93話 同盟崩壊の危機
久しぶりに戻ってきたエジン公爵領城下町。
日が登る前の、まだ暗いうちに町へと入った。
ハイエースは、俺たちがいない間に、オフィリアが用意しておいてくれたようだ。
町の外に隠し場所があった。
これも、サミュエル自治領にあった隠し通路と同じような意味合いの場所を利用してのことのようだ。
領主公認の車庫が2つになった。
レンタカーで借りただけなのに、丁重に扱われているな、ハイエース。
そのハイエースを置いて町に入り、エジン公爵邸へ。
用意された応接室に通された後、すぐにオフィリアがやってきた。
そして、アイとケアニスに対してお辞儀をする。
「遠路はるばるお越し下さり、誠にありがとうございますケアニス様。そしてアイ様、お疲れ様でございます」
「久しぶりのサミュエルの町を堪能できて、楽しかったぞ」
「それは良かったです」
「あ、これお土産」
ポンとポケットから出すようにアイはオフィリアに手渡す。
袋に入った、カフェのチョコだ。
「あら? これは……まあ、サミュエル自治領で有名なお菓子では?」
「美味しかったから買っておいた」
「いつの間に」
「アイは、こういう時のお土産は忘れないのだ」
いい子すぎる。
「カウフタンにも買ってきたんだが、来てないか?」
「あ、はい。この時間は就寝中のはずです」
「そうか。残念だなぁ。喜ぶところ見たかったのに」
アイは気付いてなかそうだが、カウフタンのことを話した時、若干言いづらそうにしていたオフィリア。
何かあったのかな?
まあ、何もないわけがない。
カウフマンは行方不明で、どこの誰かもわからない状態で出てきた妹だ。
後ろ盾にオフィリアとアイがいるとはいえ、怪しさったらないだろう。
「喜ぶところが可愛いカウフタンさんっていうのがその……」
そして、ケアニスが食いつく。
そこが彼がここにきたメインどころだから致し方ない。
「ああ、だがその前に、オフィリアに同盟のことを話そう」
「あ、そうですね。私がこちらに来た理由と一緒に話しましょう」
「ありがとうございます。サミュエル自治領で何があったのか、お聞かせください」
オフィリアに対し、俺たちはサミュエル自治領で何があったのか話した。
アイ、ケアニス、シガさんの『神器』3人による反天界同盟のこと。
ケアニスが離れた魔境城塞の今後の動き。
そして、ついさっきあった天界とケアニスのやりとり。
「『堕天使』ですか……」
「堕ちたとは思ってません。ですが今の天界から見たらそうでしょう。甘んじて受けます」
「アイ様たちのために……ケアニス様には感謝の念に耐えません」
「いえ。同盟ですから。これは対等の関係であり私にもメリットが大きいのです。なのでオフィリアさんも是非私に頼ってください。こちらもお世話になります」
ケアニスの落ち着いた様子にホッとしたのか、オフィリアは緊張が解けたように微笑む。
それから、おずおずと言い出した。
「……アイ様たちの同盟ってひょっとして……『竜』退治のためですか?」
「視野に入れないことはないが、今は天界だけだ」
「そうですか……」
『竜』?
前も出てきたけどそれって?
俺は疑問に思うが、皆は別にそこにツッコミいれない。
ということは、ここにいる人たちの常識であり、俺にはわからないことか。
「こちらに来たのはカウフタン見学会のためです」
『竜』のことはどうでもいいとばかりに、ケアニスは彼個人の問題についてキリッと話し始めた。
「カウフタンさんと、お会いしたいのですが、今日の昼間とかに会えたりしますでしょうか?」
「その件なのですが……カウフタンから見学は遠慮して欲しいと拒絶されてしまいました……」
「え……」
ケアニスは見るからに目の前が真っ白になったように固まった。
そのために古巣の天界から追放までされたのに……って思ってそう!?
っていうかこれって同盟崩壊の危機では!?




