40話 衛兵隊掌握へ その2
「行方不明とか、突然言い出してどうするんすかね?」
隣にいるクオンが言うが、もちろん俺に応えられるわけもない。
ざわついている衛兵隊に動揺が走っている。
そんな中、アイの近くにいた女の子が突然大声で話し出す。
「カウフマン殿は行方不明だ! だが、彼は昨夜、アイ様と話し合いに来られたのだ!!」
語りだしたのはカウフタン。
自分で殿をつけるのはどういう気分だろうか。
そしてざわめきは収まるものの、動揺は続く衛兵隊たち。
「あれ、誰? ってなってるっすよ。ここからはカウフタン殿の腕の見せ所すね」
うんうんと頷いた。
いつでも助けに行けるように注意しながら、お手並み拝見。
「カウフマン殿はアイ様と公爵家の今後について話し合われた後、姿を消した。『神器』である天使キルケ様の元へ向かったようだが、詳細はわからない。行方不明とはそういうことだ」
その説明でわかるのか?
と思った矢先、衛兵隊の中のひとりが発言の許可を求めて語りだす。
「あの、よろしいですか? 隊長が向かわれたのは……教皇庁でしょうか?」
「そうだと思われる」
「なるほど……確かに教皇庁とは連絡を取り合っていました。しかし、何故このタイミングで、ひとりで向かわれたのかがわかりません」
教皇庁とカウフマンの関係を知っている者が、衛兵隊の中にいる。
勝手知ったる隊長だから、それを利用したのかな?
「そのことについてはこちらではわからない。ただ何か深い理由がある、そう察したアイ様たちは今後の衛兵隊について考え、結論を出された」
カウフタンはここまで持っていったぞとばかりに、アイの方を見やる。
よくここまで持っていったなぁと思う。
あとは、アイが妹のカウフタンに指揮を託した等言えば、元々のシナリオ通りだ。
だが……
「……?」
アイが首をかしげている。
「あれはあれっすね……アイ様ご説明を? ん? 何の話? 私をカウフマンの妹で、衛兵隊の隊長代理と説明を。え? いいのか? 今の話からそういう話に繋げていいの? とかぼそぼそしゃべってるっすよ」
「わかる。なんかそれっぽい。読唇術か何か?」
「いえ。だいたいです」
カウフタンに促されて、アイが説明を始めた。
今度は余計なことを言わずに、説明できたっぽい。
アイとオフィリアに従う約束をしたカウフマンに代わって、妹のカウフタンが衛兵隊の隊長代理につくという話だ。
当然だけど、妹? カウフタン? 誰だそれ? って反応で、衛兵隊たちがまた意味がわからないという様子になっていく。
「アイの隣にいるこの可愛い女の子が、カウフマンの妹、カウフタンだ。オフィリアからも代理として認められている」
そう説明し、オフィリアがそれに同意する。
説得完了とばかりにドヤ顔しているアイだが、混乱に拍車がかかっているのは見てとれる。
鬼を出した方がいいかどうか、カウフタンのサインを待つが、まだ出ていない。
「戦士諸君。静かに」
落ち着いた声が、その近くにも周りにも、聞こえた。
カウフタンが発した声だ。
「兄に代わって諸君らの指揮を取ることになった隊長代理、カウフタンだ」
はっきりと宣言するが、納得いく様子ではないのは見てとれる。
今はまだ混乱しているだけで、あと少しでそんな話は認められない、となるだろう。
危なくなったらすぐに鬼を出して、ウルシャと共にアイたちを救出する。
思いは同じなのか、クオンもいつでも飛び出せるように身構えている。
「兄、カウフマンは諸君たちの指揮官としてとても優秀だ。私は妹として誇りに思っている」
妹のふりをして話し始めるカウフタン。
「だが……指揮官としては私の方が優秀だ」
ん? 何言い出すの?
と誰もが思って聞いている。
そこで、カウフタンが、ばっと手を上に掲げる。
なんだ? と周りは身構えるが、それは俺へのサインだ。
おおおっ!? そういうこと!?
俺はハイエースから、鬼たちを召喚する。
後部扉が開いて、ぞろぞろと鬼たちが出てきて、俺とクオンの前に10匹の鬼を横一列に並べた。
「あの鬼たちも、今や私の指揮下にある!!」
カウフタンが大嘘をついた。
だけど、その様子を見ていた前の方にいる衛兵たちが息を呑んだのがわかった。
こいつ、はったり上手だ!
「嘘っ!? カウフタン、そうなのかっ!?」
そしてアイも騙されている。
「アイ様、私にかかればざっとこんなものです」
「すごい! すごいぞカウフタン!」
アイに対してもドヤッとするカウフタン。
ほんと役者が違いすぎる。
交渉、上手くいきそう?




