第30話 青春ミサイル 8
超生命体飲料の効果は絶大だった。
ゲームセンターで出会ったケイというジャージ女からライフガードをもらい、ガードしとけと言われ。まったく意味は分からないものの。
不思議なくらい気持ちが落ち着いた。
いまだに実感がないというのもある。バイト先の店長で、クラスメイトの海野美月の叔父、海野渚が、俺の幼馴染の平坂志功を車で轢いて死なせた。
そのことが事実であっても、俺の中では事実として迫ってこないんだ。そのことを知らなかった時には、志功は、死んでいたのに俺の中で生きていたのだから。
小学校当時の先生や同級生で連絡をとれる相手を辿って、確かに志功が死んでいたことは分かった。
けれど、ゲームセンターで泣いた時ほどには涙も出なかった。事実を知るということと、何かを感じることはイコールではないのだろう。
わだかまりゼロとはいかないものの、店長とも普通に話せるようになった。
気になるのは海野美月のことだ。
美月は、何をどこまで知っているのだろう。もちろん事故のことは知っているはずだ。おそらく相手の名前も。
しかし、志功と知り合いだったとは思えない。小学生の交友範囲なんて狭いものだし、海野なんて名前の子は学校にもいなかったはずだ。美月は、志功が俺の幼馴染だったなんて知らないのだろう。
雨宮うずめとの約束もある。
俺は、志功のことはこれ以上誰にも話さないことに決めた。心をガードだ。
そう思うと余計にケイに会いたくなる。涙ぐむ俺を馬鹿にせず、笑わず、見た目とは裏腹に、優しく聞いてくれた彼女に。
ゲームセンターに行けばまた会えるだろうかと、都合の良い考えが浮かび、ふと俺は、どこかへ引っ越して行ったもう一人の幼馴染、朝比奈恵のことを思った。




