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49話 過大評価

「俺が……来た?」


 何しに来た? 俺が何かをしに来たと勘違いしている?


「いや、呼ばれて来たんだが……多分」


「呼ばれてきた。きっかけはそうかもしれないが、来た理由はあるだろう? お前ほどの『力』を持つものが、得られる利益すら求めずに来るなどありえんからな」


「…………」


 ……うん、勘違いされている。

 どうも過大評価している。


 あ、でもあの魔法のハイエースは……確かに凄いが……

 でもなぁ……天使だったり、魔法だったりする方が凄いと思うんだが……


「何を求めてこの世界に来たんだ?」


 これって評価されたままの方がいいのか。

 それとも正直に素直に自分がただの学生だったことを伝えた方がいいのか。


 どっちだと、このおっかない事態を上手く切り抜けられる?


「答えづらいか。なら質問を変えよう」


 そう言って、カウフタンを指さした。


「この女。いや、元は男のカウフマンの性別をどうやって変えた?」


「……魔法で?」


「魔法にそんな力はない。少なくとも天界ではそんな魔法は認知されていない」


「…………」


「それとも本当に魔法なのか? 未知と不確定の多い魔法だ。まだ解読されていない法則や、『力』の使い方があるのかもしれない。それを使ったということか。それはアイや人間、我々天使にも使えるのか? 使えるとしたら、どういう知識と技術が必要だ?」


「わ、わかりません」


 まくしたてる迫力に押されて、正直に答えてしまった。


「わからない? ではお前は理解もせずに、そのような大きな『力』を使ったのか? この世界で?」


 ちょっと怒ってる圧が怖くて、思わずうんうんと2回頷いた。


「軽率だな。もしこの世界が壊れたらどうする? それともお前の世界は性転換などでは壊れない世界なのか?」


「TSネタ……ああ、性転換ネタはよくある」


「よくあるだと!?」


 ……ちょっとエッチ系の少年誌とか青年誌とか……エロ漫画で。

 という注釈をつけると、そっちの説明をしなきゃいけないからやめよう。

 恥ずかしいし。


「よくある……そんな世界から来たのか……高次元の知的生命体? これが? バカな……」


 あ、疑いの目を向けつつも、評価がどんどん過大になっていく。


 いや、これって逆に利用すべきかな。

 TSしちゃうぞという風に脅せば、ひるむかもしれない。

 現代知識で異世界無双だ。


「別世界への足がかりと考えていたが、これ以上この世界の安定を乱すのは危険か。ならばこいつは……」


「えっと、性転換は危険なら、俺には関わらず解放した方が、身のためではないかと、思います」


 若干、後半にいけばいくほど弱気ぎみになったが、ちょっと脅してみた。


「いや、私の身など顧みている場合ではない」


 そう言ったキルケは、手でこっちに来いというジェスチャーをする。

 すると、あの天使の戦士が近づいてきた。


「おまえの知識と『力』、この世界のために利用しようと考えたが、排除させてもらう」


「…………え」


「このまま殺されるか? 元の世界に帰るか。好きな方を選べ」


 戦士が剣を抜く。

 俺やアイたちを襲った時には、ほとんど使った様子もなかった剣を抜いた。


 これはマジか!?


「あ、帰る。帰るから。殺さないでくれ」


 命乞いをしつつ、カウフタンを見る。

 カウフタンは気絶したまま起きてない。


 そして命乞いをしても、天使の戦士たちからの殺気や、キルケの敵意は消えていない。


 これは絶体絶命!?


「……ん?」


 俺が気づくのと同時に、キルケたちも気づいて意識がそっちへ持っていかれた。


 外から聞き覚えの音が聞こえる。


「…………」


 ブロロロロッと、この世界では、おそらく俺にとって一番身近な存在が動く音。

 そして、疾走する音。

 それがだんだんと近づいてくる。


「ん? この音は……まさか……」


 キルケたちも、俺も、同じ方を見る。

 それは礼拝堂の外へ続く扉の方だった。


「まさか……勝手に動いて来てる!?」


 この状況が助かる期待……と、なんで動いてんの? という不安が、同じくらいの割合で同時に来た。


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