第11話 魔法使いtei
『石ノ上にも3年』
等という諺がある、夏場は熱く、冬場は極冷な石の上に
3年も座れば立派なドMが完成される。
訳では無く、苦しい思いをしなければ物事は身に付かな
い的な諺だが、俺も3年間この体に流れる「魔力」とい
う未知のモノを試行錯誤しながら追求していた。
『魔法を使えるかもしれない』という興奮よりも
妹のマーシャが『魔力暴走』なる先天性の障害を抱えて
いる為に『消極的なワガママ』ばかりで積極的に行動し
怒られてやって良い事、悪い事の判別基準が生成されて
無いのだ、この娘はまだこんなに幼いのに家族に迷惑を
かけたくない、自分は何もしない方が家族の為だ。
なんてことを考えている節が有る。
「お兄ちゃんありがとう、ごめんね」
これである、なんで謝るんだ?今も魔力暴走が起こり
苦しんでいたから、出来る事をしただけだ。
もし、本当にこの世界で魔法が使えるならばこんな悲し
い表情の少女を今すぐ笑顔に変える魔法を教えてくれよ
それが、本当の魔法使いなんじゃないのか?
「マクート、マーシャの具合は大丈夫?」
ママンが俺に尋ねる、マーシャの魔力暴走に対応出来る
のは家族で俺だけだからだ。
ママンも出来る事なら何でもしてやりたろうが、自分に
出来る事が無くて悔しくて、悲しいのだろう。
「大丈夫、今は落ち着いて眠っているから起きたら側に
いてあげてね」
「ええそうするわ、マクートありがとうあなたが居て
くれて・・ううん、あなたがマーシャのお兄ちゃんで
本当に良かったわ」
ママンはそう言って、俺を抱きしめた。
「うん!僕もそう言ってくれて凄く嬉しい」
ママン本当に俺が一番喜ぶツボを押さえてるわぁ♪
パパン?『使えないブロディ』に期待するの?
気分転換に外に出て空を見上げる。
太陽を見上げ手のひらを翳す、光が俺の手を透かし
薄っすらと骨や血管が見える。
そこに魔力らしい?熱くドロリとした気持ち悪い物を通
す。
この力の源は何処なのか?この魔力を体の隅々まで回し
追求したことがあるが、残念ながら解らなかった。
普段は意識しないが、能動的に使おうと思えばそれに
応えて俺の思うがままに体の至る所に駆け巡り、体の外
に放出する事も可能だ。
「ホント何なんだろう?コレ?」
しかも体の一部に集中して使う事も可能で、掌に魔力を
集めて叩くと金属音がするのだ。
アレはガチでビビった、赤ん坊の頃等「食っちゃ寝」
&「出す」しかする事無いから身体中を駆け巡らせたり
体のアチコチに集めてみたりと暇潰しにイロイロ試して
みたのだ。
その結果『目に集めると周りが止まってみえる』
飛んでる蝿が空中で止まって見えるんだぜ?
気持ち悪いったらありゃしない。
『手足に集めると集めた分だけ硬度が増す』
『使用する筋肉に集めると身体能力向上』
変身できない変身ヒーロー?意味あるの?
『喉に集めて無駄に美声』
赤ん坊の泣き声に聞き入るんだぜ?バカなの?
『マイ・サンに集中する』
いや、恐くて出来ねぇって!!
ママン教えてくれるかな?もし、危険なモノなら遠ざけ
ようとするだろうか?それとも積極的に教えて危険な事
を認識させるか?
『火の取り扱い』みたいなものかな?
手のひらからボケ〜っと、魔力を垂れ流していたら
風も無いのに有る一定の方向に魔力の粒子が漂い流れて
いた。
粒子の漂う先はママンに入る事を禁止されている
岩山の有る森の方に流れている。
普段ならママンの言い付け通りに近づかないだろう。
だが、この時はその言い付けを忘れていた。
森が煌めいて見えたのだ、俺は好奇心を押さえる事が
出来ず、森に足を踏み入れてしまった。
森の煌めきに導かれて進んで行くと、岩山の梺の開けた
場所にたどり着いた。
どうやら、そこには先客が居たようだ。
ただ、何と云うか、そこに居るのは俺の前世の知識では
オランウータンと呼ばれるお猿さんが、ツマらなそうに
此方を見ていた。
「ホ〜ゥ、偉く濃密な魔力に顕現してみれば、こんな
ガキが出てきおったわ」
この世界のお猿さんは言葉が理解出来るらしい。
タイトルに使った元ネタってタイトル以外知らないのよね。




