第18話 青春ミサイル 14
雨宮うずめに幼馴染の朝比奈恵と平坂志功のことを話したが、そのことは他の誰にも話すなと釘を刺され、わけも分からないまま約束させられてしまった。
そのまま夏休みに突入。
転校ばかりで根無し草の俺にもお盆の帰省先はある。小学生の頃に住んでいた街から電車で二駅ほど。
祖父母が住んでいる街だ。
毎年、両親とともに訪れているが、これまで、少し足をのばして朝比奈恵や平坂志功に会いに行こうと思うことはなかった。
破れた初恋の苦しさと、せっかくの手紙にろくすっぽ返事もせず、縁を途切らせてしまった後ろめたさと。
しかし、いまは違う。
雨宮との約束が心に引っかかるのと、夏休みに入ってもアルバイト先で海野美月の姿を見るのと。
そのことが、自分の中で何かを掻き回してくるのだ。ドゥドゥドゥドゥ、ドゥドゥドゥドゥとセルモーターが回されているような。冷えた体を温め、動かそうと。
それもこれも、全くタイプは違うのに、なぜか恵を思い出させる海野の力強い目の光のせいだ。
俺は、海野美月に恋をしている。
だからやっと過去と決別できる、と言えば聞こえはいいが、ただ少しだけ心の余裕ができたにすぎない。海野は、相変わらず俺から距離を取っているように思え、未来に光があるわけじゃないのだけれど。
もうすぐ帰省だ。今年は少し足をのばして、小学生の頃に住んでいた街を訪ねて行ってみよう。恵や志功に会えるかどうか、それは分からないが。




