第37話 狂い咲きの季節 19
今日の運勢は、十二星座の中で最下位。十二支の中でも最低。靴紐は切れ、黒猫がよぎり、鴉が鳴いて睨んできた。
バカバカしい。
占いなんて関係ない。この世界には、どんなことだって起こり得るっていう厳然とした事実があるだけだもの。
でも、今日に限っては、わたしは占いを信じて家でじっとしているべきだった。
最悪だ。
渚を跪かせているところを見られた。それに、渚を好きにしていいのはあたしだけだって、そう呟いたのも圭一に聞かれていた。
ほとんど自分で蒔いた種で、自分で望んでいた未来に自分の足で歩いてきたようなものなのに。もしかしたら、違った未来があったかもしれないと、図々しく後悔しているのは誰だ。
圭一と顔を合わせているのも辛くて、バイトが終わるのを待たず、わたしはキャッツを出て駅の貸しロッカーへ向かった。
荷物を取って、多目的トイレへ。
金色のウイッグに、金色のカラコン、きつめの化粧をしたら、真っ赤な帽子、黒地に金の刺繍が入ったジャージ姿へ。
手馴れたもので、その間わずか5分。
だが、その短さが仇となった。着ていた服を貸しロッカーに入れて鍵をかけていると、背後に人の気配がして、乱暴に帽子とウイッグを奪われた。振り返ると、バイト中にもめていた男女が、わたしのウイッグネットと服装を見て、にやにやしていた。
やっぱり、今日の運勢は最悪だ。




