第22話 青春ミサイル 12
なにもなくていい。
手にすれば失うかもしれないから。いや、絶対に失うのだから。それなら最初からゼロがいい。期待値がゼロなら失望もゼロだ。
そう思って、ひたすらにゼロの生き方をしてきたのに、この街に来てから、俺の手には心地よい場所が乗りつつある。だからだろうか。昨日の夜、今度はいつまでいられるのかと親父に聞いてしまった。すると、
そんなことを聞くなんて珍しいな。おまえも高二だし、異動になっても一人で残っていいぞ。
と、思いがけない言葉が返ってきた。そうか、俺はもう小学生じゃないのか。ここにいてもいいのか。
嬉しい返事のはずなのに、どこか恐さがある。ちょっと出てくると言って頭を冷やしに街へ出た。といっても、たいした店があるわけじゃない。駅前の寂れたゲーセンかネカフェくらいしか行き場がない。
音楽を聴きながら、歩いて駅へ向かう。
こういう時に聴きたくなる曲は、有名どころじゃなく、インディーズやボカロの曲だ。どちらも玉石混交で荒削り。だからこそ、針のように突き刺さることがある。剥き出しの心をぶつけてくるような。
今日はゲームセンターがいい。荒い楽曲を聴きながら音ゲーの画面に現れる光を追う。何も考えずに両手を動かしていると余計なことを考えずに済む。
ランキングに表示されている名前はただの記号で、その先に生の人間がいるとしても、オンラインゲームで人を撃ち殺すほどにも心は動かない。普段はそうだ。今日は特に淡々とプレイしたい気分だったのに、それなのに、あいつに店舗ランキングを塗り替えられていた。ランキング荒らしのKだ。
全国ランキングはまあ仕方ない。そうそう上に出ることはできないのだ。だから、店舗ランキングだけでもとプレイネームを刻んでいる。だが、俺がトップを取ると、必ずKが落としにかかってくる。どこの誰だか知らないが、トップは返してもらうぞ。




