表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/47

第33話 狂い咲きの季節 17


 深海魚のコーナーは面白かった。


 どうして、あんなにヘンテコなのだろう。ブサイクで格好悪くて。タコとは思えないような潰れ面のメンダコ、ぬるぬるでぷっくぷくのホテイウオ、おもちゃみたいに大きな目をしたヨロイザメ。


 陸にあげても7日は生きると言われるナヌカザメ。その卵は奇妙な形で、人魚の財布と呼ばれている。


 そんな奇妙奇天烈、愉快な生物の中で、あたしの目を釘付けにしたのは、ダイオウグソクムシだ。巨大な海のダンゴムシ。

 死んでるのか生きてるのか、外見からは分からない。意外と速く泳ぐとか、身体を丸めたりもするらしいけど、動かない時は、ひたすら動かない。

 じっと見ていても触覚すら動かさず。ピクリとも動かない岩のように頑固な姿に、本当は、もう死んでいるんじゃないのかと思う。その姿は、まるで、


 あたしみたいだな。


 思わず、つぶやいていた。そのつぶやきを拾ったのか、圭一が怪訝けげんな顔で見てきたので、そろそろ合流しようかと言って逃げ出した。


 圭一といると調子が狂う。


 あたしなのか、わたしなのか、私なのか。剥き出しの自分を鏡で見せられているみたいだ。深海魚は、浅瀬では生きられない。


 ナヌカザメは、陸にあげれば、わずか7日で死ぬんだ。あたしは、きっと3日ともたないだろう。


 だからなのか。


 帰り道、みんなバラバラに別れて行き。最後まで一緒になった圭一に、まともに挨拶もせず。


 あたしと渚が一緒に暮らしていることを、圭一はどう思ったろう。


 誰か、あたしを深海の生物として展示してくれないものか。ひねくれて、ねじけて、いじけた、ヘンテコな生物。


 あたしは、どうして、あたしなんだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ