96話 内助の功
カウフマンの妻ステファニは、夫を支える内助の功として有名だったらしい。
なんでも、犯罪者たちの取締りをする兵士だった頃のカウフマンが助けた中にいた女性とかで。
そこから知り合って、カウフマンの熱烈な求婚にほだされて結婚したとかなんとか。
結婚後には子宝にも恵まれ、夫カウフマンを支えていたそうだ。
その夫が、ひょっとした天下とっちゃうかもしれない、みたいな状態になる。
成り上がりとか、下剋上とか、そういう天下の器みたいな男を夫にした女性になったステファニ。
でも、彼女は夫がどうなったとしても支えていく、みたいなもう何故こんないい嫁さんを一発引きできたのか的な、そんな感じの関係だったようだ。
「つまりご家庭内はとても順調だったってことか」
「そうっすね」
カウフマンの家って、家庭内で何か問題とかあったの? という俺の質問に対して、クオンが以上な情報を教えてくれた。
つまり……
「やはりカウフタンになっちゃったから、問題が起こったんだな」
「もちろんっす。夫がかわいい女の子になって帰ってきて動揺しない人はいないっす」
「家族で問題になる……当たり前か」
公職である衛兵隊長の方が、まだその辺の性差はなんとかなる問題ではあるか。
まさに強ければどんな者でもなれる要素があるのが、衛兵隊長だった。
だが、カウフタンの家族の夫という立場は、男にしかできない。
「で、それでなぜ、ステファニがカウフタンを結婚させようとするっていう話の流れになるのだ?」
「えっとっすね。上手く説明できるかどうか……」
ステファニは、最初カウフタンを、夫の妹として紹介された。
だがもちろん、カウフタンなどという妹がいないことは知っている。
それで騙せるわけがない。
だからオフィリアが要点を押さえて丁寧に説明しようとした。
「しかし、ステファニさんはカウフタンがカウフマンであることに、説明なしで気付いたんす」
「おお……」
気付いたステファニは、カウフタンを抱擁した。
あなた、お疲れ様。というステファニのひと言でカウフタンはガン泣きした。
「すでに面影もないのにな。いかついおじさんだったのに」
「今のカウフタンはカウフマンの娘に似ている、と言われれば似てなくもないっすかね」
「まあ、それくらいか」
「ということは、まさにステファニのカウフマンへの愛ゆえに気づけたということだろうな。ステファニすごいな」
手放しでべた褒めするアイに、俺も含めてみなうんうんとうなずく。
だが、クオンだけは晴れやかな気分になってない様子。
今の話のまま終われば、家族で問題があったという話にはならない。
「で、何故にカウフタンは奥方によって嫁に出されようとしているんだ?」
「可愛かったからっす」
よくわからない説明なのはわかっているのか、クオンは話を続けた。
それはこんな感じだったらしい。
カウフタンはステファニに抱きつかれながら言う。
「こんな姿になってしまって、自分が情けない……」
まだぐずぐずと泣くカウフタンの頭を、ステファニはそっと撫でた。
姿が変わっても変わらぬ愛を注ぐ愛しい妻に、カウフタンは感動していた。
「ステファニ……」
カウフタンを見てにっこりと微笑むステファニがひと言。
「可愛い」
「……え」
「なにこの娘、超可愛い」
その様子をクオンは詳細に語ったことをまとめると、そんな感じだったそうだ。
「可愛いのはいいことでは?」
「問題はそこじゃないっす。ステファニさんは夫を……いきなりできた可愛い義妹として愛ではじめてしまったんす」
その後、ステファニはオフィリアと意気投合。
この可愛い子にどんな服を着せるといいのか、という話で盛り上がる。
さらにステファニはそれだけに飽き足らず、衛兵隊長カウフマンの妹として恥ずかしくないだけの可愛らしく振る舞う作法を身に着けてもらいましょうと言い出した。
もちろん反対するカウフタン。
だが、カウフタンを見抜いた上で認めたステファニは言う。
「あなた。偽物の妹を本物にするために、夫婦足並み揃えて作り上げましょう……最高のカウフタンを」
協力を越えた全力の姿勢を、ステファニは示した。
当然、オフィリアはその提案にいたく感動し、夫妻の頑張りを全面的に支援することを約束。
「うん。カウフタンが大変な状況になったのはわかった。で、なんで切り込み隊長とカウフタンが結婚って話がでてくるんだ?」
「アイ様、きっとそれは、カウフマンの妹として衛兵隊長代理を務める者として、どう振る舞えばいいかという話から、衛兵隊の実力者との結婚を考えたのではないでしょうか」
「ウルシャさん、正解です」
クオンが言うには、ステファニは切り込み隊長が剣を捧げた様子を見ていたそうだ。
その王女への騎士の求婚のような様子に、とても悶えた……じゃなくて感動したそうで。
「最高のカウフタンにふさわしい夫、と狙い定められたみたいっす」
「うん、最悪な家族問題だな」
「原因はおぬしだけどな」
「…………」
「ニヤニヤするな。もっと深刻な顔をしろ」
無理。
まさかそんな楽しいことになってるなんて。
俺もアイと同じく、何故俺はその場にいなかったのだ、と嘆いた。




