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81話 カウフタン体制の問題点

 サミュエル卿の部下たちが、クオンが「しますよ?」と言い終わった直後、動く。

 槍持ちがまず前に出て、剣持ちが抜刀してサミュエル卿の前に立った。


 槍持ちたちの穂先は、クオンに向けられる。

 が、すでにそこにクオンはいない。


 3歩くらい後ろに下がった位置に飛び退いて、両手を挙げた。


「申し訳ないっす。入りやすい裏道を見つけたもので、入ってきたら、アイ様たちが丁度いたので声をかけてしまったっす」


 敵意がないことを示すクオン。

 アイがサミュエル卿に告げる。


「サミュエル卿、すまぬ。うちのが粗相をした」


「……こちらの方が、アイ様の隠密?」


 アイはコクンとうなずき、クオンの方へ歩み寄る。

 護衛たちは、行かせないように動こうとするが、サミュエル卿とウルシャが止めた。


「クオン。いきなりはまずいぞ」


「もうしわけないっす。ウルシャさんと戦士殿が楽しそうに会話をしていたのでつい……」


 ぺこりと申し訳なさそうに、それでいてアイと会えたことが少し嬉しそうな笑顔を見せた。


「アイ様、連絡ないので心配したっす。お元気そうでなによりっす」


「いきなり現れて驚いたぞ。どうしたんだ?」


「オフィリア様が心配して、僕に様子を確認しに行けと言うので来た次第っす」


 アイとクオンが、親しげに話し始めたのを見たサミュエル卿は、護衛たちを元の位置へ下がらせた。

 ウルシャが全員に礼をする。


「不作法で申し訳ございません」


「いや、構わない……むしろ、アイ様の隠密で良かった。エジン公爵殿の下にはとんでもない隠密たちがいると聞いていましたが、アイ様の部下でしたか……」


「……恐れ入ります」


 どうやら、クオンの名声もいつの間にか知られていたようだ。

 ウルシャといいクオンといい、いい手駒を持っているってことかな?


「クオンが来てくれて丁度良かった。そっちに伝えたかったことがあったんだ。いろいろ込み入ってて、詳細は着いてからになるところだったんだ」


「それは何よりっす。魔境城塞はこれから行くんすか?」


「いや、そっちは終わった」


「え? 『神器』ケアニス様と面会してー、いざとなったら戦士殿の力で捕まえてあーだこーだするって話じゃなかったんすか?」


「その辺、もうすんだ?」


「えっ!? 戦士殿の力で、もう性的に……」


「してないっ!!」


 俺がツッコミを入れざるを得ない方向へ進みそうだったので、止めた。


「そうじゃなくて。ケアニスさんが俺たちの仲間になったんだ。そういうこと無しに」


「えええっ!? マジっすか!?」


 驚くのも無理はない。

 俺も自分で口にしてて、いまいち実感がないからな。


「ひょっとして……また、あれっすか? すでに性的に……」


「だからしてないんだ! なのに仲間になったのは理由があるんだ」


 というわけで、アイと俺とウルシャとで、ことの経緯を説明した。


 ケアニスはが女の子になりたいと言うので、してあげられるかどうか、もっと信用してから、というわけで俺たちの信頼に応えるために仲間になった。


 我ながら、何を言っているのかよくわからない。

 ケアニスがああいう奴だったという話も含めて話すと、俺たちは本当にこれであっているのか疑問に思えてくるから不思議だ。


「なるほど。わかったっす」


 これわかるのか? すごいなクオン!?


「であるなら、僕が持って来た話は問題っすね」


「何の話だ?」


「僕が来た理由は、オフィリア様から様子を確認しに行けと言われてなんすけど……もう一つあるっす」


 言いながら、クオンが手紙を懐から取り出した。


「こちらっす。カウフタン殿からっす」


 カウフタンからの手紙? とアイが受け取り、後ろから俺とウルシャがのぞき込む。


 ……俺、こっちの言葉読めない。

 聞き取りの方は出来るみたいだけど、文字の方は模様にしか見えん。


 俺が読めないことに気付き、アイとウルシャが読んでいる間、クオンが軽く説明してくれた。


「ぶっちゃけると、早く元に戻して欲しいみたいっす」


「そりゃね」


「やっぱり男から女になって、さらに妹というのも家族からすると嘘っぱちだから、そっちの方で無茶言うなって感じみたいっすよ」


「……なるほど」


 俺はそこに希望の光を見出した気分になった。


「よし。カウフタン見学会、行けるぞ!」


 アイと俺は、がしっと手を掴みあった。


「カウフタンの泥水をすするような生き様を見せれば、ケアニスも諦める……かもしれない!」


「そうだ……かもしれない!」


 強制性転換がどれだけ過酷かを見せれば行ける、と思いつつもお互いに簡単に疑念が浮かぶ。


 はたして、女の子になりたいといきなり言いだした天使が、その程度で諦めるかどうか、と。


 だが、俺はまさにその大変さを強調したかったので、そこに一縷の望みを託してみることにした。


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