61話 通商連合への接触理由
カウフタンとアイが、俺にはさっぱりな話を始め、微妙に蚊帳の外になったあたりで、ウルシャが提案してくれた。
村長に礼拝堂の後のことを任せて、いったん戻りましょう、と。
俺もクオンも賛成の意を表し、撤退の準備にとりかかった。
まず、穴を塞ぐ大きな布をとって、ハイエースを外に出す。
まだ騒ぎが続いていると思って、礼拝堂を遠巻きに見ていた村人たちから悲鳴のような声があがる。
ハイエースの異様を見ての驚きだ。
それから、アイが村長と話をつけ、礼拝堂の修復については教皇庁の方から連絡があるはずだからと。
もししばらく来なかったら、AI機関かエジン公爵へ連絡をと話しておいた。
そしてようやく帰路につく。
運転席に俺。
助手席にはアイとウルシャ。
後部座席には、クオンとカウフタン。
計5名。
普通車なら搭載人数ぎりぎりだが、ハイエースはまだまだ行ける。
積載量的には、ここにキャンプ道具を載せても大丈夫くらい。
しかも俺以外全員女の子。
元いた世界の友人らがいたら、ハーレム羨ましいと思うところか。
あ、ひとり中身が男のがいた。
逆にTSだと喜ぶな。
つまり、人も羨む状況というわけだが、全員で巻き込まれている事態は深刻。
これも異世界転生の宿命か。
「あ、道違うっす。あそこで左に曲がってくださいっす」
「おっと了解」
後部座席のクオンとカウフタンが前のめりで、運転席を見ている。
カウフタンは、クオンよりも興味津々で見ている……ところは見目麗しい。
「そこの真ん中の計測道具2つはなんだ? さっきからビクビク動いているが」
「エンジンの回転数と時速」
「……わからない。説明をしてくれ」
「うん、あとで。それよりも、さっきアイと話していた通商連合がどうのこうのっていうのは何?」
と聞いてみたところ、カウフタンは説明してくれた。
アイ、ウルシャ、クオンもそこに加わって補足を入れてくれた。
今、堕天使ケアニスが居座る魔境城塞は、帝国を亜人たちから守るために先代のコンウォル辺境伯が建立した砦。
魔境城塞による辺境伯の活躍によって亜人たちは攻めあぐね、帝国は数々の混乱にも関わらずあくまで人間同士の争いという状況で済んでいた。
「さらに、この帝国の混乱にかこつけて、勢力を増したのがご存知、稀代の商人サミュエル卿っす」
「存じませんが、まあそういうのいるんだな」
「いたんす。過去形っす」
サミュエル卿の手腕により、魔境城塞は帝国と亜人たちの交流拠点になり、細々とですが交易が始まりました。
しかし、帝国側が一枚岩ではないように、亜人たちも基本的にまとまりに欠けているが故に、ある亜人の一族が交易を利用して魔境城塞に攻めてきた。
「危ないっす! 帝国最後の砦、魔境城塞が亜人の手によって落ちる、皆がそう思ったその時っす! あれはなんすか! 鳥っすか? いや違うっす!! あれは天使ケアニス様っす!!」
真打登場とヒーローっぽく、ケアニスが現れて、亜人たちを押し返してしまった。
ケアニスの活躍により、魔境城塞はコンウォル辺境伯領のまま、現在に至る。
ただ、亜人たちの交流はここでストップ。
以後、何度も亜人たちは魔境城塞へ攻めてきたが、ケアニスによって撃退され続け、現在に至る。
「あれ? その話を聞く限り、ケアニスって悪くないよな?」
「そう聞こえるっすよね? ところがそうじゃないんす」
アイたちAI機関の諜報活動と、カウフタンの情報収集によると、キルケがケアニスについて語っていたような話が推測されていた。
ケアニスは、人間と亜人との間を、仲違いさせたのでは? と。
その情報は確証がなかった。
さらに言うなら、確証が得るまで調べる状況でもなかった。
だから、エジン公爵領は静観していた。
だが、今回のキルケの発言によって、ケアニスの動きが人間と亜人を仲違いさせている可能性が高くなってきた。
天界は、人間と亜人の関係悪化を望んでいなかったからだ。
「ケアニス、悪いやつじゃん」
「そこまでではないっすね。一応、亜人たちから魔境城塞を守ってくれたっすから。彼がいなかったら、今頃、コンウォル辺境伯領が無かったかもしれないっす」
「だが、少々やりすぎている、と思っているのがキルケ様……天界側というわけだ」
カウフタンがそう言い、さらに言葉を続ける。
ここからが、壊れた礼拝堂でカウフタンが最後にアイに語った通商連合の話になる。
「そしてやりすぎと思っているのは天界だけではない。亜人との交易で利益をあげていた通商連合だ。彼らは今の魔境城塞の状況をよく思っていない。だからこそ、ケアニス攻略の味方に引き込むことができる」
「なるほど」
「さらにメリットがある。彼らの交易復活に協力すれば、その後にエジン公爵領としても貸しをつくることができるわけだ」
おお、そこまで考えていたのか。
「もし味方にならなくても、魔境城塞と亜人たちの情報を掴むためにも接触しておいて損はないだろう」
「カウフタン、すごいな! 名参謀だ!」
「恐れ入ります」
アイがカウフタンをべた褒めしている。
アイはチョロ過ぎる気がする。
「まあ、あとでは出たとこ勝負ってなるのかな。お、もう屋敷が見えてきた」
「速くないっ!?」
ハイエース初乗りのカウフタンは、素で驚いてくれた。
「ふふん、こんなもんだぞ」
何故か、アイがドヤっとした。




