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第13話 狂い咲きの季節 7


 わたしは、雨宮うずめが大好き。


 くるくると表情豊かで、屈託なく物怖じしない。自分に嘘をつかず、好きなもの、嫌いなものにも正直だ。うずめと居る時だけは、わたしこそが本当なんだと、そう錯覚する。


 目覚めながら見ている夢。


 どうしてこんなにも切ない。夢を見ながら、それが夢だと分かっている。すでに目覚めているから、もう目覚めることはない。


 キャッツでのバイトも、うずめと一緒の日は本当に楽しい。


 でも、それもいつかは……


 新たに、クラスメイトの佐倉直也と風早圭一が、一緒に働くことになった。


 こうなったのも、うずめの行動力あってのこと。たまたま店に来た2人にバイトの募集チラシを渡したらしい。追いかけて走り出て、何をしに行ったのかと思っていたら、佐倉直也にバイトのチラシを渡しておいたよと言う。


 なんでそんなことを?


 そう聞くと、うずめは、だって佐倉の奴いつも美月を見ているんだものって。


 いやいや、うずめを見ていたんじゃ。


 わたしの意見には聞く耳もたず、良い奴だと思うよ、もし、気が向いたら付き合ってみてもいいんじゃない? などと言う。


 なんか違うような、そう思っていると。


 ほらほら、おしゃべりはお仕舞い、と副店長の東雲翼しののめ つばささん。悪い人じゃないけど、わたしは少し苦手。本部から派遣されてホールを仕切っている。調理師さんと渚を除けば、唯一の社員さんだ。


 佐倉くんと圭一の採用を決めたのも東雲さんで。ちょうど渚が休みの日だった。団地の奥様方の利用も多く、若い男の子で集客だと笑っていた。


 わたしは、東雲さんに少し怒っている。あたたかく、やさしく、おちついた小さな世界が手のひらから零れ落ちていく。


 その不安と、でも、これは、期待?



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