いぞ!オイゲン!お前の息子は相当の

女タラシになるぞ!」

ガハハと笑い俺の背中を叩く『生傷男』。

痛い、痛い!内蔵に響くからやめて頂戴!

僕はまだ!幼いんだからね!

後、為れるなら為りたいよ!どうやったら為れんだよ!

教えろ下さい!!


「坊主、オメェ本当にスゲーぞ?父親の前で娘を泣かせ

たからな?」

へ?チチオヤ?パパン?オトーサマ?誰が?お前が?

「えっ!おじさんの娘だったの?」

「うんにゃ、アッチ」

生傷男の指差した先には俺を見ているドリーがいた。

パパン、助けろ下さい。


「おじさんごめんなさい」

素直に謝ろう作戦第二段発動!

ドリーは呆気に取られていたのだろう、やっと再起動

してきた。

「いや、少年 私の至らなさに気付かせてくれて礼を

言おう」

ドリーはそう言って、俺の頭を撫でながら、娘である

お姉様の頭も撫で始めた。

「なるほど、アレサお前の指がこんなになるまで頑張っ

ていたのだな?気付かぬ父で悪かったな、確かにこの指

は努力家の指だ、アレサ良くやったな」

お姉様は両手で顔を覆いながら頷いていた。

感動的な場面である。


「ぐうぅぅぅぅぅぅぐおう!!」


室内に響き渡る獣の鳴き声・・の様な腹の虫がなる。

最後叫んで無かったか?


「すまねぇ、グレッグ腹へったんだわ」


おれ以外の三人は白け顔でウチのブロディを睨む。

俺は必死にそれはもう必死に自分を押さえた。

『こんの!使えねぇブロディがぁ!!』

と、叫ぶのを。


とりあえず、良ければ食堂でご飯をどうぞ。

と、司令官グレッグさんの好意に甘え食事に行く。

そこで俺達はやっと自己紹介迄漕ぎ着けた。

考えてみたら、俺、オーデさん以外の名前は知らな

かったわぁ。


司令官 グレッグさん娘で副官 アレサさんオーデさん

と俺達2人の五人で食堂に入る。

食堂は混雑していたが、誰がグレッグさんに気付くと

「キヲツケ!!」と号令し皆が敬礼する。

「食事を続けたまえ」グレッグさんがかえす。

「ナヲレ!!」号令により敬礼が解かれ食堂は再び騒が

しくなる。


流石、ミリ飯と言おうか?とにかく、量が半端無いよ。

半分以上パパンに上げて俺の適量をさぁ!食べようと

したら、後ろから椅子を蹴られて床に転がされた。

後ろを振り返ってみたら髭モヤシが立っていた。

「何をするのです!バルルート卿」

髭モヤシはバルルートと言うらしい。

アレサさんが「大丈夫?怪我はない?」と俺を気遣って

くれる。

「餓鬼、其所は私の席だ貴様のような下餞なモノが居て

良い場所では無い、立ち去らねば斬る」

「バルルート、彼は私の客人の息子だ、私に恥を掻かせ

る気か?」

グレッグ(ドリー)が凄む。

「グレッグ司令と有ろう者が此のような餓鬼と同席など

ワタシは何と、王都に報告すれば良いのです?」

コイツってアレか?旧ソ連の政治将校みたいな告げ口

係か?

不愉快な程に大袈裟に芝居じみた台詞に思わず笑う。

「餓鬼が何が可笑しい」

「おじさん喋り方へ〜ん」

俺は指差して笑ってやった。

お前みたいにプライドの塊見たいなヤツには効くだろ?

「こんの!糞餓鬼がぁ!!」

案の定、激昂して、俺に再度蹴りを入れようとする。

「マクート君」

アレサお姉様が俺を庇おうとする、ヤバいお姉様に当たっちまう。

避けてブロディに任せよう作戦失敗。

次善の作戦発動します!

俺は前に出てお姉様を庇い、髭モヤシの蹴りを受け止め

左脇に抱える。

「お前何か・・・・・大っ嫌いだぁ」

俺は叫ぶと同時に右手で遠心力を生む様に外から内へ

振り、自分の体ごと相手の脚を軸に廻る。

『ドラゴンスクリュー』かつて、虚飾に満ちた最強の看

板を粉砕した技である。

ちくしょう、四の字固めは俺の体が小さ過ぎる!

俺は派手に転がる髭モヤシの股間が、丁度俺の目の前に

降って来た。

俺は間髪入れずにフラッシングエルボーを落とす。


その時、俺の敬愛する東洋の大巨人の言葉が甦る。

「何事もですね、中途半端はイケナイのです、攻めるなら攻める、反則を犯すなら覚悟して犯さなければならないんですよ、ヒールなら突き進まないと行けません」


そうですよね兄貴!俺は逝かなければならない。

そこに股間が有るならば!ニースタンプ!

殺らねばならぬ股間にはストンピング!

顔をペイントしたヒールのポーズも忘れない。

周りのリアクションが薄いなら盛り上げて魅せる!

俺はテーブルに飛び乗り最後の技を放つ

ラウンディング・ボディープレス!!


Q 何でムーンサルトプレスと呼ばないのですか?

A やっている人がそう言っているからです。


決まったぁーーーっ!

コレは返せまい、ドヤ顔で周りをみるとドン引きしてた


俺はトコトコとパパンの所に行き、髭モヤシを指し

「あのおじちゃんがいじめるぅ」

と、訴えた。

俺を含め、食堂の皆が思っただろう?

『えっ!!今更?それは無理だっ!!』と

ところがドッコイ、ウチのブロディには効いたのよ!

やった俺が一番驚いた『此処まで馬鹿か』と・・・


体から殺気と一緒に『移〇の歌』も流れているが

気にしたら負けだと思う。

怯える髭モヤシ。


お前、どっちで怯えてる?俺は体から『移〇の歌』が

流れているのに怯えるよ、人間の体から音楽が流れて

くるんだぜ?怖えぇよそっちの方が。


司令官のグレッグさんが落としてくれる

「バルルート卿私も王都に何と報告すれば良いのだ?

3歳児に負ける軍人など、いると思うかね?」

髭モヤシは顔を真っ赤に染めて股間を押さえて

出ていった。


その後の食堂は、やんややんやの大騒ぎである。

騒動の主役の俺は、皆から軍隊用の携帯保存食を

沢山渡された。

1つ食べてみると凄く甘い!

貴重な砂糖に、ドライフルーツ等が練り込まれた

ビスケットで有る。

やったぁ〜マーシャのお土産ゲットである。


その後は何しに砦に来たのか?

全ての人間が忘れて、船着き場にいた。

「お土産有り難うございます、マーシャも喜びます」

俺はペコリと頭を下げた。

周りからは「また来いよ坊主」の声を頂いている。

「アレサさん魔法有り難うございます、とっても

気持ち良かったです」

「ケガしたらまた治してあげるからいらっしゃい」

魅惑の微笑みで有る。

3歳児を誘惑する悪女である。

パパンと生傷男はアッチで別れの抱擁をしている

むさ苦しいから無視で有る。

さて、ママンが晩御飯の準備を始める前に帰ろうか!

俺達の命はママンの手料理と云うキルゾーンにあるのだからな!!

急ぐぞ!ブロディ。



後に、アレサさんが電撃結婚を果たした。

君のお陰だ!と、ドリーに抱き付かれたのは

別の話。


















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[気になる点] ①ガラン?  カラン? ②パパン対応激辛だねぇ(苦笑) [一言] プロレスの存在は知っていても、プロレス技については知りません  っが、楽しく読めてます。笑いをおこせる文章はステキ。あ…
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