54話 『神器』会談 その2
「キルケよ。これは忠告だ。天使の『力』に反するからイセの『力』を排除する。そこまで己の『力』に固執していては、天界は世界の移り変わりについていけなくなるぞ」
キルケは、真下にいるアイをぎろりと睨む。
「我々に具申をするか」
「そうだ。天界もまた変わらねばならない。なのに昔のままの天界でいようとする。それが故に天界の『力』が衰えていると何故気付かない。天界が直接、人の理に介入しているのが何よりの証拠だ。『神』のいた時代、そこまでしてなかっただろ」
「それこそ時代の変化に対応した天界の姿だ。『神』無き時代には、天界もそれ相応に変わらねばならん。だが、変わらずに残すものは必要だ」
「そのための天界の『力』か。だからキルケは『神』になれんのだ」
「……またその話か、アイ」
「ああ、そうだ。何度でもしてやる。お前たちが敬愛してやまない『神』の後を継ぐっていうのはそういうんじゃないだろう?」
アイの態度は明らかに責めて問いただしてる。
だが、ただ責めているというより、どこか慕っているところもあった。
魔法を失った原因の相手を、アイは信頼している?
「アイ、これは世界を守るためなのだ。私は『神』の後継ぎになることは求めていない。私は天使だ。天使は神の御使いだ。『神』のご意思をあまねく世界に知らしめるために存在している」
そんなアイに向かって、キルケは……不思議なことにキルケは、どこか優しく諭すように話す。
「故に、『神』のご意思と、我々天使の意思は違う。まったくの別物だ。『神』のご意思のために世界を安定させ、そのために天界の『力』を行使する」
世界を守るための世界の警察であることの矜持、みたいなノリなのかな。
皆の平和のために、武力を持つという一見矛盾しているように見える。
天界ってところも、なかなかに辛い責任を負っているところなんだな、とは理解できた。
「それはわかる、わかるんだがっ」
「だからこそ、魔法の法を壊し、魔法使いを消し去ったと思ったのに、アイは魔法をまだ使えている。そのことを我々は脅威に感じつつも、敬意を持って接している。ただ『神器』に選ばれただけではない」
「それもわかっている。だからと言って、アイは許さないし、抵抗し続けるぞ。アイが居る限り、天界の思い通りにはさせない」
「それは思い上がりだ。エジン公爵に保護されているだけのお前に何ができる?」
「ぐっ、そ、それは……」
アイはキルケの言葉に少し怯むが、俺の方を見た。
「……だから召喚術でイセの『力』を求めたんだ」
アイはそう、不安そうに言った。
「だろうな。だからこそ……私は排除しなければならない」
「こっちだって。素直にやられると思ったら大間違いだぞっ」
アイは俺のそばによって、手を握ってキルケを指さした。
「イセ、あの『力』をこいつに使っていいぞ!」
「え、えっと……あの『力』って?」
「話を聞いてなかったのか? もうこいつ、イセを殺す気なんだぞ? ひどいことする気満々なんだぞ? もうこれはイセの『力』で何とかするしかないだろう!」
アイの目の瞳孔が開いている?
ちょっと興奮してる?
「アイ、おちついて」
「こいつを、女に変えて、自動車の車内でレ○プしてもいいぞ」
「怖っ、そんなことをする気なのか!?」
「いや、違――」
「そうだ! こいつはそういうことをしちゃう気満々の男なのだ!」
「バッ、な、何言って――」
「ど、どんだけ倫理観の欠如した奴なのだ!!」
「ふっふっふ、恐ろしい男だろ?」
「酷くない!? 俺の扱い、敵も味方も酷くない!?」
俺の『力』は『神』の領域って言ったじゃん!
凄いんでしょ? ならもっと大事に扱ってよ!!
「排除だ。こいつは排除だ!!」
すごい敵意を俺に向けてくる。
アイ、状況ひどくなってないか?
「やる気なら、天界の全武力でもって攻めてくるんだなっ!!」
「アイ!! 何挑発してんだよっ!?」
「イセの全力の『力』ならば、天界の『力』を凌駕する!! こいつの力、自らの身を持って思い知るがいい」
「ぐぬぬ、そこまでなのか……」
俺を蚊帳の外にして、ふたりで俺の『力』うんぬんで盛り上がってる。
ほんとに酷くない?
呆れて見てると、隣のアイが俺の服を掴んでひっぱる。
「イセ……どうしよう、交渉失敗した」
「……見ればわかる」
この幼女、成功させる気あったのか……




