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第46話 青春ミサイル 0


 人は、欲深い。


 本当の意味で、満ち足りるなんてことがあるのだろうか。常に、乾き続けているような気がする。


 俺は、初恋の人と再会し、気付かないまま二度目の恋に落ちた。その人の過去は思いもよらないものだったけれど、それは、その人がその人であることを妨げはしない。


 時おりデートをして、別れ際にはキスをする。好きだよという言葉に、わたしもと返してくれる。でも、自分からは言ってくれない。気付いていないのだろう。俺といる時の美月は、どこか無理をしている。


 俺の思いを感じてか。


 美月は、ここへ行きたいという。利用者のチェックが甘いラブホテルだ。顔を真っ赤にしながら、クラスの子が女子会で行ったんだって、すっごく可愛い部屋だってなどと。


 誘いを断る?


 そんな馬鹿なことはない。もちろん、一緒に行ったさ。そして、美月に平手打ちをくらった。


 最初のうちは、ゲームをしたりカラオケをしたり。映画を見ている時にか、美月が、シャワーを浴びてくると言って離れた。映画の内容なんて頭に入らず、水の音だけが俺の頭を満たした。こぽこぽになった頭で見た美月の体は、とても綺麗だった。


 圭一、好きだよ。


 初めて言われた言葉は、笑ってしまうくらい薄っぺらくて、悲しいくらいに嘘だった。美月は、渚さんが好きなんだ。そのことに気付いていながら、気付いていない振りをしている。俺も、美月も。


 何が正解だなんて分からない。けれど、俺は美月を抱きしめて、そして押しやった。


 きょとんとした表情の美月は、みるみるうちに泣きそうな顔になって。どうして? あたしが、汚れているからなの? と、問いかける。


 そうじゃない、とても綺麗だ。でも、と俺は首を振って告げた。きみは帰らないといけない。心が、ここに無いのだからと。


 ぱしんと乾いた音がして、頬が痛んだ。


 泣きながら服を着て、泣きながら去っていく美月の背中を見送る。俺は美月を追いかけない。だが、俺の心は彼女を求めてミサイルのように飛び、そのまま自ら作り上げた壁に激突した。


 完膚なきまでに木っ端微塵だ。誰か俺を抱きしめてくれ。ミサイルは、粉々に砕け散った。



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