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第1話 狂い咲きの季節 1
風早圭一。
転校生の名前を先生が黒板へ書いた時、わたしは、比喩でなく息をするのも忘れて見入ってしまった。
間違いない。圭一だった。
向こうはこっちに気付いていない。大丈夫、大丈夫だ。平然としていれば、知らない振りをしていれば大丈夫だ。
わたしは黒板から目をそらして、興味がないような振りをして。しかし、ざわついたような雰囲気に顔を上げると、圭一と目が合った。
もしかして、わたしを見ていた?
いや、きっと考え過ぎだ。あれから5年も経つ。小学生のわたしと高校生のわたしと、見比べでもしなければわかるわけがない。
でも、隣の席に座った圭一は、よろしくねというわたしの顔を見て、驚いたような、何か言いたげな顔をしていた。
あの頃のわたしを思い出したのかもしれない。そう思うと苦しく、同時に胸の片隅が少しだけ温かくなった。
久しぶり、圭一。そして、初めまして。




