表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/47

第32話 青春ミサイル 7


 どうして、こうなったのか。


 慣れてきたとはいえ、2人だと沈黙が続く海野美月と、水族館のベンチでぼうっとしている。


 犯人は佐倉直也だ。


 雨宮うずめにダブルデートに誘われた。そう言って有頂天になっていた。それはいいが、おまけの2人のことは考えてくれたのだろうか。

 この俺、風早圭一と、海野美月と。

 雨宮はいろいろ勘違いしているはずだ。佐倉と海野をペアに仕立てようとしている、と思ったが。


 現場にあらわれた雨宮は、いつもの自由気ままな様子はどこへやら。海野の陰に隠れて、こそこそとやってきた。

 海野に言われるまま、されるがまま。

 ダブルデートを持ちかけた本人が、いまさらになって照れてきたのか。ムードメーカーの雨宮がこの様子では、とギクシャクしていたのも最初の5分ほどで。


 誰と誰がペアだとか、そんなことはおかまいなしに。雨宮は、魚だぁ! 亀だぁ! 蛸だぁ! と声をあげながら、子供のように、あっちへ行き、こっちへ行き。

 最初のうちは全員で付いて回っていたものの、そういった馬力というか気力というか、ありていに言って元気の少ない俺と海野は、次第に置いていかれるようになり。雨宮のお守りは佐倉に任せて。


 二人でベンチに座っていた。


 黙っていると気まずいのと、走り回って喉も渇いたので飲み物を買おうと思い。海野に何か飲むかと聞くと、少し迷ってから、コーラでと返ってきた。俺はなんとなくライフガードを選び、あの日から会えていないジャージ女、ケイのことを思い出していた。


 沈黙を飲み物でガード。


 何か話題がないかと館内のあちこちに目をやっていると、深海生物のコーナーだ。特設展だって、見に行ってみる? と海野に聞くと、こくんと頷いた。

 深海生物のコーナーは地味ながら興味深いもので、定番のメンダコからホテイウオ、ナヌカザメの卵まで、愉快な生物が展示されていた。


 ゴジラっぽい顔つきのヨロイザメの剥製もあり、わりと面白い。海野はというと。


 死んだように動かない、ダイオウグソクムシの水槽に張り付いて。じっと動かずに。あたしみたいだな、ぽつりとつぶやいた。

 え? と声に出た俺に気付いてか、あたふたと立ち上がると、うずめたちと合流しようか。そう言って、特設コーナーを出て行く。


 なにか引っかかる感じがあった。


 しかし、それを考える間もなく、楽しげな様子の佐倉直也と雨宮うずめに合流して、アシカのショーやペンギンの散歩などを堪能し、その日のデートはお開きとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ