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第15話 狂い咲きの季節 8
こんこんとノックをして。
あたしは、渚が仕事をしている事務室に入った。ああ、美月かと言いかけた渚が、あたしの表情をみて言いなおした。
恵、なにか?
ドアに鍵をかけ、あたしは、なにかじゃないだろうと詰めよる。なんであいつを雇ったんだ、風早圭一を。
風早くんですか。あの子が何か?
あいつが例の転校生だ。そう言うと、渚は驚いた様子で、すいません、すぐ首にしますと応じた。
だが、あたしにそのつもりはない。このままでいい、そう言ってやった。
いつか、あたしのことを知るだろう。渚の築き上げてきたものも、あたしの築き上げてきたものも、要石を外したように崩れ落ちる。
その時、あたしは何を感じるのか。
悲しみか、後悔か、あるいは歓喜か。




