92話 召喚戦士の潜在能力
疲れ切ったケアニスの一蓮托生宣言を聞いた直後、城下町から馬を駆ってやってくるクオンの姿が見えた。
飛ばせるだけ飛ばすという猛スピードでやってきて、俺たちの前で止まった。
「大丈夫っすか!! 無事っすかっ! ケアニス殿っ!?」
へたりこんでいるケアニスを見て、心配の声をあげるクオン。
「大丈夫。キルケたちと戦って疲れているだけみたい」
「そんな、キルケ様たちと戦って無事ってありえないっす!」
クオンがケアニスの体に触れ、触診でもするかのようにあちこちを見てみる。
「骨折なし。打撲傷もほとんどなし……おおぉホントっす……」
「えへへ。ここまで心配されたのは久しぶりです」
クオンの驚きに、ケアニスが少し照れ笑いをする。
「ケアニスが全部やってくれた」
「疲れました」
一番活躍したケアニスはぐったりしていて、何もしてない人その1のアイがドヤッとしてる。
アイって自分のことじゃないと、自慢げになりがちだよね。
「はぁ……まさか武装した天使たち相手に被害ほとんど無しで戦えるなんて……ケアニス殿が味方でほんとに良かったっす」
「まったくだ」
俺がうなずくと、アイとウルシャも同じようにうなずいた。
反天界同盟は、シガさんとサミュエル卿の提案だったけど、俺たちにとって最もありがたい提案だったんだなと今更ながら思う。
最も、ケアニスを裏切らせたから、キルケも激怒したのかもしれないけど。
この辺は、もうキルケに目をつけられた時点で、こうなるしかないものだったのかもしれない。
「武装した天使を相手に戦えるのは、我々だけだったら戦士殿ひとりっすからね。対抗できたとしても無傷じゃ無理だったっす」
「いやいやいや。俺じゃあんなの無理」
あんな黄金の鎧を纏って、光速の拳とか飛び出してきたら、うちの鬼たちとハイエースごと、俺なんて消し炭だよ。
女神の守り手でもない俺はら、吹き飛ばされた頭からどしゃって落ちて死ぬ。
「そうっすか? どうっすか?」
クオンが、何故か首をかしげてケアニスとアイの方を見る。
「ハイエースならいけるかもしれないが、イセは無理」
はっきりと言われると辛い。
だがそうだ。俺は無理。
ハイエースもさすがに無理じゃね? 軍用じゃないし。
あ、でも魔法のハイエースだから行けるかな?
「潜在的な『力』はあると思います。天使の加護を遮り、女の子にした力というのが、私たち……いえ天使たちからすれば驚異でしょう」
ケアニス言い直したのは、天使ではなくすでに堕天使だから、ってことなんだろう。
そして俺の力が驚異という話。
天使たちからすれば、排除するべきとしていた俺の力。
「そうか。キルケを女の子にしてしまえばいいのか……」
あの細面でイケメン風なキルケを女の子に……
モデルさんな感じの美人になるかもしれないな……
あ、でもあのいかついオジサンだったカウフマンが、カウフタンになってたし、今の外見を反映しての姿になるとは限らないか。
……ちょっとこの能力、楽しいかもしれない。
これがおにゃのこ化の楽しさか!?
「やめてください!」
ケアニスが、少し声を荒げた。
さらに少し涙目になっている気がする。
先輩であるキルケのことを慮ってやめてと言っている……んじゃないよね。
「女の子になるのは私が最初ですっ」
うん、そう言ってくると思ってた!
ケアニスやばい。
天使には、俺にとってやばいのしかいない!
何故そこまでして女の子になりたいのか。
いずれ問いたださねばなるまい。
「ケアニス殿、お疲れのところ申し訳ないんすけど、城下町の方へ参りましょう」
「そうだったそうだった。オフィリアたちに会わないと」
「わかりました。大丈夫です」
「ご案内するっす」
天使たちの襲撃という大事があったにも関わらず、予定通りにエジン公爵領に戻ってこられたのは本当に良かった。




