62話 召喚戦士への期待値
ハイエースが屋敷に入ってきたのに気づいたのか、夜中にも関わらずAI機関の面々や衛兵隊士たち、それにオフィリアも起きていたのか迎えに出てきてくれた。
皆が、さらわれた俺とカウフタンの心配をしてくれて、生還を喜んでくれた。
そこに集まったみんなに、何やら一体感が出たような気になった。
ついこの前まで、武力衝突しそうになっていた、というかなっていた2つのグループとは思えなかった。
共通の敵のような存在がいると、お互いに協力したくなるのかもしれない。
それから夜通し起きていた面々は、昼あたりまで仮眠をとった後、食事をとり、少し遅くなったが予定通り、衛兵隊とオフィリアは城下町へと帰還する。
その際、行軍する衛兵隊たちにハイエースでついていく。
ハイエースの中には、俺、アイ、ウルシャ、クオン、そしてカウフタンとオフィリアもいた。
ここで、オフィリアには、昨夜捕まった際に何があったのかを全て説明した。
密閉された空間で、移動しながら打ち合わせができる。
意外と役に立ってるな、ハイエース。
全然チートっぽくないのが、寂しいけど。
「では、サミュエル卿への連絡は、私にお任せください、アイ様」
全ての話を聞いた上で、オフィリアはそう言った。
天界とことを構える可能性がある事態だというのに、彼女は俺たちへ協力する姿勢をあっさり決断してくれた。
「公式にはそちらで頼む。アイも裏からは連絡入れておく」
「はい。私も、エジン公爵領の統治を引き継いだのは私だという連絡はしなければならないので。『神器』としてアイ様が会いたがっているという点を重点的に伝えます」
「うん。よろしく頼む」
オフィリアのアイへの全幅の信頼感は、見てて頼もしさもある。
本当に周りが協力的で良かった。
「サミュエル卿って、亡くなった商人じゃなかったっけ?」
ふたりの間で話が終わりそうだったので、俺は質問をした。
すると、そこにいる全員が呆れたようなため息をついた。
「それは初代の話っす。今話しているのは二代目っす」
「今のサミュエル自治領のトップ?」
「そうっす。そして通商連合の会長も務めているから、そっちのトップでもあるっす」
「ということは、通商連合っていうのは二代目サミュエルの組織ってこと?」
「そう言う人もいますが、実際はどうでしょうか」
と、聞いていたウルシャが言ってきた。
帝国に張り巡らされた通商連合の信頼は、ほぼ初代サミュエル卿によって作られたと言っても過言ではないらしい。
そして、その後を引き継いだのが二代目サミュエル卿。
彼は、皇家の失墜で抱え込んだ様々な問題によって不安定になった帝国内で、通商連合の信頼を維持し続けた人物らしい。
物腰の柔らかで温厚そうな見た目からは想像もつかない巧み立ち振舞いで、どんな難問も実質現状維持にすることが可能な交渉力を持っているとのこと。
「そんな彼ですが、ただそれだけでは通商連合は保たなくなり、連合内部の商会同士のつながりは崩壊しそうになったそうです。交渉力はあるが商才はない、というのが大方の評価になりますね」
「なるほど。つまり商売人じゃなくて政治家って感じの人なのね。それじゃ、商人として活躍しているのは?」
「通商連合の副会長シガース殿っす」
「シガース殿……?」
もちろん心当たりはまったくないので、クオンが話し続けるのを待つ。
「あっ、アイ様? シガース殿のことは伝えちゃっていいですよね?」
「ああ、いいぞ」
んん? 何故にアイの許可を? と思ったが次のクオンの言葉ですぐにわかった。
「シガース殿は元魔法使いっす。魔法使いアイ様の師匠筋にあたるっす」
「なんと」
「魔術師シガースと言えば、卓越した攻撃魔法の使い手で有名でしたが、アイ様以外の大勢の魔法使いたちと共に、魔法を使えなくなりました」
「魔法が失われたんだっけか」
「そうっす。シガース殿も再び魔法を使えるようにと尽力していたのですが、自ら構築しようとした魔法の暴走を抑えることができず死んでしまったっす」
「ということは、連絡するのも二代目か」
「いえ。御本人っす」
「…………?」
当たり前のように言われて、何を言っているんだと疑問を投げかける前に、周りを見た。
皆、クオンがバカなことを言っている、という風に受け取っているようには見えない。
「……つまり、死んでも生きてる……アンデッド?」
「えっとアイ様、なんと言えばいいんすかね、あれは」
「魔法生物? いや、生物じゃない器物だから……魔法の品かな?」
「魔法の品。つまり物になってる?」
「そういうことだ」
あるある、そういうの。
インテリジェンスソードとか、付喪神とか、霊体になった魔剣の守護者とか。
SFだとコンピューターに自分のデータを入れておいたり。
この場合だと……
「魔法のアイテムに自らの精神を移し、かろうじて現世に自らの意思を残し、後に続く者たちを導く的な感じか」
「そうそう! イセ、ほんと理解が早いな!」
「なるほど、なるほど。そういう話かー」
と口にしたら、アイも含めて皆がギョッとした感じで俺を見た。
「な、なにか?」
「イセ、やはりとんでもない世界にいたんだな」
そうウルシャが言う。
そういえば、オフィリアを助けて城下町を抜けた後、アイを200歳か? と聞いて驚かれたっけ。
「そういう話と言い出すということは、戦士様がいた世界ではよくあったということでしょうか?」
「おそらく」
ウルシャが何故か肯定するが、いや違うよ?
と思いつつも、現代日本にはびこるエンターテイメントの数々について、この人たちにどう説明したらいいか手がかりすらないので途方に暮れる。
「天界と交渉するような真似も、イセのいた世界ではあったってことか……なるほど、合点がいった」
カウフタンも、うんうんと噛みしめるようにうなずいている。
「あ、いや、その……」
「ふふっ、どうだ! アイの召喚したイセ、すごかろう! だからアイは守ると決めたんだ」
そのひとことの後の皆が俺のことを見る視線に、リスペクトがあった。
現代知識で異世界無双?
この期待値の高さ、なんかやばくない?




