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第3話 狂い咲きの季節 2
その日のあたしは荒れていた。
渚の前で荒れていないことなんて、まずないのだけれど。朗らかで優しくて、文武両道、才色兼備の海野美月か。
あんなものは偽物だ。
わたしが輝けば輝くほど、あんたは苦しくなる。そのためだけに、あたしは、わたしを磨いてきたんだ。
あんたがいなけりゃ、あたしがなっていたはずの未来を見せてやっているんだ。なんであたしが、学校で冷や汗をかくような目に遭わなきゃならないんだ。
ちゃんと! 調べて! おけよ! グズが!
一言ごとに、あたしは、丸まった渚の背中に蹴りを入れる。すいません、でも、さすがに転校生までは、と言い訳をしてくる。あたしは、余計に腹を立てて、
でも? さすがに? 口答えするのかよ!
ドン! と、踏みつけるようにしてやる。渚、あんたの人生はあたしのものだ。そうだろう?
はい、恵のものです。
その返事に、あたしは満足して足を投げ出した。深々とソファーに座り、丸まった渚の背中に足をのせる。あたしの幸せはこの瞬間だけだ。これまでも、そしてこれからも。




