第28話 青春ミサイル 9
超生命体飲料か。
変なジャージ女に絡まれて。あげく、ライフガードをもらって帰ってきた。謎の黄色い液体で、超生命体飲料と聞くと、化物の体液かと思わないでもない。
初めて会ったのに、そんな気がしないくらい馴れ馴れしくて強引で、ずけずけとものを言う子だったな。
名前は、ケイ。
苗字を聞いても、ただのケイだ! と言って、頑として教えてくれなかった。本当の名前かどうかも怪しい。もし本名なら、プレイヤーネームがKだから安直そのものだ。人のことは言えないが。
俺は、よっぽど暗い顔をしていたのだろう。ケイは、どうしたのか、何かあったのかってずけずけと。
幼馴染の志功のことを話した。
交通事故のことは伏せて。と言うよりも、俺の中では、優しい店長と事故の容疑者とがどうしても結びつかなかったんだ。
見た目や言葉遣いと違って優しいところがあるのか、ケイはコーヒーを奢ってくれて。別れ際には、たぶん自分用に買ったのだろうライフガードを投げてよこして、
ガードしとけ、ガード!
などと、分けのわからないことを喚いていた。俺は妙に嬉しくて、今度会ったらコーラでも奢るよと口に出していた。それを聞いて、ケイは、
はっ、ダッセェな!
と笑っていたけど、満更でもないみたいで。じゃあなと手を振ると、ポケットに両手を突っ込んで夕暮れの街へ消えた。
その姿が蜃気楼のように揺らいで。
手元に超生命体飲料が残っていなければ、夢のように思えただろう。なぜかと聞かれても分からないけれど、こいつでガードすれば生きていけるような、明日はバイトに行って店長と普通に話せるような、そんな気がするんだ。




