第14話 青春ミサイル 16
なぜかキャッツのバイトに採用された。
面接では、正直に、佐倉直也の付き添いで来たことを話し、採用なんかされないと思っていたのに。
副店長だという東雲翼さんは、スタイルもよく、綺麗にまとめた髪と黒縁の眼鏡が素敵な大人の女性で。
その色香に惑わされたと認めよう。
問われるまま、はい、はいと返事をしていたら、自分もバイトすることになってしまったのだ。
もちろん、佐倉も採用。
シフトは、みんなの希望を聞いて東雲さんが組む。俺のバイト初日、一緒になったのは海野美月だった。
俺は無口な方だし、海野もそうだ。必要最低限の会話しかなく、お客さんがいない時などは無言で居たたまれない。
海野もそうだったのだろうか。
一度、店長がいる裏の事務室へ入って行き、何事か声をあげていたような。こんな使えない奴、即ち俺を首にするように頼んでいたのかもしれない。
それは考えすぎか。ちょっと距離は感じるものの、仕事は丁寧に教えてくれて。優しい子だと思う。
時折、横顔が幼馴染の朝比奈恵に見えることがあって、どきりとする。
距離が近すぎて眺めていられない。
絵画の鑑賞者が絵の中に入ってしまえば、純粋に観ることはできなくなってしまう。それを残念に思うあたり、ROM根性が抜けないのだろう。
本当に残念なのは、俺自身だ。




