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97話 見学会から見舞いへ

 カウフタンと切り込み隊長との結婚話。

 ステファニの狙いどおりなのかわからないが、オフィリアも乗っているらしい。

 名目上は静観としているらしいが。


 公的には上手くいっているものの、私的には完全に包囲された状態でじわじわと追い詰められている状態ということか。

 それは精神的に参っているかもしれないなぁ。


「やっぱりカウフタンには会えないのか?」


「そっすねぇ。アイ様なら無理矢理は可能かと思うっすけど……それで、その見学会になるかというとそうではないとは思うっす」


 クオンの言うこともわかる。

 これ以上精神的に追い詰められたら、ケアニスの方は上手くいくかもしれないが、衛兵隊の取りまとめの方が上手くいかないかもしれない。

 そうなるとエジン公爵領が危ない。

 そこまでの危険な橋は渡れない。


「そんな状態で、カウフタン殿の政務に支障はないのか?」


 ウルシャのひと言で、皆がクオンに注目する。


「実は過労がたたって休んでいるんす」


「衛兵隊は?」


 大丈夫だって言ってなかったっけ?


「衛兵隊は、精鋭たちがきりもりしています」


 カウフタンが育てた精鋭たち。

 そいつらがカウフタンの指示の元、的確に動いているそうだ。


 さらには切り込み隊長含めたファンクラブの動きもまた、助けになっている。

 このままそいつらが衛兵隊の補佐をしているような状況らしい。


「すごいですね。女の子になっただけで、カウフマンさん以上の活躍をしているってことですよね」


 ケアニスが嬉しそうに言う。

 大変なところを見せて諦めさせよう作戦がやばい。


 あとは実際にカウフタンに会って、どんだけ気苦労しているのかを見せるしかない。

 外からでは見えない、女になってしまった苦労を知ってもらおう。


 俺も、どんなふうになっているか興味がある。

 これは知っておくに越したことはない!


「見学会中止は仕方ないか」


「なんだと! イセ、諦めるのか」


「ああ。だが……お見舞いに行こう!」


「おおっ! 行こう行こう!!」


 ノリノリのアイに、ようやく本人と会えると喜ぶケアニス。

 ただウルシャだけは、訝しげに俺に聞いてきた。


「ほんとうに大丈夫か?」


「わからない。ただこの状況が女になった本人にとってどんなに危険かを、ケアニスに見せれば躊躇してくれる、かもしれない」


「まぁ……元々そういう話だったしな。それに過労で倒れるなど昔のカウフマンにはありえないだろう。それは性別が変わるイセの術によるものかもしれない」


「ウルシャさんやクオンに使った時のように、相手が力を入れられなくする力も働いているから、可能性は高い」


「わかった。見舞いの方針に協力する」


「ありがとうございます」


 と頭を下げつつニヤリと笑う。

 全然計画通りじゃない。行き当たりばったりだ。


 だが、上手くいっている気がする!


「見舞いとは考えたな、イセ」


 実は見抜いていたアイがこっそり話しかけてくる。


「おぬし、ほんと時々キレがあるな」


「アイの召喚戦士を、本人が侮ってどうするよ」


「「くっくっく」」


 悪者っぽく笑い合うの楽しい。

 上手く言ったな、兄弟って気分。

 あ、この場合は兄妹かな。


「では、カウフタン殿の家に案内するっす。ついてきてくださいっす」


 クオンの案内で、通されたのは城下町内にあるカウフタンが過ごす家の前にある建物の3階部分。


 ここからだと、カウフタンの家の庭とかがよく見える。


「クオン。見舞いじゃないのか?」


「まずは様子見からです。突然ぞろぞろと我々で押しかけたら、門前払いっす」


「その時は『神器』の威光を利用してじゃダメか?」


「それだと、元々の辛いカウフタン殿の生の声を通しての苦しみというのがわからないっすよ」


 とてもいい正論を言うクオン。

 そうか、クオンも俺の作戦に賛同してくれているということか。

 クオンは、俺とアイに、親指を立てて、わかってるっすよ、って感じのいい笑顔をつくった。


 その様子を見てウルシャはため息をつく。


「カウフタン殿の包囲網がより強固になっていく……」


 まあそういうことだろう。


 それからしばらくカウフタンの家をみんなで見る。

 しばらく変化は無かったが、家の庭に子供がふたり出てきた。


 男の子と女の子。

 まだ、学校も通い始めていないような年頃の子たちだ。

 そのふたりが、お姉ちゃんと呼んでいる。


 ふたりの呼ぶお姉ちゃんが出てきた。

 皆気づく。カウフタンだ。


「彼女ですか?」


「そうです」


「可愛らしい女の子ですね」


「そうでしょうそうでしょう」


 可愛いパジャマ姿で出てきたカウフタンは、子供たちの遊びに付き合っている。

 父として娘と息子に接している気分なのかもしれない。

 だが、子供たちはお姉ちゃんといい、とてもなついている感じだ。


 そんなカウフタンの声が、聞こえた。


「可愛いな、お前たち。癒やされる」


 カウフタンの優しげな様子に、キュンとしてしまう。

 これがファンクラブを持つにいたるカリスマというものか。


「あっ! あれは!!」


 クオンが気付いたその先に、見知った顔の男が来るのがわかった。


「切り込み隊長か」


「あの人が、カウフタンさんと結婚することになる人ですか。あ、花束を持っていますね」


 まさか、求婚に来た?

 さすが、その呼び名にふさわしい切り込みっぷりだ。

 誰もがそう思ったようだが、ウルシャが冷静に言う。


「お見舞いじゃないでしょうか」


 俺たちの間に走った緊張が少し緩む。

 そして切り込み隊長はカウフタンの家を訪れ、庭にいた人に気付いて挨拶をしている。


「隊長代理、お見舞いに参りました」


「なっ!? セディ!?」


 あの人、セディって言うんだ。


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