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95話 異文化の襲来

「えっとカウフタン殿の衛兵隊がですね……」


 クオンは渋々語り出す。

 俺たちと別れた後の、カウフタンの物語だ。


「かいつまんで言うと、とても上手くまわっているっす」


「え? 上手くいってる?」


「はい。拍子抜けして驚くほど、新体制は順調です」


「どういうこと?」


 カウフタンは、元はカウフマンというエジン公爵が抱える衛兵隊の隊長だ。

 兵士あがりの歴戦の強者で、指揮官としての才もあり、エジン公爵領ではNo.2と言われるくらいの実力者だった。


 そのカウフマンが行方不明になり、代わったのが妹カウフタン。

 カウフマンに妹はいない。

 誰にも言ってなかった妹として、兄が妹の軍事的才能を見出し、指揮者としての教育を施した。


 という設定だ。

 当然だが、そんな都合のいい話があるか、ということになる。

 だがそこは、本物のカウフマンであるカウフタン。

 AI機関の屋敷の前でやったような口八丁でやってのけた。


「カウフタン殿にはあの時にはいない、強力な味方がいたっす」


「誰? オフィリア様?」


「もちろんオフィリア様の承認は大きかったのですが、今の衛兵隊はあのカウフマン殿が力で再編成した私兵のような軍団っす。実力を見せなければ、いくら公爵の後押しがあっても従わなかったでしょう」


「なるほど。衛兵隊のカウフマン殿の精鋭部隊の後押しか」


「ウルシャさん、正解っす」


「あ、AI機関に攻めてきてたあいつらか」


「そうっす」


 あのメンバーが、カウフタン支持をした。

 それは、城下町に残っていた衛兵隊たちも、表向きでも認めざるをえなかっただろう。


「切り込み隊長が、大剣をカウフタン殿に捧げたっす。それで精鋭たちが全員で剣を掲げて、衛兵隊のリーダーはこの人だって示したんす」


「おおっ、それは見たかったなぁ。カウフタンさすがだ」


「僕もカウフタン殿の仕込みかと思ったんすけどね、全然違ったみたいっす。もうすっごい動揺してました」


 剣を捧げたのは、切り込み隊長が自らやってみせたそうで。

 精鋭達もそれに釣られるように剣を掲げたとか。


「切り込み隊長殿がまるで王女に剣を捧げる騎士みたいでかっこよかったっす。もうカウフタン殿が姫様扱いでした」


「それを見逃してしまったのか……何故、アイはその場にいなかったのだ……」


「それからカウフタン殿の親衛隊ができましたっす」


「精鋭たちを再編成したのか」


「いえ。カウフタン殿を守り通し、愛で続ける部隊、っす」


「はい?」


「衛兵隊とは別の組織……って言っていいんすかね? 衛兵隊の隊士たち以外にも参加者が多数いるんす。どっちかというとカウフタン殿を偶像化して見守る会みたいな?」


「マジか……」


「不思議な現象っす。集まりの形は同業者組合(ギルド)に近いっすかねただ自分たちの権利というのは、あくまでカウフタン殿を愛でる権利であって、それに付随する彼ら個人の権利とは違うみたいなんす」


「よくわからないな」


「っす。ただ教会の方から、彼らの集会を注意してくれないかという嘆願が、オフィリア様になされたらしいですが、まだ確定情報ではないっすけど、その辺がどことなく不穏っすかね」


「それって……」


「どうしたイセ? 何か問題があるのか?」


「……いや」


 それ、わかるぞ。

 ファンクラブだ!?


 ただおにゃのこ化を現代日本から持ち込んだだけで、そんな文化まで持ち込んでしまったというのか。

 もしそうなら俺の罪は思い。

 外来種として駆除されそうになってもおかしくない。

 キルケの判断は正解だったのかもしれないな。


「うん、問題はない」


 やばい、楽しい!


「問題なんじゃないか? そのせいで見学を拒否されたのかもしれないんだぞ」


「いえ、アイ様、この問題が関わっているそっち以上の問題があるんす」


「というと?」


「カウフタン殿自身の問題は……家族の方です」


「あぁ……家族か……」


 いきなり夫が可愛らしい娘になって戻ってきた妻はどうしたのか。

 頼りがいのある父が、可愛らしい娘になって戻ってきたらどう思うのか。


「はい……今カウフタン殿の奥方が、カウフタン殿と切り込み隊長とを結婚させようと頑張っているのです」


「……はい?」


 なんか、カウフタン的に大問題みたいだ。


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