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聖女の守護者(お兄ちゃん)  作者: 山石 土成
14/52

第14話 あの亀を馴らすのは貴方。





『四聖・玄武』この言葉を紐解いて行こうか。

俺の前世の俄知識では。

北方・玄武、東方・青龍、南方・朱雀、西方・白虎

が其々四方に居り、その地を外からの災いから守護する

守護者、守護神等、兎に角守ってくれる有難い存在で

ある。


そしてこの大福餅ならぬ、白い亀ちゃんはその玄武だ

うん、流石ファンタジー世界だ俺の想像力の限界を軽く

飛び越えて逝きやがる。

こんな可愛い亀ちゃんが玄武?

常識的な日本人なら、玄武の大きさは彼の大怪獣並みの

大きさを想像しないか?亀繋がりで。


そんな玄武と見つめ合う視線のレーザービームがキック

オフだ。

アレ?この胸の高鳴りは恋の予感?


いやいや、いやいや、いやいや、ちょっと待て俺!

冷静に為ろう、確かにこの白い亀ちゃんも気になるが

今は、あのお猿だ。


「取り乱して悪い、少々想像の埒外だったからな」


「構わぬよ、しかし少年はその齢にしては中々肝が据わ

っているな」


「お互い、見掛け通りでは無いという事だろう?」


「ハハハ、その通りだな」


「それで話を戻すが禁断魔法のエスクレイグとは?」

「さっきも言ったが俺は魔法の知識は全く持っていない

からな、教えてくれると助かる」


「フム、禁断魔法とはその物の持つ魂に直接刻む魔法の

事全般を指すのだよ、この魔法は掛けた術者が亡き者と

なっても解けぬし、掛けられた者も死んでも魂に刻まれ

ている為に、その魔法から逃れる事は出来ないのだ」

「故に、死んで霊魂になってもその縛りは無くならぬ

のだ」


なんちゅうえげつない魔法やねん、この世界の魔法って

そんなエゲツないものが溢れているんか?


「恐ろしい魔法だが良いのか?友人だろう?」

「それにそんな危険な魔法を使ってお前は大丈夫なの

か?」

「術者に危険が及ぶなら次善の策は無いのか?」


亀ちゃんが驚いた顔をして俺を見上げる。


「少年は優しいな、私の心配をしてくれるのか?」

亀ちゃんは嬉しいそうに微笑んで俺を見上げる。

しかし、厳しい顔をしてあのお猿を見る。


「彼の者は少々驕りが過ぎたな、森の賢者と言われて

真の理を追求する事を放棄して力に溺れたのだ、なら

力により其れを質さなければ為るまい」


そう言う、玄武の横顔は寂しそうだった。


「さぁ、やって仕舞おう私なら心配は要らぬよ、先程も

述べたが私は四聖序列四位なのだ、これしきの事はなんとも無いのだよ」

そう言い、お猿の前に歩んで行き玄武の前方に俺の身長

よりも大きな魔方陣が浮かび上がる。

その魔方陣はドンドン収縮して行き、やがて1つの点と

なった。

その点がお猿の額に合わさる。


「さぁ、少年よこの者の額を触れてくれまいか、それで

この魔法は完成する」


そんな泣きそうな顔をするなよ、そりゃこのお猿をボコ

ったのは俺だけどさぁ。


「なぁ玄武、コイツが死ぬか、心底反省するか、俺が

死んだら、コイツの魂は解放しても良いんじゃないか?」


鶴は千年、亀は万年っていう位アンタは多分、ご長寿

だろうからさ、マーシャが一通りの幸せさえ手に入れれ

ば俺の目的は達成される。

マーシャが生きている間だけ、このお猿を押さえて置け

ば問題は無い、其所は妥協しようじゃないか。


亀ちゃんは再び、心底驚いた顔で俺を見上げる。


「少年良いのか?それで彼の者は赦して貰えるのか?」


「良いも悪いも、死んだらそれでお仕舞いだ、それで良いじゃないか?」

そう言い俺はお猿の額に人差し指を付けた。

指を触れた所は、一際輝きやがて収束していった。

お猿の額には『es』の文字が焼き付いていた。



惜しい!!其所は『肉』じゃねぇか?

って言うかこの世界の文字はアルファベットなのか?

よし!ママンに早く文字を教えて貰おう。

パパン?『使えないブロディ』だよ?期待すんなって。


俺は改めて玄武を向き、傷だらけの右手を差し出す。

通りでズキズキすると思ったぜ、手のひらの皮がずる

剥けじゃないか。

あぁ、そう言えばこのお猿と戦っている時にフェイント

で飛び上がる勢いを殺す為に、地面に突き刺した枝を

力一杯握っていたもんなぁ。

等とつい、先程の事なのに遠い過去のような出来事を

思い出していた。


一方、右手を差し出された玄武は困惑していた。

「えっ?どういうこと?」コテンと首を傾げて俺を

見つめていた。


「良かったら、友達に為らないか?俺の名前はマクート

っていうんだ、それと俺には双子の妹がいるんだが良け

れば妹とも友達に為ってくれないか?」


亀ちゃんの瞳は途端にウルウルしだした。


「良いのか?私が友と為っても・・・良いのか?」


「俺がお前と友達に為りたいんだ、お前が嫌じゃなけれ

ば友達に為ってくれると嬉しいし、マーシャも妹もきっ

と喜ぶ」


フフフ、こんな可愛い亀ちゃんを連れて行けば、お兄

ちゃん株は最高値を更新する事間違い無しなのだよ。


俺は最っ高に爽やかな笑顔でもう一度告げた。


「俺と友達に為ってくれターブラン」


「あぁ、我が名はターブランこの命ある限り友マクート

と友義を結ぶことを誓おう」


潤んだ瞳に震える声でターブランと俺は友達になった。



よし!これで俺とマーシャは共にボッチの生活とは無縁

になったぞ、ただ初めての友達が『四聖序列四位』の

玄武というラスボスだけどさぁ。

流石ファンタジー世界、俺の想像力を軽々と飛び越えて

逝きやがる。


この後、俺はターブランを家に連れて帰り、パパンに

上目遣いで可愛く『飼っちゃダメ?』おねだりをきめた

が、「ママと相談しなさい」とママンに丸投げしやがっ

た本当に『使えねぇブロディ』だよアンタは!!

ママンは俺の頭を撫でながら

「フフ可愛い亀さんねちゃんとお世話するのよ?」と

御許しを戴いた、流石ママン!愛してるぜ!!



因みにターブランとは事前に『珍しい亀さん』で通して

行こうと、打ち合わせ済みだ。

流石、我が家に『四聖序列四位』を連れて来ましたは

パパンはどうでもいいが、ママンは心配だ主に心臓方面

が特に・・・・。


さあ、本日のメインイベントと行こうじゃないか!

マーシャはもう起きたのか、ベッドの隣にあるイスに座

り窓の外を眺めている。

その横顔には、陰があり寂しそうだった、そんな顔する

なよ・・今、お兄ちゃんが魔法をかけてやるからな。


俺はマーシャの側まで行き声を掛けた。

「マーシャ、ちょっと今いいか?」

俺は笑顔でマーシャを呼び掛ける。

マーシャは此方を向くが視線は合わせてくれない、うつ

向いて俺の足元を見ている。

そんなマーシャを見ると俺も苦しくなる、お前には笑顔

でいて欲しいんだよ?お兄ちゃんはさ!


「お兄ちゃん、今日な森でお友だちが出来たんだ!

それでな、マーシャにもソイツと友達になって欲しくて

来て貰ったんだ」

俺は後ろ手で隠していたターブランをマーシャの目の前

に差し出す。


マーシャは顔を上げて視線をターブランに、会わせると

ターブランのつぶらな瞳とマーシャの瞳が合わさる。

マーシャの瞳はみるみる輝きを増していき。

はち切れんばかりの眩しい笑顔を見せた。

「わぁ!可愛い〜お兄ちゃんのお友だちなの?

マーシャともお友だちになってくれるかな?」

キラキラした瞳でターブランに問いかける。

ターブランは頷き、前足をパタパタと動かす。

「マーシャ、持ってみるか?」

「うん!」

間髪入れずに頷くマーシャは手を皿にしてターブランを

受けとる。

「私、マーシャお友だちになってくれる?」

ターブランを目線に運び問いかけると、ターブランは

マーシャの親指に顔をスリスリして問い掛けに肯定する

動きを見せた。

「良かったなマーシャ、友達になってくれるってさ!」

「うん!よろしくね・・ええと?」

「ソイツの名前はターブランって言うんだ」

「よろしくね!ターブラン」

今まで見たことがないマーシャの心からの笑顔。

流石、『四聖序列四位』アンタは本物の魔法使いだ。

マーシャの心の闇を吹き飛ばしてくれた。

それを成したのは俺じゃ無いのが残念だけどな。


まぁ、いいかな?マーシャは頬擦りしてはターブランを

見つめる行動を飽きる事無く続けている。

俺はそんなマーシャを微笑んで見つめていた。







2日後の朝、お猿を縛り上げたままである事を思い出し

慌てて森に行ったのはまた、別の話だ。
































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